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「タイム・リーパー」 シリーズ 大原まり子を考える
 本シリーズは、グーグル先生に本ブログの趣旨をご理解いただき、ハードカバーSFが本ブログのスポンサーになってくれるよう、気長に待ち続ける連載です。

 ずいぶん最近、大原まり子を読んでないなあと思いつつ、Wikipediaで調べてみると、どうもここ数年本を書いてないようだ。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/
 「デビュー以降、旺盛な執筆で女流のみならず日本のSF全体を牽引した。」
 と、ちょ! ちょっと!
 先生!
 大原センセイ!!
 殺されちゃってますよ!!
 牽引した、ですよ!
 確かに、眺めると、もう6年近く書いてない。
 って、SF作家協会会長なんてやってる場合じゃないですよ、センセ!
 センセ以外にまともなSF作家なんて、日本にはいないんですから、もうセンセ以外全部いなくなっちゃってもいいんデスヨ! グリーンデスヨ!

 これは非常に危機的なので、ファンとしてよいしょして、映画化でもされて、センセにばりばりと書いてもらうことを気長に待つ連載で取り上げるしかない! と思ったしだいである。
 ちなみにわたしの大原まり子好きは、本家の方でも取り上げており、その異様さは周知済みである。

 ■病気になる物語
  http://plaza.rakuten.co.jp/hikali/diary/200411090000/


 しかし、よく探してみても、あんまり深く、大原まり子について語ったことがないような気がしてきた。昔の文章は、タイトルを見るだけでも恥ずかしさでめまいがしてくるのだが、それでも探したりないと言うほど探していないわけではない。
 ってことは、もしかしてひょっとして、書いたことないんじゃないか、と思えてくる。
 しゃーないなぁと立ち上がって、本棚へ行く。
 SF棚にスペースが用意されている日本人は、大原まり子と野尻抱介だけ。
 野尻センセも最近お書きなられている姿を見ないので、ひょっとして・・・、まあ、よいよい、都合の悪い連想は放棄して、気長に復活を待つ連載を続けよう。


 ■大原まり子は腐女子だと思え

 いきなり豪快なところから始まるが、大原まり子は現在に言う腐女子を先取りした存在だったと言ってよいだろう。
 ・処女少女マンガ家の念力(1985年)
 ・オタクと三人の魔女(1995年)
 ・超・恋・愛(2001年)
 と、もうタイトルだけ見ているだけで、頭がおかしいんじゃないかと思えてくる作家であることは確かである。
 こういうのを避けて、ちょっと安全そうなタイトルのものを手にとって見ようとしても、実は中は腐女子ものであった、ということはしばしばあることなので、この大原まり子は腐女子以外の読み手にとっては、地雷満載の毒ガス地帯、と思えてしまうのは、仕方ないことなのである。
 なので、一般的な常識人にとっては避けるべき作家であり、あまり大きな声でファンであることを自慢できる作家でないことは自明だ。
 しかし、困るのだ。
 この大原まり子は腐女子のくせに才能があるのである。
 もう暴走気味になる場合もあるが、いくつかの金字塔を打ち立てており、それを読むと、そんじょそこらの売れてる海外SF作家も吹っ飛ばしてしまうほど強烈な作品を描く。
 だから、大原まり子を読む人間は、それを書いている人間が腐女子であることを諦めて、その部分に寛容になり、それ以外の部分からやってくるイメージのシャワーを味わうべきと、私は思うのだ。
 代表作となると、
 「戦争を演じた神々たち[全]」
 「アルカイック・ステイツ」
 「ハイブリッド・チャイル」
 あたりになるのだろうか?
 わたしはそんなせまっくるしい評価を重箱の隅をつつくような難解な議論でしているせまっくるしい人々のことをふんと鼻でせせら笑って、なぜ、この「タイム・リーパ」が超傑作であるかを語って、人々の大原まり子観をぶっ壊してやろう。

 アマゾンの書評を紹介しよう。
 べたなタイトルでべたなお話(過去でわかかりしパパに恋心とか)ではあります。が、そこは大原まりこならではの世界観、恋愛観で独自な世界を描ききっています。
 軽い読み物としてすらっと読める、でも本格SF。移動中などにぴったりの本なのでは?

