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 『あらしにあこがれて』3


 こんなだったシルバを一言でいうと、お金がないという言葉になる。
 わたしがほとんどのお金の流れを握っていたし、とにかく理不尽なほどに兄の工房にお金を吸い上げられていたことは事実だ。それをやっていたのはわたしであり、理不尽なことをしていたのがわたしだったので、いつ工房の人間に、シルバはしないとしても、だれかに殺されるかもしれないと思っていた。どんなに恐ろしいことをしていたのかさえ、わたしには見当さえつかない。
 それでもシルバは寛容で、わたしが常に工房にいることを許してくれる。
 わたしはその工房にいて、サウスの書物が形になっていくのを見ながらゆるやかな昼を過ごすのが好きだった。そこには都会の喧騒はなく、ありがちな書類仕事もなく、真剣な、しかしのどかな手作業しかなかった。
 シルバは板状の鉄を曲がるまで高温にしてらせん状に巻いて筒にする。
 かちんかちんと叩きはするけど、お互いのやり取りはささやき声のようで、ごうごうという炉の音にかき消されそうになる。
 この製法が稀有であって、板状の鉄を直線的に芯棒に単純に包み込むようにして作る筒とは圧倒的な差があった。強度が違うのである。シルバの筒は暴発しない。それがブランド価値になり、多くの貴族から発注が殺到していた。農耕地の害竜を追っ払うのに使うのだという。畑を荒らす竜に発砲して痛みを覚えさせると、銃声に怯えるのだという。
 シルバは奇怪な装置を作って、砲になる直管を造り始めていた。旋盤に似ていながら、あちこちの温度管理が容易にできる。微妙な温度変化を駆使して、筒の芯棒である鉄と管の温度差を変えていく。叩くと溶けて筒になる。それを叩いて、火入れをすると鋼鉄になる。
 シルバの未知の鉄という宿題は、まだ念頭にあった。
 純鉄を叩くことで炭素を浸炭させることで、硬くなることはよく知られていた。
 しかし、ダマスカス鋼と表記される鉄のことがまったくわからない。これの製造方法がわからないのだ。というかダマスカスってどこにあったの?
 鋼鉄の筒の作り方はほぼ確立されていて、繊細な銃にしていく作業が最難関だったが、シルバは5秒もかからずに適切に火薬が発火する場所を飴のように切り取っていき、弾を込める可動式の覆いがスムーズに動くように僅かな誤差を小さなハンマーで調整していく。
 ドライゼ銃の名称が、シルバ銃とならなかったことの方がふしぎなほどで、実質的にシルバはドライゼさんの銃を乗っ取った。シルバの工房でしかこれは作れないし、その利点がわかっても真似できる工房はなかった。
 シルバのドライゼ銃だとあちこちで呼称された。正直面倒なので、以後はシルバの銃と呼称することにする。
 シルバの銃はだいたい面倒くさい銃で、そのめんどくささのおかげで暴発がほとんどない安全な銃になっている。そのためにおそろしいほど強度確保のために叩くし、叩くたびにずれる正円の砲を、常に微調整する。
 そんな誤差も許さないのかと思うのが日常で、わたしにはどこに狂いがあるのか分からない世界で調整していく。おそろしく精密な銃が生れていく工房を眺めるのはのんびりとしたものなのだが、シルバが試し撃ちをすると、必ず欠陥が見つかる。
「5センチずれているかな。微妙だけどね。これだとうまく行かない時もあるよ」
 50メートル先から撃って5センチである。
 変態的な射撃の名手がこのシルバの銃の精度を決めていた。神がかっている射撃の名手があってないと言えば、誰も言い訳ができなくなる。シルバはそもそも射撃の腕があって、そこから自分で作る銃の信頼を獲得していった。
「この銃は正確ではない」
 これに抵抗できる人はいない。
 目の前にいるのが射撃の神だからだ。
 それで、正確だとお墨付きをもらった銃を固定して、機械的に射撃精度のテストはできる。同じ条件で固定した正確な銃と、テストする銃で比べれば結果は明らからかだからだ。

