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もはやこれは最高傑作 え? 書いたのはフェリックス? [書評]「審判」ディック・フランシス&フェリックス・フランシス


 ディック・フランシスの、というよりもフェリックス・フランシスの最新刊「審判」を読む。
 普通に面白くて、正直に言うと戸惑う。
 長年のファンである、わたしにさえ、ディック・フランシスが書いた小説にしか見えないのだ。
 しかし、訳者あとがきの説明によれば、これを書いているのは明らかにフェリックスであり、英国の新聞や、米国の新聞によれば、これまでの手堅い文章に、さらに新しい視点が加わって素晴らしい小説に仕上がっている、とわたしが感じている感想とほとんど同じ感想を書評者諸氏は感じているようなのである。
 これは以前も書いたが、正直少なくない衝撃を受ける。

 ■作家性は相続できるのかの実験 ディック・フランシス「祝宴」
 http://blog.story-fact.com/?eid=858410


 かいつまんで言えば、世界最高峰と称させるミステリー作家の作風を息子が相続して、ゴーストライティングしてしまっている、という話なのだ。わたしなどは、世の中で最も実力主義なのは小説家だろうと思っていただけに、この世界最高峰の実力を、小説をほとんど書いたことがないだろう息子が承継してしまっている、という事実を突きつけられて、唖然としてしまっているのである。
 いまだ、この点を検証している人もないようなので、そっちも驚きというか、見る眼がないというよりは、あまりにも大きなパラダイムシフトに、ついて行けないというか、事実を受け入れられないのだろうと思ってしまう。

 前回も書いたが、これは日本では頻繁に行われてきた。
 たとえば、狩野派だよといえば分かるだろうし、日本の明治以前の美術作品というのは、ほとんど、代々受け継がれていく名工の家に伝えられてきたものだからである。
 たとえば、お茶なら千家十職が有名である。
 こういった流れに対するカウンターカルチャーとして琳派のようなムーブメントも起こるのだが、それによって狩野派が仕事を失ったという話は聞かない。
 しかし、明治以降は個人主義が主流となり、名工の息子もまた名工という事はあまり起こらなくなっている。唯一の例外は高村光雲から高村光太郎の相続なのだが、この辺がどうやっておこったかは光太郎の文書を読むと非常によく分かる。幼い頃からきちっとした修行を受けているのである。
 ある意味、高村家が古風だったために起こったことだと思われる。
 なので、このフランシス家で起こっていることは、古き良き日本の職工家で代々行われて、それなりに機能してきた事なので、別に驚くことではないし、むしろこちらの方が普通なのだ、となだめることができないでもないのだが、いや、無理です(笑)。
 アガサ・クリスティーの孫娘が、いまだにポワロとか書いている状況とか想像してみてください。
 ディケンズ家が、シェイクスピア家が、夏目家が、手塚家が。
 そんなことがこの世の中で起こったことは、わたしが知る限りでは、一度もないのだ。

 しかし、重要なのはそこではない。
 重要なのは、このわたしでさえ、各新聞社でさえ、このフェリックスの小説を、ディック・フランシスの小説と見分けがつかない、というところにある。
 もし、わたしがディック・フランシスの小説の中に、たった一冊だけフェリックスがかいた作品があると言われれば、わたしは迷ったあげく、「烈風」あたりを選ぶだろう。



 ディック・フランシスの後期の作品の中でも、特に凡庸な作品だからだ。
 そして、もしこの「審判」を挙げられたら、わたし怒り狂うかも知れない。



 馬鹿を言うな! ディック・フランシスを侮辱するのか! と。
 これこそがディック・フランシスの新境地であり、今後の作品が素晴らしい作品になる事を保証する唯一の保証書なのだ! と。
 さらに無理をしてこんな事を言うかも知れない。

 ディック・フランシスには、これまで3冊の転機なる作品があった。

 1冊目は「興奮」、片手をなくした元障害騎手の探偵シッド・ハレーの初登場作品。
 これこそが、ディック・フランシスの名を世界にとどろかせた記念碑的な作品だ!

