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 『あらしにあこがれて』10

 鋼板を満載した竜車が工房にたどり着くと、なぜだか歓声がわいた。待ちわびたように顔を出した工房の面々を見ていると、ふしぎな光景に見えてくる。
「なに? どうしたの?」
「ああ、ルナさま、そのダマスカス鋼の数字を知りたいですか! 信じられません! 丁寧に浸炭した鋼材よりも、果てしなく上の数値を叩き出したのです! 引張強さもいいですし、耐力もいいですし、うかれてひねり耐性も調べてしまいました!」
 ルナは理解できずに、工房長の肩を掴んで落ち着こうと言ったのだが、落ち着きが必要なのはルナの方だった。セレンに荷を解くようにいい、それで了解を得たと思ったのか、工房の誰もが群がり始めた。
「ハッカビーにも、バーナードにも持っていくから、全部取らないで! 発注すればいくらでも運んでもらえるから! 欲しいものがあったら、わたしに発注して! ただし、船便よ! 一月はかかる。それは了解して!」
 それで混乱は収まった。

「うちの工房では大混乱だったわ。争奪戦というの? 性能テストをしてもらったの。その数字がどうもすごかったらしくて」
 ルナは疲労困憊で言う。
「どうもお疲れのようで」
 ハッカビー弟は気を利かせるが、兄は無言を貫く。
「ポンプは軽い方がいいの。鉄の量が減れば軽くなるでしょ? 鉱山ではどこで出水するかわからないでしょ? そうしたら、すぐに運べるのがいちばん。そのためには軽いのがいいの。テストしてみて。サンプル置いておくから。うちの工房の評価を鵜呑みは嫌でしょう? 信じられる? シャビでは10ミリ鋼板は使わないというの。5ミリで十分だって。どんだけ強靭なのよ?!」
 兄はしばらく考えていたけれども、口を開いた。
「40ミリ径と、25ミリ径のシャフトを。それでテストします。いやですか?」
 ポンプはシャフトなのだ。
 それで武者震いをした。
 なんだ、気付いたらそれなりの工房を抱えていた。
 鋼材一つで劇的に変わる、利益になる宝の山が目の前にあった。それを活かすも殺すも自分なんだと思うと、その重さに怖くなった。セレンと一緒になって鋼材を降ろしながら、置いていった鋼材の在庫管理をしはじめると、気が紛れる。
「じゃあ、シャフトは発注しておくから。他に欲しいものがあったら、すぐに言ってね、いつでも回ってくるから、わたし工房を見ているの好きだし」

 シャビの工房に発注をするというのはけっこうな手間がかかる。
 そもそも数日居合わせただけの工房だし、こっちをどれだけ信用してもらっているのかもわからないし、相手がどれ具合の幅でこちらの要望に応じてくれるのかもわからない。
 それでも真剣な儲からない工房の発注に応じなければならないし、わたしはだいたい嫌われているのだ。
「どうするんですか? なんか誇大妄想だけが発展している気がするんですが」
 セレンの鮮烈さには、ちょっとイラッとする。
 わたしは正直助けが欲しかったのだが、冷静に考えるまでもなく、セレンに権限を移譲する以外の方法が思いつかなかった。いいか、ルナ、よく考えろ、どうすれば工房から莫大な利益を得られる? どの方法が1番効率よく利益になって誰もが幸福になる? そのために捨てるのはどこで、犠牲にするのはどこか。答えがあるはずもない。どこも大切なわたしたちなのだ。
 ルナはためいきをついて、セレンを見る。
「あんたは、ニホに相談しなさいよ。わたしはペネスに行く。それまでに話をつけてきなさい。わたしにおんぶ抱っこは重いの。横暴なのは分かっているし、私の名前はいくらでも使ってもいいし、責任は取るから、あなたはもうあなたの名前で仕事をする時期よ」
 セレンは黙り込んだ。
 正直この年令には酷だ。
 それでもわたしはもっと幼い頃から、何故かそれをやる羽目になった。
「わたしは、じゅうぶん、でしょうか?」
 言いたいことが分かって、思わず抱きしめた。
「ど、どんだけ、買われてないと思ってるのよ・・・」

 ラスペの立ち食いの屋台はルナには慣れたロケーションで、大抵はピザのような粉物を食べるのだけれども、この日はたまたま汁物の麺を食べた。大きな海苔が3枚も乗っていて、食べ方に困ったのだが、スープに浸すとうまかった。
「まいど!」
 小銭が足りなくて、変な払い方なったけれども、お札を払って終わる。
 なんか、蜂の巣を叩いている気がする。それはセレンを焚き付けているのもあるだ。いいのかと考えると、仕事だろとしか考えが返ってこない。
 すぐ間近な未来に明らかな敵がいる。それはボルニアだったりシドの奴隷商人たちであったりするのだけれども、それはシルバが見ている世界と違う。あの馬鹿は、どちらも敵ではないと思っていて、世界は丸く収まると思っている。あからさまに侵略をしてくる騎竜兵団を敵ではないと思うのはシルバのおかしなところだが、そもそもボルニアがシドの奴隷売買以外の理由で滅ぼそうとするのかがわからない。
(なんか決定的な原因があるに違いない。誰に相談すればいいのだろう?)
 あらしにあこがれているシルバを見て、あれのアンカーにならなければと思っている自分がいる。それは同じようにセレンに期待することだし、年長者の期待のしすぎなのかもしれない。
「機械のテストを終えて宿舎に戻ったら、特訓をするわよ! 兄の工房に属している限りは、これは必須なの! あらゆる工房の千の問に答えられて、初めて一員なの」

