CALENDAR
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< April 2017 >>
本家STORY FACTサイト
NEW ENTRIES
CATEGORIES
RECENT COMMENTS
  • GB解析 -FG- 魔界塔士SAGA 冒険者たちのレクイエム 原作を忠実に追ってるかなあ
    マイケル村田 (04/24)
  • GB解析 -FG- 出発! スターへの道 ま、マクロス・・・。
    hikali (04/10)
  • GB解析 -FG- 出発! スターへの道 ま、マクロス・・・。
    マイケル村田 (04/09)
  • GB解析 -HG- ロボット・コマンドゥ 米ジャクソン、ロボット大好きっぽい・・・。
    hikali (03/19)
  • GB解析 -NG- ディーヴァ 女戦士ミリスの挑戦 ちょっと弾幕薄いかなあ・・・。
    hikali (03/19)
  • GB解析 -NG- ルパン三世/失われた絆 ん・・・ これはどうかなあ
    hikali (03/19)
  • GB解析 -HG- ロボット・コマンドゥ 米ジャクソン、ロボット大好きっぽい・・・。
    マイケル村田 (03/17)
  • GB解析 -NG- ルパン三世/失われた絆 ん・・・ これはどうかなあ
    マイケル村田 (03/15)
  • GB解析 -NG- ディーヴァ 女戦士ミリスの挑戦 ちょっと弾幕薄いかなあ・・・。
    マイケル村田 (03/14)
  • GB解析 -NG- ウルティマVol.2 聖者への道 樋口センセの最終作
    hikali (03/13)
RECENT TRACKBACK
ARCHIVES
MOBILE
qrcode
LINKS
PROFILE
OTHERS
無料ブログ作成サービス JUGEM
 
管理人hikaliの開発の日々の備忘録です。
本家はこちら。
http://plaza.rakuten.co.jp/hikali/
<<  『あらしにあこがれて』10 | main |  『ラ・ラ・ランド』を観た! >>
 『あらしにあこがれて』11


 バーナードの工房にたどり着くと、少年の従事がはきはきと迎えた。
「ルナさま、お話は聞いています。シャビから戻られたとか、ですが主は懐疑的です」
 頬を赤くして必死に訴える少年がかわいそうに思えて、ルナはその子に同情した。
「機械が全部揃っているから、それを確かめてほしいの、全部やってね。信じないだろうと思ったから全部持ってきたの。テストしてほしいの」
 親指を立てて、蒸気機関が稼働していてぶるぶると震える竜車を指すと、やっと意味がわかったようだった。
「あー、主に伝えに行きます!」
 ばたばたと少年は奥へと戻っていく。
「ここはいつも変わらないわねぇ・・・、ハッカビー兄弟の工房みたいにすんなりとは行かない」
 セレンは遠慮がちに言う。
「も、もしかして、ここって面倒な工房なんですか・・・?」
「あー、うーん・・・、そうかも・・・。そんなこと考えたこともなかったけれども、面倒といえば面倒かも。馬鹿と天才は紙一重と言えばいいの? 売り方がわからなかったから放置してたけど、今回の件でどうも役立ちそうだと思ったから、お願いしたの。わかるでしょ? 天才肌の、すごく神経質な工房なの」
 セレンがメモをし始めるのを見て、いやぁ、困るなあと思ってしまう。
 わたしが考えていることがだだ漏れじゃないか。
 ただ、セレンがわたしの仕事のだいぶの部分を肩代わりしようとしてくれているのは、心強かった。屈んで耳元で囁く。
「言っちゃ駄目よ。わたしがあなたが天才か馬鹿なのか掴みかねてるって言ったら問題でしょ? ちょっと問題はあるけど、天才だから許す、くらいでちょうどいいの」
 すぐに初老の男が駆け寄ってきて、口を開く。
「す、すみませーん。来る気はしてたのです。それで最終試験をしていたのですが、あれ? どうしたのですか?」
 バーナードがきょとんとした顔をする。
「ああ、驚かせてごめんね。ハッカビー兄弟のポンプが素晴らしかったから、ぜひ、合わせてみたいと思って、持ってきたの。テストする準備はできているんですよね?」
 バーナードは竜車まで寄り、そこに備え付けたる旧式のクレーンを見上げる。
「これ、だいじょうぶなんですか・・・? だいぶ古いですけど」
「今のところは問題は起こってないから」
 ふんふんと見聞きしながら、バーナードはきざに高価な葉巻を吸い、合わせてみましょうという。
「実機は全部持ってきてるから、なにか不満があれば言って」
 ルナは竜車の従事に、慣らし運転していた蒸気機関から、熱した石炭の入った鉄籠を外すように告げた。

