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 『あらしにあこがれて』2


「じゃあ、読み上げるから、ちゃんと写筆してよね!」
 シルバはその横暴に耐えるが、すぐに速記ができる者を呼び、ため息をついた。

 この目の前にいるひょろひょろは天才だ。
 銃器に限った場合ではあるが、才能があることは否定しない。
 神から授かった才能の持ち主をあげろと言われれば、まずこいつを、不愉快ながらも挙げる。まず、射撃の腕前が神がかっているし、銃器を創ることもできる。無駄に自分を誇るところもないし、サウスの技術に素直に感心し、簡単だというように模倣する。
 たった数分で、難題の答えを見つけ出すし、そのために猛勉強をすることもしない。
 わたしとまったく正反対の天敵。
 おそらくというのも変な話なのだが、彼がサウスの工房にいたとしも一流の開発者と最新技術について話し合うことができただろうという確信はあるし、ときおり彼が虚空を見上げてぶつぶつと話しているの見て、ああ、サウス人と会話しているのだな、と思うときさえある。
 彼がサウス語を学ぶことを必要としないのは、ちょっと聞くだけでそれがどういう技術的思想で実装されているかを理解するからで、虚空に向かって口走った言葉の中にはその書物にさえ書いてないことだって混じっていて、はっとする。
 その不愉快さが開発者としての嫉妬であるとは分かっているし、わたしが猛勉強してようやく理解したことを、彼は夜の散歩でもしてきたようにいつの間にか通り過ぎている。
 しかし彼は”銃の”天才であり、シドという国での居場所はぺネスにしかない。
 彼は自分が、禁忌に属する分野の天才であることを理解しており、本人は一切喜んでいない。彼には強要をしたくないが、それでは兄の弟子たちの資金繰りを維持できそうになく、しかたなくわたしが嫌な金銭面の役をする。
「この銃は後詰め式で、機構もそんなに難しくないでしょ? 工房じゃあ直管も作れるし、この後詰部分の機構も難しくないと思うのだけど」
 そうやってひっぱたいてやらないとやる気にならないのだ。
「ルナは、ほんと分かっていて助かるな。これは確かに簡単で、今すぐにでも作れるよ。このドライゼ銃は革命だね。こんな簡単だったなんて。よく見つけてきてくれたね」
 銀頭は関心を持ち、側に控えていた者に気づいた点を語り始める。鉄の温度はこの通りではだめだ、そんな温度はここの窯ではでない。低温で叩いて鍛えるしかないね。
 熱心なシルバ信者である、工房長のメイファは頷いて、その言葉を記録していく。
 シルバが買ってきた解放奴隷で、元は東方の貴族の娘だと聞く。いや違う、奴隷を買って、市民権を与えたのだ。解放奴隷を買ったのではなく、奴隷を買って、なんの条件もなく市民権を与えて、奴隷の身分から解放したのだ。
 それが恐ろしく有能なことは否定しない。
 ルナはさすがに、現場までは口を出さないのであるが、その真剣な表情を見ていると、ああ、銀頭だなと思ってしまう。10年前に戻りたいとは思わないけれども、孤児と名家の偉そうな跡取り娘という、恥ずかしい出会いをしたあの頃に戻れたらと思ってしまう。
 わたしは存在を消し去ってしまいたいぐらい尊大だった。
 彼を奴隷だと思っていた。
 恥ずかしいにもほどがあるし、あの時間をやり直したいとも思う。
 今のシルバを見ていると、人として何をすべきなのかの、手本を見せられているようで怖い。
 シルバは研ぎ澄ましたうつくしい銃のようだ。
 射手に文句さえ言わずに、ただ言われたとおりに発砲する。
 ルナが神童と目されていた兄の懐刀と思われていた時代は、まだよかったのだけど、兄のメッキがはがれていく過程で、ルナはつらい思いしかしなかった。脱落していく膨大な弟子たちの世話をしながらも、また駄目だったとため息をつく。そんな中で遠慮なくおまえは本物だと思えたのは、この腐れ縁だけで、たぶん本人には自覚がない。
「あー、面倒くさいやつね! これがほんとに役に立つといえるの?」
 銀頭はしばらく考えて、
「うん、まあ、そんなに悪くないと思うけど」
 これがいらつくのだ。
 さっき褒めていただろ。
 サウスの最新技術だぞ。これを見つけるのにどんだけかかったと思ってる?
「ただ、ちょっと難しいんだ。これが書かれた時よりも、今の鉄は固くない。銑鉄はもろくて鍛鉄は固いことはルナも知ってるだろ? でもこの文章を聞く限り、ぼくらが鍛える鍛鉄よりも固い鉄を想定して書いている。未知の鉄だよ、何か知らないかい?」
 この幼馴染がむかつくのは、おそろしく正確な所だ。
 油断していると気づかないのだが、「書を聞く」というのは、サウスの流儀だ。サウス人は書を残さなかった。現在伝えられているのは、それを周辺民族が速記したもので、サウスでは歌と称される。歌の速記本として残っているのがサウスの技術書なのである。
 こいつはいつもサウス人のつもりでいる。
