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 『わたしを離さないで』を読んだ

 ずっと前からカズオ・イシグロはノーベル文学賞を取ると言われていて、わたしはハルキストを唾棄しているので、なんの予備知識もないままに読んだ。
 わたしがカズオ・イシグロを読もうと思ったのは、ワイヤードという今はない雑誌(電子媒体での活動に移行した)のインタビューを読んだからで、それは「ことばの未来」という、乱暴にいうとAIで小説は書けるかという話題を扱った特集で、この中の「埋められた感情」という短い文章の内容に衝撃を受けたからだ。
(ワイヤードはバックナンバーを販売しているので、興味がある方は読んでみると良い。品切れの場合はデジタル版が買えるとのこと)
 ■マガジン(雑誌)/MAGAZINE|WIRED.jp
 https://wired.jp/magazine/

 この号の発刊は2015年11月10日なので、ノーベル文学賞受賞よりも2年も先行していることになる。
 正直、一回目ではなにかぼんやりとしかつかめず、二回目では好きなシーンが挙げられるようになって、三回目でやっと作品と出会った。そんなことをしているうちにノーベル文学賞を取り、じゃあ、いったい何が『わたしを離さないで』なのかといわれるとたいへんに困るぐらいにしか、この作品のことを知らない。美麗字句で褒め称えることはできても、それはわたしの本心からの文章ではないし、わたしのことばなんてそもそも価値がない。
 それよりも、この小説はうつくしい。
 この小説は美しい記憶を読んでいくお話であって、事実を読む話ではない。
 こんなに幻滅する現実はもうまっぴらだ、そう言っている小説なのだ。
(端的すぎるネタバレなのだが・・・)

 『わたしを離さないで』は、作者がつけた目次の構成上、3部に分かれる。
 幼年学校を思わせるヘールシャームでの第1部、大学生生活を思わせるコテージでの第2部、そして、社会人になってからを思わせる介護人としての第3部。
 どれも印象的なエピソードに満ちていることは当然なのだが、それぞれにでくわす年齢が違うので、もしかすると読み手は、冒頭のキャシーと同程度の、介護人として経験を積んだ30代ぐらいの人生経験がなければ、細かな部分を読み取るのは難しいかもしれない。
 それは、その文章を書いているのは少女ではなく、充分すぎる重厚な人生を歩んだ作家というのもあって、少し年代が近い読者から見ると、ああこれは歳とらないとわからないなあと思うきめ細かさがあるのだ。
 それでも作品に何度でも恋をするのは自由であるし、初めて読んだときの気持ちから、自分の中の時代に合わせて読み方が変わっていくのを楽しむのは、素敵な読書。そんな幅広い読書を包み込むだけの豊かさを、この作家は持っているように思う。

 この文章をここまで読んで『わたしを離さないで』を読まない人は多分一生読まないので、この話題はこの辺にして、わたしがどう感じたかを書こう。

 まず、ものを作る人がすばらしい作品に出会ったときに、なにひとつとして嫉妬を感じなかったとしたら、そもそも創作をやめたほうがいい。創作というのは、未踏峰をどういうルートで登るかの独自性の世界で、そもそもルートが確立している観光コース然としたエベレストになんて価値はまったくない。
 そんなアタリマエのことを考えて、『わたしを離さないで』はどう思ったかといえば、これはわたしのセクションではない、わたしが入り込む余地のない偉大な先人の領域だということだった。正直、どうせ自分がなんか考えても、その前にこの人が実現してしまうんだろうなあという無力感はあるし、入院歴が長いわたしにもなんか付け足せそうなものもありそうな気がするんだが、それは単なる錯覚だという気もする。
 そもそもこの作品が書いているのは医療ではなくて、人間らしい人生とはどういうものかという一種の社会哲学的な領域を扱っているのだ。そしてわたしは十分恵まれた環境にいるので、そこに対してあまり興味がない。
 『わたしを離さないで』の世界観はディストピアで、正直うんざりするような現実しかない。だから絶望するのだが、これと同じような構成でもっと明るい作品に、スタジオジブリの『おもいひでぽろぽろ』がある。この作品を語り始めると長いので(単純計算で2倍になる)割愛するが、正直ジブリ作品で一番好きな作品はどれかと言われれは、わたしはこの作品を挙げる。
 やはり夜行列車のシーンがうつくしいし、子供時代の何でも無いエピソードが、こつりこつりと響いてくる。

 もちろん、『わたしを離さないで』は、これだけ読まれるのだから、絶望しかない世界感でも、きわめてうつくしい小説であることは保証します。
 ただ、それに気づけるようになるまでに、わたしは3回の通し読みが必要でした。
 ノーフォークの下りがこんなに素晴らしかったなんて、と3回めに愕然としながら読んだのがわたしです(ネタバレしないように、かなりぼかして書いている)。
 第3部はわずか2章ぐらい進んだ程度で、いきなりラスボスにたどり着いて、これあと4章あるけど持つのか? と思ったら一切の冗長な文章はなく、示唆に富みすぎた文章でクライマックスが描かれる。こんなクライマックス、想像していたけれど想像できなかったし、細かなところを拾うと、ほんとにぐざりとくる。学園長先生が、教え子の救済よりも、莫大な自分の借金のために売り払う家具を、業者が傷めないか心配で、教え子などと話す時間は、全く興味はないとか。
(たぶんこれは、感情的な無意味な反論が多そうなので、ちゃんと読んでね、としか)

 ただ、同じ書き手として不満があるとすれば、トミーはもっといきいきと書けなかったの? と思うところはあります。
 創造性がない人という役回りはわかるのですが、シェイクスピアのどの作品を読んでも、これほどまでに他人に対して従順な人を見たことはない。家畜なのか、とかくと、えっともしかして当たってるの? と怖くなるんですが、えっと・・・、当たっちゃってる? うわー、これ超ネタバレだわ・・・、と書けなくなるんですね(笑)。

 はい、誤魔化しましょうw
 というわけで、ほぼノーベル文学賞の理由となった『わたしを離さないで』は大変美しい小説です。わたしは美麗字句は嫌いなので、ほとんど褒めてませんが、検索してみると大量に褒め称えている評には出会えると思います。
 とにかくこの小説はうつくしい。
 なにもかもがうつくしいです。
 良い文章は読みましょう。



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