 電気で動く駆動系というのはだいたい問題だ。
 内燃機関とまったく違う理屈で動いているし、蒸気機関のスペシャリストであるルナでも、電気工学に通じてるわけではないし、ほんの少数しか専門家がいない分野だからだ。
 それで、技師のほとんどは、でんきにふれるのがこわい。
 触れると、しびれて感電死するとも聞くし、電気系のスペシャリストと話す機会も滅多にない。そういう意味ではこのバーナードは希少な技術者なのだけれども、どうも扱いが面倒で、いつも口うるさい要望を投げてくる。
 中庭に竜車をよこすと、バーナードが新作のモーターと思わしきものを運んできた。
 対になっている2つのモーターで、その間を長い電線が繋いでいる。
「これって感電しないですよね?」
「いちおうゴムの被膜で覆ってますし、設置するのもだいぶ高所にします。動力はチェインで伝えますので、設置には結構自由度がありますよ」
 設置場所は自由と言っているのは、水をかぶる心配のない場所に設置できることを言っている。
 そうか、歯車じゃなくてチェインでやればいいのかと、ルナは感心し、シルバはこういうことを見越してモーターを使おうと発想したのかと思うと、その差が圧倒的すぎて少しこわい。
 サウスと対話できる、変態的な天才と自分を比べるのはこわい。
「あれがルナさまの新型ですか? ずいぶん馬力が出そうですねぇ、耐えられるかな。こっちは旧式でテストするしかなかったので」
 バーナードは自信なさげに言うが、ルナはこの男の変態的な神経質さには自信があった。つまり過剰性能で設計していることはほぼ間違いないのだ。それで必要以上に割高になりがちなのが玉に瑕なのだが。
「じゃあ、ちょっと見てみる? いちおうここまで慣らし運転してたから、火種はあるの。すぐにでも最高出力がだせるから」
 石炭の入った鉄籠を指差すと、バーナードは頷く。
「じゃあ、おねがい! もう一回、蒸気機関を稼働させて!」
 従事たちが籠をルナの蒸気機関に格納すると、派手な蒸気を上げ始めた。ぷしゅぷしゅという力強い音が響き始める。
「こりゃあ・・・、なんですこれ? 8本シリンダーとかですか?」
「12本」
「そりゃあ、オーバークオリティなきが・・・」
 おまえに言われたくない、とは流石に思ったのだが、それでも恐れを感じていない表情を見て、ああ、たぶんこのへんは想定内なんだろうなぁと思う。鉄籠を外させ、注水をして、蒸気機関を文字通りクールダウンさせていく。それを遠巻きに見ていた少年たちがバーナードのところへよっていき、細かな指示に頷きながら、重いモーターを設置場所に運んでいく。
「それはそうと、あの鋼材は何なのですか? ずいぶん積んでますが」
 目ざとく竜車に積まれた鋼材を見つけたのはさすがだった。
「ごめん、忘れてた! あれ持ってきたのも用事の一つなのよ。ダマスカス鋼。ペネスのシルバの工房でおもに使うつもりなんだけど、この工房でも試してみて。シャビから運んだの。うちに工房ではすごい評判だったわよ。テストした数値を聞く?」
 さらっと数値をいうと、バーナードは青ざめた。
「なんですかそれ」
「長期契約するつもりだから、発注したければわたしに言って。船便で運ぶつもりだから1月ぐらいは到着まで時間がかかるけど、ハッカビー兄弟は40ミリと25ミリのシャフトがほしいと言ったわ」
「うーん、40ミリってちゃんと理解していってるんですかねえ、その数字じゃあ太すぎでしょう」
「ああ、半信半疑なのよ」
 こういう突っかかるところが面倒なのだ。
 それでもたぶん、数字から40ミリは意味が無いと思っているところが、天才なのか馬鹿なのかわからないところで、ルナはいちおう干渉しないことにしている。
「発注は好きな注文をして」
 バーナードは考えた。
「では25ミリから、1ミリ刻みで15ミリまで」
 わかっていたけど、めんどい。