 千の問というのだいたい大げさだけれども、数百の問をひたすら浴びせ続けられる数日間は地獄のはずだ。セレンは学がないことがコンプレックレスのようなのだが、100%の正答率を出す変態はいない。
 それで問を出すたびに問と正答を並べたリストを渡してやり、体系だって整理してやる。そんなながら作業をしながら、ああ、これはいいマニュアルになるなあなどとぼんやりと考えるのだが、その間にもやらなければならないことが山積みだった。
 まずは機械のテスト。
 ハッカビー兄弟の工房から搬出したポンプを桟橋に運び、わたしが設計した蒸気機関と合わせてみる。のろのろと進む竜車の荷台に揺られながら、あいつちゃんと動くかなあと、自分の設計した機械のことを考え、セレンに質問をする。
「高性能な電動モーターを主に作っている工房は?」
「えーと、バーナードさんですよね」
「そうそう、あの工房は凝りすぎるから大変なのよ、まあ高級品作っている分にはいいのだけど、そうそう高いモーターって使いどころがなかなかないのよねえ、だから売れない。今回みたいにセットにしてやらないと、いけないのよねぇ」
 もうメモをとるのはセレンがやるようになっていた。
 リュディアからやってきた紙にペンを走らせ、書き終えると慎重に荷台に置いた。
 ルナはセレンを話し相手に自分の知識を吐き出しながら、次第に自分たちを取り巻いている状況がどうなっているのかがつかめ始めた気さえしていた。なんだ、案外わたしが整理していなかっただけなのかも。
「ルナさま〜!!」
 遠くから呼び声が聞こえる。あれ? ついた? と聞くとセレンは慎重に頷く。
 幌から顔を出すと、ぴかぴかの蒸気機関が眩しいぐらいに陽光を反射していて、水面のそばに鎮座していた。隣に竜車を寄せると、低速ギアを噛ませたクレーンを寄せてだいぶ年季の入った蒸気機関を作動させる。
「結構重いよ! 慎重にね!」
 ポンプの下にある木組みのパレットに鎖を通し、慣れた面々がてきぱきとポンプを新作の蒸気エンジンのそばに降ろす。すると工房の人間がポンプの接合部に蒸気エンジンの軸をジャッキで合わせ、ゆっくりゆっくりと接合していく。凹に凸を入れる。プラスドライバー、マイナスドライバーと同じ原理だ。
 機械の設置が終わると、油紙を分厚く重ねて針金で補強したホースをポンプにつなぎ、川面にそれを入れる。
「やるか」
 許可するのは必要で、それで石炭班が動き始める。石炭に着火するには時間がかかる。それで、せわしなく動くのだけれども、こわいぐらいの火種を用意して、それを盛大に燃やしてやる。石炭と石油が違うのはここだ。石油はマッチを寄せるだけで爆発する。
 石油というかガソリンエンジンの開発者はいたのだけれども、あまりにも不安定すぎて実装化を投げてる。エネルギーの高いものはだいたい不安定なのだ。爆発するし。壊れるとお金かかるし。
 燃え始めると石炭は、火が消えない。
 それでもやっぱり石炭以外の方法がないので、炊くようには言わないのだけども、無言のうちに石炭に火を灯すように話が進む。目の前の蒸気機関に石炭がくべられ、熱源になっていくのをぼんやりと見つめる。
 蒸気機関が徐々に出力を上げていき、設計通りに稼働していくのは快感だ。
 ポンプは予定通りに水を吐き出し、全員の拍手が湧く。それでも、なんと言ったらいいのだろう、これはシルバの望んだものなのだろうかと考えると、そこに至ってないと思ってしまう。なにかわたしの中にまだ見ぬシルバの姿がある気がして、それに足りないと感じることが、わたしには苦痛なのだ。
「まだ、これで喜ばないで」
 ついそう言ってしまう。


 えっと、今回は厳しかったです・・・。
 毎回順調にすこしずつ遅れているのですが、いよいよ全力疾走しなければ予定のタイムに間に合わなくなり始めた感覚です(^_^; たぶんすこしずつ物語が複雑になっていき、書かなければならないことが雪だるま式に増えてきたのでしょうか・・・。
 まあ、書けてはいるから、あとはここからラストスパートで息が続けばいい、などと考えています。

 作中で、鋼板の評価をしている部分が出てくるのですが、ここで使われている用語はJIS規格の用語です。いちおう工学部だったので(まあ今の仕事でも使うのですが)、そういう所はいちおう本物っぽく書いています。

 残り2回か、3回ですねぇ(そう考えるとすこし楽になる)。
 そろそろラストスパートに入りますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
(そして走りきれると想いたい・・・)


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