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 『あらしにあこがれて』17

「なんで、わたしとシルバの関係に意味があるの?」
 ルナがシルバとの恋仲を公式に否定するとリラはそわそわとし、マシンガンのように話し始めた。
「だっておかしいじゃないですか! どうしてそこまで献身的になれるんですか? 紙に書いてあるだけでダマスカス鋼を探しに行ったり、資金を調達するためにあちこちの貴族に出資を募ったり、どんだけ働いているんですか?!」
 まるでそれが自分の問題であるかのように噛みつき、それは好奇心というよりは、自分の問題をルナに重ねていて、解決策を提示してくれないかと縋るようだった。
 もちろんそんなに甘えられても困る。
「これは兄の工房のことなの。その稼ぎ頭がシルバ、兄の工房を回すためには、シルバがお金を儲ける手助けをしなくちゃいけない。なにかおかしいことがあるかしら」
 リラはしばらく黙った。
「でも、ルナさんの入れ込み様は異常です」
 うるさいわね。
「だって、お話いただいた鉱山用の、えーと」
「排水システムかしらね」
「それです、それだって、ほとんどルナさんが決めてるじゃないですか! ルナさんが勝手に動いて全部まとめてきたんでしょ?」
「だって儲かるんだもん! なんで工房全体で儲かる方法を見つけたら働いてはいけないの? わたしはお金が欲しいの! 工房は黄金を飲む竜だわ。いくらあっても飲み尽くされてしまう。お金がなくなると餓死しちゃうの」
 それでようやっとリラはルナの状況を理解し、舌鋒を収めるが、ぼそっと聞く。
「でも、シルバさんが好きなんでしょ?」
 しつこい。

 蟹伯爵の鉱山に到着すると、そこが最良の事例になるとわかった。
 坑夫である奴隷たちはガリガリに痩せ細っていて、人間として生きているのが信じられないほどだった。
「とにかく、奴隷の消耗が激しくて、カネがかかって仕方ないのですよ」
 激しい軽蔑はするのだけれども、こんな奴らに売らなければならないのかという動揺はどうしても生まれてしまう。奴隷が消耗するだと? 人だぞ。お前の所有物じゃない! 全員に人生があるんだ。
「き、機械は消耗しません。故障したらいつでも飛びつけます。こんなのを放置なんて・・・、」
 暗にこれは犯罪だと言っているのだが、愚かな炭鉱主はそれに気づかない。
「助かりますなあ。頼りにしているんです。約束通り、導入した結果は仲間に伝えますし、良い結果であれば、わたしの報告は喜ばれます。シド中の炭鉱主が群がるでしょう」
 この殺戮がシド中で行われているのかと思うだけで、呆然とするのだけれども、シルバが言い出したことがいかに正しかったかを、戦慄をとともに理解した。
 これはシルバのバランス感覚というか、世界理解の正確さなのだけれども、これが稀代の名君としての素質というか、シルバの感覚の正しさが、シドを救うことになる前例になるのだろうか。
「食事を出そうよ。これじゃあ死んじゃうよ! じゃがいもはあったよね? コンソメで茹でるだけだけれども、おいしいかな?」
「ちょっと! うちの食材も限りがあるから! 適当なことを言わないで!」
「でも、こんなのじゃあ、仕事できないよ。伯爵? いいですか? ぜんぶ費用はうちなので、振る舞っていいですか? おいしく調理します」
「シルバ、余計なことは言わないで。お金の関係はきっちりしないと。遺恨が残っちゃう。お金の問題は任せてくれると言ったでしょ?」
 蟹伯爵は考えるけれども、拒絶はせず、ルナはバターを探し始めた。
 回収しないと、持ち出しじゃないか。
 なんで、最低限を備えていない連中のためにうちの備蓄を出さなければならないんだろう。セレンを見ると目が座っていた。
「請求するから、これは費用だから」
 セレンはコクリと頷き、市場価格を無言で割り出し、慣れた動作で請求書を書き始めた。
 ちょっと、高いかなとは言わなかったけど、交渉できそうな範囲の値段だった。
 そもそも、納品してから請求するので、交渉もクソもない。
 考えあぐねていた時にふいに声がかかった。
「リラ、ずいぶん熱心に仕事をしてるじゃないか。ようやく記者の仕事がわかってきたかい?」
 見上げると、貴族然とした正装の男性。
「クリフォードさま! なんでこんな辺鄙なところまで?」
「シルバさんの工房に用事があったんだよ。それで聞いたらこちらに向かったと言うから、散々だよ。それでここまで来たんだ。重い荷物を運ぶ隊列だし、ここまで一本道だから徒歩でもいつかは追いつくだろうと思ってね」
 初めて会うクリフォードにルナは唖然とし、言葉を失った。青年はにこりと笑う。