                   ※

 姉貴風を吹かせていると言われるのは好きではない。
 そもそもわたしはシルバより1年年長なだけだし、正直に言ってわたしは雑用係の脇役だ。シルバがいなければ兄の工房は存続できず、彼が主役であることは明らか。
 だけど、この時はさすがに言った。
 振り返えるとあからさまな姉貴風だったし、これが重要だとは分かっていなかった。
「あんた、まだこんな本読んでるの?!」
 野ばらの装丁をされたベストセラーを手に取り、シルバに突き付けた。シルバはしどろもどろになって、ぶつぶつと呟く。
「みんな読んでるよ……」
「荒唐無稽な本じゃない! だいたいこれ、主人公がアドレルを救ったことになってるけれど、アドレルは週報でもみんな知ってる通り壊滅したし、」
「うん」
「それにこの主人公の死神は男性ということになっているけれども、実際に裁きを受けて死神の二つ名を受けたのは女性だったし、」
「たったひとりの女性がキュディスに放り込まれて、しかもアドレルを救っただなんておかしいでしょ! おとぎ話じゃない!」
 シルバはしばらく考えた。
「でもさ、共感するんだ。シドはおかしいよ。奴隷を売買するべきではないし、キュディスの怒りを買うようなものだよ。この人はつねにキュディス人を奴隷にしないように頑張っている。ぼくはこの人の助けがしたいな。役に立つかどうかは分からないけれども」
「ばっかじゃないの! あんたなんて戦場にぶち込まれて、死んでしまえばいいんだ!」
 シルバは戸惑って、わたしの手首をおそるおそる握って、ため息を付いて言う。
「そんなの、夢のまた夢だよ。ぼくの仕事は最前線に赴く貴族たちの竜を用意することだけ。そんなことはルナだってわかってるだろ? 卑しい仕事だよ」
 いら立ちが芽生えるのは、こいつがおそろしく謙虚だからだ。
 わたしたちは、その苦悩する天才にたかっているだけだと、気付くからだ。
「メイファは知ってるだろ?」
 知るも知らないも、シルバの工房の統括をしている女の子だ。それを取り出すのはずるいと思うのだが、言いたいことはわかった。
「ぼくは話してわかったんだ。この子は、本来頭がいいんだって。それが特別な事情で発揮できていないと。信じられるかい? 彼女は奴隷として売られていたんだ。遠い東の国の出身だし、言葉もわからない。それでも、ぼくと話せた、言葉は通じないのに」
「でも、買ったんでしょ?」
 これはいじわる。
「それ以外方法がなかったんだよ。仲間として迎える方法が買うしかなかった」
 ルナにとっては、メイファがシルバに特別な感情を抱いているのは明白だ、と考えるのが面倒くさかったのだが、明らかにこれがいなくなると、シルバの工房は立ち行かなくなることはわかっていた。
「決して奴隷じゃないよ。仲間なんだ」
 何かわたしの古傷をえぐるようであるが、罪を犯したのはわたしだ。贖罪のために死にたくなり、辛いとしか言えなくなる。わたしがシルバを奴隷だと思っていたことは事実であるし、否定するすべがない。それを責めることをしないのは彼の計り知れない寛容さであるし、そこで生かされているのを感じはする。
 かれは得体が知れないほど広大だった。
「でもさ、こんなに面白い人たちが集まってボルニアに抵抗すれば、なんかできる気がしないかい?」
 楽観主義とは言わない。
 シルバの思考は未来に対して太陽のように明るいが、現実主義者である。それは死神リニーという現実主義者の権化のような天才軍師を得て、開花していく。
 シルバはたしかにあらしにあこがれていた。
 自分の力がどこまでか知りたがっていた。
「奴隷制が未だにはびこっているのは、機械が発達していないからだよ。ルナもわかってるだろ? 鉱山で出水したときそれを組み上げるポンプがあれば、人はいらない。人が死ぬかもしれない危険な作業だ。石炭の蒸気機関があれば、こんなの問題にならない」
 シルバの視線は強くて、言葉に困る。
「そうだけど、まだ石炭の内燃機関の排気問題が解決してないの。構内で燃やすと、酸素がなくなるし、煙がひどいわ。炭鉱中に毒ガスを撒くようなものなの」
「うん、そうだね」
 しばらくシルバは考える。
「こうしたらどうだろう? 蒸気機関は坑道の外に置く。そして坑内にはモーターを置く。そして蒸気機関には発電機を繋いで、その電力を構内のポンプに送る」
 ルナはしばらくなるほどと考えたが、あることに気づいて眉をしかめた。
「それってさあ、発電機のモーターとポンプのモーターの2つが必要ってことでしょ? どんだけお金がかかると思ってるの? モーターは高いのよ?」
「奴隷を買うより安いんじゃないかな?」
 冷静に検討してみると、ほぼトントンだった。
「まあ・・・」
「だったら人が死なないほうがいいよ。ほら、こっちの方がいいじゃないか」
 この熱意がうっかり惚れ込んでしまう理由なのだ。
「だったらさあ、あんた、それやったらいいじゃない?」
「え?」
 わたしは椅子の背に持たれ、背伸びをして天井を見上げた。
「お金必要なんでしょ? そんなのわたしが調達するから、あんたは好きにしたら?」
「ど、どういう、いみ?」
 反った背を戻して、思わずにやにやして、シルバを見てしまう。
「その心意気を買ったって言ってるの、鉱山につてぐらいあるんでしょ? やりなよ」
 まあはっきりいうとこいつが本気になったときには、だいたい回収できることは長い付き合いでわかっているし、まったく回収の見込みが立たない研究者たちに罵倒されるのは、もう慣れっこになっているし、その蒸気機関をわたしがやってもいい、とさえ思っていた。最近触れるのはお金の書類ばかりで飽き飽きしてはいるのだ。
「だけどさぁ、利益の8割は渡してよね、利益よ? 売上じゃないから、安心して。周辺を黙らせるにはそれぐらい必要なの」
「暴利だよなあ……」
「あなたに渡るお金は文句ばかりの研究者からぶんどってくることで生まれるの。その口うるさい連中を黙らせるには、お金が必要なの。汚い仕事だなんてことはわかってる」
「あ、あの、隊長! この女に譲歩する必要はありません! すべての利益を稼いでいるのはうちなんですから!」
 シルバは突然割り込んだ異国のうつくしい工房長を見て、困ったように眉をしかめる。
「メイファ、お金の話はルナに任せているんだよ。必要なときにお金が来なくなったら困るだろう? メイファは硝石を買うお金がなくなったときにそれを用意できるのかい?」
 たぶんこの子は、わたしをライバルと思っていて、自分のほうが魅力的だと思っている。わたしは正直、自分の研究成果の方に興味があって、自分の外観にはまったく興味が無いのだけれども、張り合う気は一切ないと言っても分かってもらえない。
 容赦なく分かりやすい方法で決着をつける。
「50万グロアはかき集める。だいたい出資してくれるつてはあるからさ」
「たすかるよ。面倒ばかりでごめんな」
「ちゃんと稼いでよ? 出資者が大儲けできないともう次はないのよ?」
 結局、わたしの取り分は6対4になる。
 数字にしてみると2倍のお金がシルバに流れたことになる。結果的にシルバの事業には大量の金が流れ、世界初の砲兵兵団を整備する資金になる。
 そしてそれがシドを守った。まさかこんな思いつきで決まった事業が当たるなんて。