「あんたはサウスの音を聞いたことがあるの?」
 これはいじわる。
「ないなあ、読んでくれないのかい?」
「教えてあげるから、自分で勉強しなさい。つきっきりで何か月でも付き合うけど」
「ルナはぼくが面倒くさいから、いくらでも付き合ってくれるのかい?」
 思わず反論する。
「めんどくさいはやめなさい」
 嘘を言う。わたしはどんなにめんどくさくても、銀頭のきれいな言葉を聞いていたかった。こいつのことばは実現には難しいことを言うけれども、かみ砕くとだいたい正確なのだ。その正確さを聞いているのは、きれいな音楽を聞いているよう。それは神官の宣託を聞くように心地よいものだった。
 のちの技術法制の話につながるのだが、リニーが巻き起こした激論は、最前線の自由都市を難攻不落の最前線に変えた。一時はシド中の発明家の半分がこの都市にいたというし、莫大なシドの富が防衛を理由にこの都市につぎ込まれ、ラスぺ、ぺネスに続く、第三の自由都市サイルがこのボルニア戦線の最前線に築かれた。
 広大でありながら難攻不落の都市は、きちがいたちがたむろする最前線になり、最高の楽園だったが、それは次の話だ。サイルの話は複雑なのである。たった一人によって解決するまで、恐ろしいほどの変遷をたどる。奇跡の都市は恐ろしいほどの変遷をたどるのである。サイルの話はとても面白いので次にしよう。
 このときの銀頭はだいたい銃の機構にしか興味がなくて、目の前に提示された技術書に夢中だった。ドライゼ銃と書かれた技術書に夢中で、それがどう使われたかには興味がなく、その機構のすごさに打ちのめされていた。
 わたしにはどこがよいのかわからない。
「こんな合理的な銃があったなんて。ライフル溝を設けてしまうと、竜を殺してしまう。だから滑空砲のままの方がいいんだけど、そこが問題じゃない。これは何度も撃てる銃だよ」
 何を言っているのか分からない。シルバは熱っぽく語る。
「先込め式ってわかるだろ? 今の銃が、だいたい3分ぐらいの充填時間が必要だったのに対して、この元込め式は30秒ぐらいじゃないかな。単純に6倍。相手が1発撃つ間に6発撃てればそれは無敵だよ!」
 うん、なんだかよく分からない。それでも唯一の相棒のように話してくれるのが嬉しくて、なにしてるんだろと思うのさえ忘れてしまう。
 ただ、シルバは殺すために撃つ銃を造っているわけではないから、ぺネスでの仕事においてどれだけ有効かも、よく分からない。だいたい竜は発砲しないし。
 そもそもあんたは一発百中の奇人じゃないか。
 短時間で何発も撃てることを必要としていないのだから、この興奮のしようはよく分からなかった。ただ、のちになってわかってきたのは、こいつは竜を無力化する竜狩り部隊をボルニア戦で投入してほしい気だったらしい。つまり百発百中でない砲兵部隊が欲しかったのだ。
 そうすると射手はへたくそだ。
 だから、5発失敗しても1発当たればいいという状況を喜んだようなのだ。
「こんなの意味ないでしょ! あんたがおかしいの! 竜を失神させることができるのはあなただけなの! 馬鹿なの?! 騎手を殺した方がいい!」
 シルバはしばらく考えて、おもむろに言った。
「ルナ、やめてよ。ぼくはだれも殺したくないんだ。それに騎手を殺すのは無理だ。正しくないよ。騎手は殺すべきではない。騎手を殺したらその家族には恨む権利が生じる。シドは恨まれる国になるんだよ。それよりも竜を無力化したほうがいい。攻めるのが難しいと理解させればいい。追っ払えれば充分なんだ」
 ぼそぼそという声に惹かれたというよりは、言っていることの大きさが瞬間に理解できなかった。そもそもこの時期にこいつが天才的な領主であることを、分かっていない方がおかしいという方がおかしい。
 シルバはこの時は単なる鉄砲屋なのだ。
 のちにシドを率いるのは、死神リニーでありその主君は便宜上シルバになる。
 リニーはシルバの権限を最大限に生かし、何もかもをするのだが、シルバはすべてを許す。シルバの陣営にはおそろしく有能な野ばらの諸侯が集まり、それに対してOKとNGを言うのがシルバの仕事だった。
 兵器を、竜を追っ払うためだけに使うと言ったのはほとんど唯一の自己主張だ。
 これでボルニアに勝てるのかとはふと頭にはよぎったのだが、この方針が叙事詩にうたわれる野ばらの諸侯を支えたのである。殺さないと宣言することは、たしかにシドの立場を守っていた。自分たちは侵略されているだけだと。そうするとどちらが暴虐か合戦となる。シド・ボルニアの一大大戦がそれほどの損害もなく済んだのは、兵を殺したら負けの戦いに持ち込めたからだというのが大きい。
 こんなバカなことをシルバが言っていたのは、ボルニアの史上最強の騎竜兵団が侵略してくることがほとんど確実だった時。きれいごとというのは容易いが、大量殺戮を競い合う大戦になっていたらどれほど恐ろしい歴史になったかと考えると怖気が走る。シルバがいなかったらと思うと怖い。



