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 おいしい経験

 定食屋というのはどんな街にも必ずあって、だいてい五十代か六十代のおじさんとおばさんがやっている。水道橋にも、品川にも、赤坂にも、ぼくが住んだどんな田舎の町にもこの定食屋というものはあって、寂れていようが、いやたいていは寂れているのだが、見つけるとかならず一度は入る。夜はたいてい居酒屋になっているから入るのは昼。入ると、懐かしい空気に包まれる。
 食べるのは定食屋だから当然定食で、どんな一等地であってもこの定食なるものが1000円を超えることはない。だいたいは焼き魚定食を頼んでおけば外れることがなく、出されるお茶はおいしいことが多い。お客さんは常連と思わしき人々が多く、おじさんばかりかと思えば、OLなどの姿もけっこうある。
 ぼくの仕事中の昼飯はもっぱらこういった定食屋で、ひとりの常連として、街の秘密を共有する心地になる。表づらは寂れているけれど、中に入ると常連でぎっしり。そんな店の定食はたいていおいしい。
 こんなことを書くと、毎日焼き魚定食ばかりで退屈しませんか、と聞かれそうな気がしてくる。え? そんなことないよ、とおもわず言い返したくなる。魚と行っても、サバもあれば、ホッケもあれば、サンマもある。サンマだって、秋のサンマと春のサンマは違うし、店に入ると常連には、今日はいいサンマが入ったよって教えてもらえる。
「じゃあ、サンマお願いします」

 むかし新橋に勤めていたときがあって、そこで定食屋にはまってしまった。
 おそらく新橋界隈には二百軒近い定食屋があって、それがしのぎを削っているので、おいしいお店が多い。そして、どの定食屋も出す物は同じで焼き魚定食。おそらく、新橋を食べ歩いたことのない人には信じがたいと思う。
 ぼくの勤めていた会社は、昼から戻ってくるなり、
「今日、どこで食った? そこ旨かった? どんな店?」
 と訪ね合うのが日常の会社で、そこで仕入れた情報をもとにまた別の定食屋ののれんをくぐる。
 その当時、ぼくのマイブームは塩サバで、新橋中の定食屋の塩サバ定食を食べ歩いて、ナンバーワンを決めてやろうと意気込んでいた。塩サバ定食はどこも700円を超えることはなく、たいてい600円で、安ければ500円。マクドナルドで食べるのとほとんど変わらない値段で食べることが出来る。
 そうやって塩サバばかりを食べ歩くうちに、塩サバ定食の世界の奥深さに気付いてくる。
 切り身の切り方、焼き方、付け合わせ、ご飯の炊き方、お茶の味。
 どの店で食べても、かならず違うところが見つかる。
 味噌汁のおいしい店、焼き方がジューシーな店、さりげない漬け物が粋な店、最後のお茶が格別な店。
 店の雰囲気まで入れれば、当然に千差万別。
 単なるサバ塩定食と思うなかれ。
 名前でくくるとどれも同じだけど、カレーが違うように、ラーメンが違うように、塩サバの味はどこも違う。
 それ以来、ぼくは定食屋にはまってしまったのだ。