 えーと、技術的な解説は終了時にまとめてお送りしたいのですが、いちおうそれなりの技術史の本に出典があります。シルバの製銃方法はトルコのもので、芯棒を包むようにして筒を作るのは欧州や日本の製銃方法です。
 ドライゼ銃というのは実在の銃でプロイセンで開発されたものです。
 風の谷のナウシカのナウシカが持っている銃に機構が似ています。
 たぶんあの銃もドライゼ銃をモデルにしているのでしょう。

 もともと蒸気機関は、鉱山で出水があったときの汲み出し用として発達したのですが、高出力な電動モーターの発達がだいぶあとなので、その頃はひどい状態で使っていたようです。このお話ではサウスの書物が発見されると、技術発達の順序関係なく発展してしまう事になっているので、当時は何故か高出力電動モーターがあった、ということにして進んでいます。

 シルバのライフル銃の腕ですが、ライフル射撃に50メートル先の的を撃つ競技があり、この最高点10点の円が直径5センチです。そこから5センチごとに9点、8点、7点となりますので、5センチずれるというのは、半径ですので9点と8点のちょうど境界線に当たるぐらいを意味します。
 しかもこれ、反動のある火薬銃ですからね(^_^;
 神域に達している精度で、まあオリンピックでも無敵だろうなあというレベルですw


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