 バーナードのモーターが設置されていくと、いよいよこのシステムの中核部分が揃い始める。それはわくわくする光景で、ほんとうに発電機側のモーターと電動機側のモーターが電力をやり取りできるのかという、誰も試したことない再現に立ち会うことになる。
 サウスの理論が正しければ、何の問題もないはずだ。
 それでも、実際にそれが再現できる光景を見たものはないのだ。
 バーナードの言によれば、旧式の蒸気機関で試しているようなのだけれども、それでも実際に商品として売るレベルで稼働した実績はない。お金にならないならばそれは存在していないものと扱われるのが、シドだ。
 心細くて、シルバに祈る。
(失敗しちゃったかなぁ。12本シリンダーは無謀すぎた? だって、パワーは必要でしょう? でもさ、バーナードはちゃんとやってくれるよ!)
 もうわからなくなって、機材を設置している所を手伝うんだけれども、凝り性のバーナードの工房の仕事は理不尽なほど整然としていて、ミスはたぶん起こらないとわかる。蒸気機関と発電側のモーターをつなぐチェーンが装着されると、もうやることがなくなる。それでもバーナードは執拗で、チェックリストをもたせた少年たちに最終チェックをさせた。
 OKでーす、の声があちこちから聞こえる。
 最後の一声が聞こえたのを確認して、バーナードはわたしを向いた。
「耐えられますかねぇ。どれぐらい試してみます?」
 わたしの蒸気機関には問題がないことは前提の発言だ。
「そうね、夕暮れまで、それで充分でしょ。わたしたち、まだ朝ごはん食べてないの、突貫でここまで来たから。パンとお茶だけの質素なものでいいから、ごちそうしてくれない?」
 たぶん、こう言うと、この工房は恐ろしいほどに凝るだろうなと、思ってはいたのだ。
「朝食の研究はあんまりしていないので、ご期待には添えませんでしょうけど」
 ああ、こわいことを言っている。

 お招きされた卓で出されたのは、バターの効いた焼いたバゲットの上に乗せられた、塩麹まみれのイカゲソで、ほどよく唐辛子とガーリックが混ぜられたものだった。
「なんですかこれ! ラスペでお店出してくださいよ!」
 セレンが感激するのに、わたしもこれはファストフードとして優秀だなあと、思ってしまう。実際的に言うと、焼き立てパンじゃないとこれはできないので、屋台ではたぶん無理なのだが、セレンの感激はよくわかった。
 バーナードは調子に乗って、お昼はどうしますか? と聞く。
「パスタ!」
 これはセレンだ。
 うかがうように視線を向けられるので、もうちょっとひねろうかと思う。
「ミートソースの一番うまいやつを」
「時間かかりますよ、いいですか?」
 まだ朝だろとは思ったけれども、煮込む始めると時間がかかるのかもしれない。
 ちらっと見ると、大量のトマトソースに香草を混ぜ始めて、配合はわからない合い挽き肉を混ぜて、オリーブオイルでいためていく。しばらく焼き目と火を通すと、だいたい美味いミートソースになる。
 トマトがだいたい美味ければミートソースは美味い。
 もちろん、オイルは大切だけれども。