 新橋ナンバーワンのサバ塩に認定させていただいたのは、ニュー新橋ビルにあるたぶん有名なお店で、確か塩サバ定食は730円とちょっと高い。
 しかし、やはり焼きがいいのだろうか、とってもジューシーで、しかも焼き目は茶色くかりかり、しじみ汁の味も満足で、お茶も文句なし。誰かにその店を紹介するたびに、ぼくはこの店は七色の塩サバを出す店だと紹介する。
 焼き目、肉、血合い、皮と、塩サバを形成するあらゆる味が際立っていてハーモニーを奏でている。それがあまりにも色彩豊かなので、そう呼んでいたのだが、誰かを連れ込むたびに、ああ、確かに、こんなおいしい物があるんですね、と塩サバに感動される。
 そのお店は雰囲気も、ほかのメニューも最高で、けっこうなお気に入りで、なんどもなんども飲んだり食べたりした。
 そうやって、新橋を味わい尽くすと、その豊穣さを捨てられなくなる。
 あるとき、急ぎの仕事があって吉野家に入る。
 湯飲みにつがれたものを飲んで、うっとうめいてしまった。
(なんで吉野家はお湯を出すんだろう?)
 ふしぎに思って湯飲みをみつめると、それは吉野家ではお茶と呼ぶことにしているもの。
 その瞬間、なんて貧しいのだろうと、吐き気がした。
 そんな気分になると、ぼくはいつも定食屋に逃げ込むように入っていく。
 それはどんな街にもある定食屋。
 ぼくは、通うことになる街に出会うたびに、その避難所を探す。

 いちばん昼食どころ探しに難儀したのが品川の会社で、品川と言っても、青物横丁駅が最寄りの若干南にある会社。大手ばかりが組んだジョイントベンチャーで、傭兵部隊ばかりなのが原因か、誰もが優秀なのだけど、非常に空気が悪い。
 ぼくは一年近くそこにいたけれども、その間、3回の引き継ぎをした。
 引き継ぎというのは、一ヶ月ぐらい掛けて、前任者の仕事を後任者に引き継ぐのだが、その間はほとんどべったりとその引き継ぐ2人でひたすらに行動を共にし、ひたすらに話し込む。
 そのうち2回が男性で、1回が女性。
 特に後任側だった2回は、会社側の冷酷な判断でその人は別のところへまわして、ぼくにまわすみたいな感じだったので、とにかく相手側を傷つけないようにひたすらに配慮したのを思い出す。それを経験すると、ああ、ぼくは誰とでも組めるなと妙な自信がついてしまったのであるが、上司が前任者に対してカリカリに怒るのを、まあまあ、まあまあ、なんとかなりますよ、とひたすらになだめていた気がする。
 そんなときにやはり威力を誇ったのが定食屋だった。
 前任者とともに赤坂の編集スタジオに素材を取りに行く。
 仕事の雰囲気はいつもカリカリしており、それでせわしない。なので、地下鉄に乗りながら、ぼくは提案する。
「そうだ、新橋で昼飯にしませんか? いい店があるんです」
 七色の塩サバの話をして、納得してもらう。
 新橋に降りると、そののどかな雰囲気に、唖然とする。
「なんかさ、なんでこんな忙しいんだろう? おれたち」
「不動産関係なんでしょう? じゃあ、あんなに忙しくないですよ」
「苦手だったんよね、ITって」
 そんな話をして、どこかでつながる。
 ぼくが辞めるときも、同じよう。
「大丈夫ですって、なんとかなりますから」
 ぼくはひたすらになだめる。
 それで、昼飯に誘う。
 その会社の周囲はもう開拓済みで、絶好の店がいくつもあったのだ。
「いい店があるんです。15分ぐらい歩きますが、大丈夫ですか?」
「えー、そんなにあるくんですかー」
 ぼやきばかりの彼を連れながら、あれこれ話込みから、目当ての店を目指す。
 そこは、ソバだのカレーだのを単品で出して、そこにオプションでかき揚げだの、ソーセージだのを乗せられるようになっている、コストパフォーマンスが高い割に、アットホームな雰囲気の立ち食いの店。
 そこで彼は、ゲーム会社勤務だった頃の話をしてくれる。
 ぼくも夢中になってそれを聞く。
「へー、その辺ってどうなってんですか?」
「ああ、その辺は複雑で」

 もしぼくに、神様より与えられた偶然をたったひとつだけ奪うけど、どれはだめかな?
 といわれたら、たぶんわたしは二番目にこの新橋を選ぶと思う。
 こんなにおいしい経験はそうそうないと思う。

| 文章力修行中 | 22:18 | comments(0) | trackbacks(0) |









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