「ルナさんですよね? お噂はリラから散々に、とてもお美しい。兄上の工房を支えるために、散々に資金を集めているとか。それで、大口のスポンサーから話をつけてきてくれと言われてきたんです、出資がしたいと。悪い話ではありません。無制限に出資すると言われています」
 ルナは信じられなくて、言葉を失う。
「まあ、信じられなくても仕方ありません。わたしも理解できませんでしたから。でもそれよりも小さな事業を成功させるべきではないでしょうか? キスト郷、この鉱山の状況は正直週報を発行する我々としても、見て見ぬふりはできません。少なくとも改善のために費用を出すべきではないでしょうか。それがじゃがいも代というのはどうでしょう?」
 蟹伯爵は考える。
 セレンはあわてて話し出す。
「じゃがいもはいま高いんです。産地はひどい被害です。豪雨がひどかったんです!」
「そうか」
「水害がひどかったのは分かっているはずです。50%の値上げを提案します」
「それは暴利だね」
 ルナは必死のセレンを遮って、口を挟んだ。
「そうですか? あなたは市価を無視していることになります。あなたは市場価格を無視する商人という烙印を押され、とにかくぼったくる人という事になります。それは週報で伝えられるかもしれない」
 ルナの機転のきいた脅しにすこし蟹伯爵は戸惑い、すこし考えた。
「ペネスの市場価格を確認してから、ではどうでしょう?」
 えらくまっとうな言葉だったが、おそらくペネスの市場の最安値を探すつもりなのだろうと踏む。
「たぶんわたしたちが提示する価格より安い価格はないはずです。うちの工房はいつもカツカツなんです。最安値で買ってないとお思いですか?」
「ふむ、それを信じよう。あなたはいつでも信用できる商人だ」
 気付いてみると、恐ろしくフェアな交渉が成立していて、じゃがいも代は回収できそうだった。交渉成立と見てセレンがじゃがいもを切り始め、シルバが脇で湯を沸かし、そこに調味料を溶かしていく。
 バターとコンソメの香りが食欲をそそり、セレンはその濃厚なスープに薄切りにしたじゃがいもを投入していく。表面積を大きくすれば、味は濃くつく。気付くと鉱山の奴隷たちがこちらをじっと見ていた。少量のキノコも入れる。旨味がブーストされる。
 木製の皿を出して、その炭鉱の坑夫たちに出すと、空腹から人が寄ってきた。
 だれも、それがうまいなんて思ってない。それが料理だから食べるだけで、それが恐ろしくシルバの心を痛めた。材料がない。海産物はないし、醤油も味噌もない。ほんとうの美味しいがない。だれが、一番美味しいものを出せなくて、それでいいと思うのだろう。それでも申し訳程度にいれたキノコは、このお粗末な料理に旨味を彩っているはずだ。
「この食事は申し訳ないですが、材料が揃いませんでした」
「キミは一流になり始めているな?」
 ルナの言葉によそられた皿を味見をしたクリフォードが、にこりと笑う。
「そんなこと」
「キミがどんだけ遠慮がちか理解したよ、ルナ。キミは最高の外交官だよ。外交は卑賤な意味も含むから、交渉官といえばいいか。キミがしているのは、貴族の交渉だ。否定しないだろ? 貴族の商談で料理をうまく合わせられる人間なんて、あまりいない」
 言っていることは分かる。
 端的すぎて、どう返していいのかさえわからない。
「このキノコはいいね。とても美味しい。でも、こんなのを出せる人なんていないんだ。バターもいい、酢が混じっているのもいい」
「クリフォード卿! ほんとに粗末な食事ですみません!」
 にっこりと笑った。
「こんなの食べたら、もっとお腹が空くよ。もっと美味しいものを用意してるんじゃないかって思うし、正直、これを浴びるほど食べるだけでもいいんだ。これは何ていうの?」
 遠慮がちに、セレンがきゅうりの海鮮酢漬けを出す。
 海藻が多すぎるのだけれども、生卵を落としたのがなぜか好評だった。
 混ぜると、酢と卵が合っていく。
 シド人であれば、マヨネーズは好きなはずだ。濃い卵と酢を混ぜるとマヨネーズになるけれども、それが分かっていないシド人は多い。美味しい酢と、美味しい卵を混ぜると美味しいマヨネーズになる。
 どうすれば美味しくなるかが分かっていないのだ。
 みんな損してる。
 大げさな話はやめて、どうすれば美味しくなるかだけに集中すれば、世の中は幸せで美味しい世界になっていくのに。ルナはせっせと給仕するセレンの姿を見ながら、呆然と思った。
 正直、クリフォードは週報を発行している張本人であると理解できるほどに人当たりがよく、さわやかな好奇心を細かいところまで向けてくる。それが心地よくてどこまでも話していたくなるのだが、それがこの青年がクリフォード社の社主である所以だろう。