「ルナさまって、シルバさまの仕事をしているときはいつも嬉しそうですよね」
 耐久試験をしてる間はだいたいは暇だ。
 それでセレンとのんびりとお茶を飲んでいるのだけど、セレンはいつもどおりキツくて、挑んでくる感じが心地よくはある。
「なにか問題があるの?」
「いえ、なんでこんな仕事続けていられるのかって、疑問に思ってしまって。蒸気機関の設計しているときのルナさまの集中を見てしまうと、しかたなくやっていることがまるわかりなんです。でもシルバさまの仕事は別。楽しそうなんです」
 しばらく考えるが、自分のことなんて観察していない。
「なにを言っているかわからない」
「自覚がないんですね。ルナさまは、この仕事を「あなたが作った」と理解していないのです。ルナさまとシルバさまの会話は聞いていました。ルナさまはやるべきよ! と言ったのですよ。お金なんてわたしが集めるから、心配しないでって、格好良かった。ルナさまのようになりたい」
 どぎまぎするというか、だいたい褒められるのは照れる。
「し、シルバの名前で取引すると、だいたい成約するのよ。わたしはシルバの名前を利用しているだけ。この前の蟹伯爵との出資交渉でも、シルバが関わるのか聞かれたし」
「蟹伯爵?」
「ああ、有力な出資者よ。蟹が好きだから蟹伯爵。正直、外観でたぶらかしているの。でもわかるでしょ? わたしが好きなのは外観とか気しない人なの。セレンはたぶん、子供でなくなれば、大人になれば、ぐっと魅力的になる。でもそれで仕事してほしいとは思わない。あなたは、わたしからみればもっと魅力的だわ」
 セレンはぐっと言葉を謹んだ。
「殺し文句がお上手ですね、ルナさまは・・・」
「本気よ。シルバと仕事していて楽しそうに見えるのは、どんな無茶な提案でもシルバの名前を出すと、全部通るからでしょうね。わたしはただ話に行っているだけ。そこにシルバがあると全部通るの。わたしは何なの? と考えてしまうわ。いったい、数千キロを飛んできたわたしはなんなの? って。シャビで実感したでしょ?」
「それは違います! ルナさまはルナさまです! もっとご自分を大切にしてください! あなたさまが、シルバさまを作ってるんです! あなたさまがシルバさまのすべてなのです! なんでわからないのですか!」
 衝撃というものは、直撃を食らうとよくわからない。
「わたしは」
「言い訳しないでください!」
 考える時間はあった。たぶん3分ぐらい。その中で、シルバとの関係を整理できたかと言われると厳しいわけで、目の前の閻魔大王が憎たらしくは思えた。
「好きなんですか? 嫌いなんですか?」
 究極の問題に答える。
「すきです・・・」
 セレンは清々しく笑った。
「予定通りです」


 えーと、大変遅れました。
 端的にいうと、木曜日ぐらいにできていた文章があまりにもひどかったので、土日で立て直しが必要でした。それでも直りきっている感じはしないのですが、まあ、この辺がタイムリミットです。
 しかしなんでこんな消化試合のような文章を書くようになってしまったのだろうと。先週はきつかったけれども、まだましでした。たぶんそのきつさから逃げたくて、いい加減になってしまっていたのですね。
 もともと、このお話はルナとシルバが、産業革命期時のスタートアップとしてどんなことをしているのか、ということを掘り下げるために書き始めたものでした。それはわたしが特許法が制定された時代が異様に好きで、その時代の資料を溺愛しているから生まれているお話であったりするのです。そういう意味では、かなりハードなスチームパンクな話になっているのですが、もうちょっと掘り下げたい地点に踏み込めていないなあという感じはしてしまうのです。
 ただ慣性の法則みたいなものはあって、スタートした時点では予定していなかった話題にいまから踏み込むのは無理だろうと、いま断念している感じです。このお話は第三作のプレストーリーなので、第三作で語るんですかねえ・・・。まあそういうことが大量にあるから、書きたいと思うんですね(^_^; いろいろと技術面では難しいところもあるのですが(本来はルナ視点で書かなければいけなかったのに、シルバ視点で書かなければいけないとか)、まあお楽しみにしていただければ幸いです。

 さて、土日使っちゃったぞ、次は間に合うのか?
 この綱渡りって、案外楽しいものだなあと思っていたりします。


| 自作小説 | 13:01 | comments(0) | trackbacks(0) | 昨年の記事









http://blog.story-fact.com/trackback/1195988