 ちょっと前回とのつながりがわかりにくかったので、前回の最後2行を便宜的につけています。
 このぶちっと切るやり方は、リズミが取りやすいので使ってしまうのですが、こうやって分割されてしまうと、分かりにくいですね(^_^;


  
| 自作小説 | 22:09 | comments(2) | trackbacks(0) |
この話は前の章のボルニアの話の続きでシド側の話になるのですかね。
野ばらというと、もしやあの方が、シド側につく??

この話の時点ではすでにボルニアに侵攻されている?
そんな中での、シルバの「竜を無効化したほうがいい」のところのセリフにしびれました。

サウスは文章を残さなかったのか。。。
長い数式や論理文をポピュラーミュージックに乗せる歌い方はないものかと空想したりはします。

では。本年はお世話になりました。良いお年を。
| 綴 | 2016/12/31 12:49 AM |

 綴さん

 コメントありがとうございます、hikaliです。
 えーと、シド、ボルニア、シド、ボルニアと交互に行く形になります。
 『死神の帰還』がシド、『鉄鎖の次王の恋』がボルニア、第三作は名称が決まっていませんがシド側でシルバのデビュー作、第四作はこれも名称が決まってませんが、ボルニアの王位承継戦争です。
 第五作が特別でアテナイスに当てられる予定です。
 この辺の経緯は説明が難しいのですが、ほぼほぼあっています。
 野ばらの諸侯は、クリフォード(印刷屋さん&ジャーナリスト)が取材したドキュメンタリーの本の表紙が野ばらの装丁(これはリニーが希望)なのでそう呼ばれているのです。

 アテナイスは天才的な外交能力と、鉄鎖の次王を唯一止められる地位にあるので、まあ大体ご想像のとおりなのですが、そこに至る経緯は、お楽しみにして頂けると嬉しいです。

 予定されていることはいろいろあるのですが、ルナをこう使ってきたか、という展開が用意されいますので、だいぶ先なのが申し訳ないのですが、それよりもサイルを積み上げたのが大きいかなあと思っています。『ジャングルの要塞』ですね。サイルを巡る話は面白いので、お楽しみにして頂くと嬉しいです。

 こちらこそお世話になりました!
 幸せな新年を!


 
| hikali | 2016/12/31 4:00 AM |









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