 2冊目は「利腕
」、シッド・ハレー再登場の作品で、この作品後、ディック・フランシスは、様々な職業をリサーチしはじめ、手堅いリサーチがディック・フランシス作品の特徴となっていく。
 これこそが、真のディック・フランシスが目覚めた瞬間だ!

 そして3冊目は同じくシッド・ハレーものの「敵手」を挙げたいところであるが、実際にはこの作品の次の作品である「不屈」がいまだにディック・フランシス作品の最高傑作と名高い。
 というか、この不屈でディック・フランシスはおのれのすべてを書ききってしまったのではないかと思うほどで、その後は凡庸な作品が続く。





 それが、前作の「祝宴」で、復活の手応えをファンのだれもが感じた。
 そして、この「審判」で、だれもが頷いたのだ。
 「不屈」で達した高みを継承する作品が出てきたと。
 これがディック・フランシスの復活の狼煙なのだ! と。





 しかし、もちろん、事実は違う。
 ディック・フランシスはすでに89歳で、こんな高齢で小説、しかもばりばりのエンターテイメント小説を書ける年齢ではない。なので、どう頑張っても、この小説をディック・フランシスが書いているということは信じられないのであるし、実際にはフェリックスが書いていると、本人も認めているし、共著になっている。
 なにが問題なのか。
 問題は、これをディック・フランシスが書いているとしか思えない、ところにある。
 引用してみよう。

 いくつかの新聞インタビューでフェリックスは、メアリ夫人の墓のあるケイマン諸島に住んでいる父ディックと、原稿を送り電話で検討するという作業を繰り返して本書を完成させたと述べている。オックスフォードシャーに住むフェリックスが何度かケイマンと英国を行き来したらしいが、主なやりとりは電話で行ったそうだ。《サンデー・タイムズ》紙が父子に行ったインタビューの中でフェリックスが語っているように、議論・検討を重ねながら作品を仕上げていく「ディック・フランシスの小説工房のやりかたはかわっていない」のだ。

 実際に、このインタビューはWeb上に掲載されているので、もちろん読むことができる。
 http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/
 arts_and_entertainment/books/article4639752.ece


 なかなか、生々しい事が書かれている。

I want to know what it’s like writing a book with a close family member, and how his latest collaboration with Felix took off. Felix says: “I got a call from our agent and he said, ‘We have a problem. There’s this backlist of wonderful Dick Francis stories but no one is reading them; we need a new Dick Francis novel. We need a new frontlist.’ ” At this point, Felix relates how he hesitated: his father, then 84, had been through two years of hospital hell and bereavement, and hadn’t produced a book for four years.


 二行目から読んでみよう。Felix says: の後だ。

「わたしはわたしたちのエージェントから電話受け、かれは言った。「我々は問題を抱えている。ここにはディック・フランシスの物語の素晴らしい在庫書籍目録がある。しかし、ここには読んでいない本は一冊もない(訳者注:つまりディック・フランシスファンが読んでないディック・フランシスの本なんてもう存在していないということ)。わたしたちは新しいディック・フランシスの本が欲しい。わたしたちは、新しい出版目録を必要としている」」


 ここでフェリックスは、84歳の父が書くことができるのだろうかと考えている。
 そして、またエージェントが言う。

“Then the agent said, ‘I’ve got someone in mind who might write one’, and I said, ‘If anyone’s going to have a go, I’d rather it was me.’ I said I would do for my father what Mum had done in terms of research. It took 18 months, but Under Orders was the result ? though the title should have been Hospital Rooms I Have Known,” Felix concludes.

「そのとき、エージェントは言ったのです。「わたしはたぶん書くべき誰かのことを知っている」そしてわたしは言いました。「もし誰かがそれを試してみるなら、わたしはむしろそれがわたしであって欲しい」わたしは言いました。わたしはわたしの父のために、母がリサーチと呼んでいたことをしてきました。それは18ヶ月ましたが、「再起」という結果になりました。そのタイトルは病室で書かれるべきだったとは思うのですが」

“And I was more than delighted,” murmurs Dick.