 ルナはリラがなにか上司に話そうかどうかと思って、そわそわしているのを見て、ふと気づいた。ぽんとリラの肩を叩く。
「クリフォードさん、見てもらいたい銃があるんです、これがなんだかおわかりですか?」
 ドライゼ銃を見せると青年は戸惑った。
「えっと、何ていうんですか? 銃口側から弾を入れない?」
「そう、元込め式です。こういった油紙に包んだカートリッジを装填します」
 ルナから現物を受け取ると、青年は驚いた。
「驚くほど軽いね、半分ぐらいかな?」
「そうです、ダマスカス鋼です。シャビに仕入れに行ったら、通常使っている10ミリ鋼板なんてないって言われたんです。だから、5ミリ鋼板。耐久テストには合格しています。おそろしい耐久性ですよ」
 クリフォードは信じられないと言った様子でその銃をまじまじと眺め、実演してもらえますか? とシルバに渡す。
「あ、はい・・・」
 シルバはおどおどと受け取り、腰のベルトポーチに手を伸ばし、弾倉を握って、美しい所作でそれをボルトアクションの装填部に込める。
「危ないからどいて!」
 ルナの言葉に坑夫たちはシルバの射線からどき始め、シルバはなんの気もなしに、すぐ近くの樹木に狙いをつけた。
 発砲。
 すぐに腰に手を伸ばし、次弾を込める、発砲。
 クリフォードはそれを唖然と見ていた。10発撃ったあたりでさすがにルナも止めたくなり、
「まあ、こんなのもあるんですが、さすがにこれは報道はしないでください。ボルニアが侵略してくるかもしれない時に手の内を明かすのは致命傷です」
「あ、うん、そうだね。これは危険すぎるかな・・・。でもすごい幸運だ。こんなものがシドにあったなんって。スポンサーがどんだけつぎ込むかわからなくなってきたよ」
 クリフォードの発言は非常に危険な匂いがするのだけれども、この青年が間違った道に進むとは思えないので、それを信用することにする。
「週報では厳禁です」
「ああ、いいよ、こんなの見せられちゃったら、ちょっと無理かな」
 賭けには勝ったというよりは、常識的な人だと確認できた、ぐらいなレベルで、この優男は生涯信用してもいいと、思えるぐらいには信用できると、思えてしまったのはふしぎだった。この男を信頼してしまった人の感想を聞きたいところだが、だいたいわたしと同じような感想が出てくるのだろう。
 ルナが生涯信用した人間は二人。
 ひとりがクリフォード、もうひとりは秘密で、それが生涯の夫になる。
 そう考えると、クリフォードはルナの夫になるかも知れなかった。
「社主! キュディスとトランの動向が入ってきたんですが!」
 リラの声に、落ち着いた様子で書面をよこせという。
 書面はだいたい支社から届いた殺風景な書面で、キュディスの虹翼騎竜兵団が全翼をアイギスで飛ばしたとか、トランのタルボットギルドの浮遊船団が首都に集結したとか、うわさレベル物がやってくる。タルボットはいつでも船団を集結させるし、日常的に物騒なことは起こっている。
 しかし、それでも何も起きないのが常。
 クリフォードは一文に気付いて、あわてて言う。
「キュディスがボルニアの後見についた。キュディスの、えっと、黒の兵団? ってなんだろ・・・、が、ボルニアの諜報部隊として参画するって・・・」
「キュディスとボルニアが同盟を結んだんですか?!」
 クリフォードはしばらく考え、うん、可能性はある、と静かにいう。
 ボルニアの侵攻が北へ、ザブンテ、エストと呑んで、北方最強国であるキュディスとトランの二国と国境を接した時点で、南に転進するとは誰もが言っていた。その流れで行くと、キュディスがボルニアを手駒のように使って南へと侵略を開始するのは、当たり前の判斷と言ってよかった。
 シドは熟れて豊かで、堕ちそうな国家である。
 そこに侵略の手が伸びてくるのは常識的な気さえした。ルナはじれてジリジリするけれども、クリフォードは信じられないことに、確信を持ってワクワクしていた。これは後にその理由は分かるのだが、彼はこのショックがシドという大国にもたらす大革命にワクワクしていたのだ。そのほとんどはリニーというかシルバが成し遂げ、世界の形を全部変えてしまうのだが、それはまた別の話だ。
「これがきっかけになるんだ。シルバさんの技術力があれば、シドが変わり始めた姿を見せることができる。僕はそれを伝えたい。シルバさんの工房が加わったときの化学変化がどれほど劇的になるのかを、僕は見てみたいんだ、これは不相応な願望だろうか?」
 クリフォードほど名声のある人物に言われて、揺らがないはずがない。