 わたしが殺意を抱いてぶっ潰そうとしているのがなんであるかは非常に良く分かるであろう。というか、こいつは全部読んでない(これは間違いない)。
 面白い物語とはいったいなんであるか、という話をしよう。
 その前に正直な今の気持ちを大声にして、書いておこう。
 この世の中のSF業界人特に批評家、全員死ね!! クズども、いつかてめーらを、根こそぎ地獄へ送り込んでやる!
 さて、すっきりしたところで、タイムリーパの話をしよう。


 ■あらすじ −ハヤカワから読み解く

 本書はハヤカワから文庫が出ている。
 だから、裏には丁寧な分かりやすいあらすじがついているのだが、ハヤカワの編集は職人なので、残念ながら、ハヤカワフォーマットでないと心に刺さらないあらすじを書く。
 アマゾンに全く同じ文章が載っているのだがこれが全くいただけない。
 こんな感じ。

 平凡な銀行員の森坂徹は仕事で疲れた夏の日の帰り道、恋人の目の前で交通事故に遭った。瀕死の重傷を負った彼を収容したのは、なんと2018年の救急病院。しかも、その怪我のために首から下は機械の身体に換えられていた。彼は30年の時を超え、未来へとタイム・スリップしていたのだ。やがて時間跳躍能力を持つ森坂をめぐり、未来のタイム・パトロールと警察の特殊能力開発部隊との間で、凄絶な戦いが繰り広げられてゆく。

 なにこれ?
 ハヤカワ字詰めで行くとこう。

  平凡な銀行員の森坂徹は仕事で疲
  れた夏の日の帰り道、恋人の目の
  前で交通事故に遭った。瀕死の重
  傷を負った彼を収容したのは、な
  んと2018年の救急病院。しかも、
  その怪我のために首から下は機械
  の身体に換えられていた。彼は30
  年の時を超え、未来へとタイム・
  スリップしていたのだ。やがて時
  間跳躍能力を持つ森坂をめぐり、
  未来のタイム・パトロールと警察
  の特殊能力開発部隊との間で、凄
  絶な戦いが繰り広げられてゆく。

 文章の字詰めをこのフォーマットで考えているのが良く分かる。
 このあらすじは13行で書かれているが、実は、このペースで書くと1200行ぐらいになりそうなのが、本書である。
 はっきり行って、中で起こることが非常に多い。
 しかし、あらすじを見直してほしい。
 タイム・パトロールと特殊能力開発部隊との間で壮絶な戦いが繰り広げられるらしい。
 大筋はあっているのだが、その魅力を十分に伝えているとは思えない。
 ちなみに、本格的に面白くなってくるのは150ページ以降である。

 おおよそ、このお話は、確かに、このタイム・パトロールと特殊能力開発部隊の戦いであるのだが、そこを中心に読んで行くと、読みどころを見あまってしまう。
 わたしが言いたいのは、この話は4次元的な話であるというところなのである。
 タイム・パトロールには数多くの魅力的な登場人物がおり、この人物一人一人が、「それぞれの世紀」の常識で物事を判断する。
 この世紀ごとのレイヤーが、タイム・パトロールの人間すべてに適応されていて、フジオミどこか不良っぽく、キサラギは軍人のようで、アマカスは古式ゆかしい。主人公のトオルはまじめな銀行員で、こういった面々が時空を飛び越えていく。
 この、時空を飛び越えたチームが、あらゆるレイヤーを理解しながら、協力して21世紀を舞台に、事件を解決していくのである。
 想像力豊かな大原まり子は、キサラギの生きた30世紀をどのような世界にしたのだろうか?
 この21世紀を横軸に、タイム・パトロールの中にある世紀レイヤーを縦軸に、この物語は螺旋のように伸び上がっていく。
 リープするようであり、ループするようであり、ジャンプするようである。
 その姿の伸びやかなこと。
 そして、明確な姿を与えられた跳躍者たちは、無駄のない言葉で淡々と語られ、それが逆に生き生きとした生命感を持って、わたしの胸に迫る。
 わたしは枯れたように書いて、そこに色を足していくような書き方を良くするけれど、饒舌な大原まり子にしては珍しく、そういう書き方をしているのが本書だ。
 ちょっと引用をしてみよう。
 それは、呪いであり、叫び、悲鳴、むせび泣きであった。そのことはアガシにもわかった。わからなかったのは、それがいったい、なにに対する呪いなのか、という点だ。
 体はさらにまわった。ゴムがちぎれるように、ぱちん、とはじけた。
 マサミが叫んだ。
「ちくしょう!」
 ホースのような腸が大小とりまぜてたくさん床の上にこぼれ落ちた。
 チェス盤のよう紋様の冷たい床が、またたくまに汚れていった。
 それから血が……信じられないほどたくさんの血が、長々と吹きだした。

 シンプルな言葉というのは、とてつもなく強烈に脳みそにダイレクトに届く。
 よしもとばななは、シンプルな言葉を書くことが非常に上手だが、極彩色に塗りがちな大原まり子がある意味ストレートに徹した稀有な作品であったと、わたしは思ってしまう。だから、ズガンと脳髄に響く。
 物語の書き方というのは、本来はこういうものであるべきだと言ってしまうのは、ちょっと乱暴だが、わたしが書きたい文章というのは、たぶんこういう文章だと思う。
 シンプルに。
 そしてコテコテに。
 でも、深く。
 そして、跳ぶように。

 わたしが送りうる最大の賛辞として、この項を残す。
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処女少女マンガ家の念力
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| 忍者大好きいななさむ書房 | 2009/06/25 5:32 PM |