 正直、この時期のルナはクリフォードに魅了されていて、シルバのことなど忘れていた。もちろんそれは一過性のことで、クリフォードが愛する世界を動こかしている人たちの方が重要だと気付くのはだいぶ先になる。まさか自分がその一人になるとは思わずに。
 ルナの評伝はリラによって書かれるのだけれども、そこから、完全蒸気機関の女神と称されるまでになる経緯を書く人はいなかった。学びの天才とはルナのことだけれども、その経緯も不明だったし、論文にしか名前がなかった。
 なにか異常に詳しいやつがいる。
 その程度の認識で済んでいたのは、おそらくルナも目立つのを避けていたのだろう。
 それでも、なにを言っても裏切りと言われる状況は否定しようがなく、一生を裏切り者として人生を終える。

 ルナたちは、鉱山への機材の設置をはじめ、大きな声で指示を飛ばしていく。
 それは不本意ながら、鉱山の奴隷たちを動員し、まず炭鉱の入り口に蒸気機関を設置し、そこから長々と動力線を坑内に引いていく。ポンプを置くのは奥の奥で、最も問題になっている出水地点だ。
「これで、ぜんぶの水かきは終わるから」
 そういうと奴隷たちの士気が上がるのが心苦しかった。
 ポンプの設置が、ほとんど苦労なく終わるのがこんなに苦しいとは思わなかった。
 設置が完了し、稼働し始めると奴隷たちは歓声を上げた。
 こんなの、お金があれば簡単なのに! それはルナが必死に掻き集めても足りないものだった。
 膨大な水を吸い上げるポンプが、この鉱山から重労働を一掃していた。
 モーターとポンプの音色が心地よく、それだけで世界最先端の解決策を届けている気持ちにひたれた。
「ルナ、すごいね! なんだろこれ! 世界が変わっていく!」
 ルナはひとりごちる。
(あなたが考えたのよ。全部あなたが作ったの)
「シルバ、あなたは謙遜しすぎだわ。もっと誇っていい。わたしは手伝っただけ。これはあなたの仕事なの。ねえ、クリフォードさん、そう思うでしょう?」
 突然に振られた優男は対応に困って、そうかなと遠慮がちに言う。
「ぼくがリラに頼んだのは、あなたの取材なんです。それは、あなたが美人だからではない。銅版画家があなたの肖像を描きましたか? ぼくが興味があるのは、あなたの工房を束ねる才覚なのです。シド最大の工房群をあなたは事実上差配している。あなたの兄のパルの工房群と言われると、莫大な資金が流れています。それを、シルバさんの工房が全部支えている、信じられないことです」
 ルナはおどおどと動揺したが、こういう交渉は慣れていない。
 そもそもなにをゴールにしていいかさえわからない。
「買いかぶりです」
「事実を見ましょう。ぼくは事実しか見ません、それが週報の支持につながっているし、ファクト以外は興味が無いんです。事実が伝わればそれでいい」
 しばらく黙る。
「あなたは人間としては信じられないだけど、交渉相手としては信用できる、かな?」
「奇遇なのですが、それは同感です」
 ルナが言葉を言いそびれると、クリフォードは追い打ちをかけた。
「あなたにしか興味が無いんですよ。もちろん、週報の発行責任者として」
「る、ルナ、これって成功かな? いちおうポンプは排水をしているけど・・・」
 遠慮がちなシルバの声に我に返って、まあ、大丈夫かなとか適当なことを言う。シルバは流れ出る水量に夢中で、クリフォードなど見ていなかった。それが手打ちだった。そもそもシルバには興味がなかったのだ。交渉相手は、将ではなく馬だった。ルナが優秀だから優秀なシルバだったのだ。
 クリフォードは佇まいを正し、改めてシルバに向き合った。
 しかし実際にはそれは事実上ルナに向き合っていた。
「あなたに、ひじょうに有力な貴族から支援要請が来ています。いくらでも金払うと言われているんですが、それは常識的な要請ではありません。無制限に金を払うと言われています。ただし、その対価はおそろしいほどの「あらし」です。望む中で最も大きなあらしが提供されます。もし「あらしにあこがれる」のであれば、ぜひ受諾してください。わたしは強制はしません。「あらしにあこがれる」人だけが参加してほしいのです。あなたは「あらしにあこがれて」いますか?」
 シルバは考えた。
 ルナは口を挟んだ。
「今回の件はシルバが奴隷が酷使されている姿を見るのは耐えられないという利己的な理由から生まれたビジネスなのです。なので、奴隷の売買に賛同する立場の人達には絶対に賛同できません。ですから、奴隷売買をする方々から出ている資金ではないと確約してください」
 クリフォードはにっこりと笑った。
「こんな簡単なことが最終条件だったとは」


 〈了〉

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