「「そして、それをわたしは十二分に喜んでいた」 つぶやく、ディック」


 と、まあこんな感じで進んだみたいですね。
 あとはインタビュアーが馬鹿っぽいことしか聞いていないので、英文を読んで欲しいのですが、最後の文章が、ちょっとすとんと落ちると言うか、納得してしまう。

A long time, we all hope. My bet is that the Francis franchise is here to stay.

「長い間、わたしたちはみんな望んでいました。わたしの賭は、フランシス・フランチャイズがここに居続ける事なのです」


 ここで、なんと言いますか、フランシス派創設の決意宣言というか、まあ、狩野派みたいなもんだよねえ、と思ってしまうのですが、はたして、そのフランシス工房の新作「審決」はどうだったかというと、
 ――「不屈」で達した高みを継承する作品が出てきたと。
 というレベルにまで達しているのですよね、もうこうなってくると、「不屈」を書いたのはフェリックスじゃないの?! と思いたくなってしまうほど。
 ちなみに、あとがきでは「何度かケイマンと英国を行き来した」と書いているが、これは、

Felix bounced between their houses like a yo-yo.


 なので、むしろ、ずっと行き来してたみたいなニュアンス。
 状況的には、基本的にはメールで送って、それをプリントアウトしたディック・フランシスが電話でフェリックスと議論していて、その間にも、フェリックスはケイマンと英国をヨーヨーのように行き来していた、という、まあ、結構、ディック・フランシスもがんがん口を出して書いた、という感じのよう。

 んー、なるほど。


 ちなみに本作は、法廷弁護士のお話。
 一応法律職であるわたしとしても、なかなかリアルだな、と思う内容でありつつ、法律の限界に挑むみたいなところもあって、とても社会派でありつつ、衝撃的なラストでありつつ、最後の最後まで息のつけないサスペンスであり、まあ、ぶっちゃけ面白いのだ。えーと、わたしがディック・フランシス作品に面白い、というときは、あの映画は面白かったといっている場合と違い、最高峰の中の最高峰として充分に楽しめる内容だし、面白かったと。まあ、わざわざ面白いというのもそんなことは当たり前なので馬鹿らしいけど、その中でも面白かった、という意味だ。
 しかも、本書は実はだいぶ構成を変えている。
 一種のディック・フランシス・パターンみたいなのはあるのだが、そのうちの3割ぐらいが変わっている。たぶん、わたしのようなディック・フランシスファンであれば同意してもらえると思うのだが、序盤の展開を妙にひねってあって、うーん、説明が難しいのであるが、シェイクスピアの均等展開をかなり意識しているのでは、と思う感じなっている。
 つまり出来事が二つの流れのスパイラルで構成されていて、4章のラストで、謎のバランスの配置が均等になるようにきちっと合わされている気がする。
 かちっと音が鳴るのが聞こえてくるぐらい。

 この話は長くなるのだが、これまで書いてきていなかった事なので難しいのだが。というか、わたしはこのシェイクスピアの構成方法は神経質すぎると思っていたので、無視していたのだが、フランシス工房がこれを丁寧になぞっているのを見ると、おっとこれは実は重要だったのだなあ、という感じ。

 この構成方法はシェイクスピアが、ルネサンスの作家だった事をよく表すとされているのですが、ようするに話の展開が、どっちに展開するか分からないように、話のポイントポイントで必ず均衡するようにバランスを取る、みたいな話。
 たとえば、右派に5人、左派に5人の戦士がいて、どっちが勝つかみたいな話の時に、

 1.右5 左5 
     ↓   右派の2人が死ぬ。
 2.右3 左5
     ↓   左派の1人が死ぬ。
 3.右3 左4
     ↓   左派の1人が死ぬ。
 4.右3 左3

 と、ここで、いちどかちっと均衡するポイントを作る、みたいな感じ。
 この後も、

 4.右3 左3
     ↓   左派が1人死ぬ。
 5.右3 左2
     ↓   右派が2人死ぬ。
 6.右1 左2
     ↓   左派が1人死ぬ。
 7.右1 左1

 ここで、また均衡する。
 こういう感じの構成をすることがシェイクスピアは多いのです。なんかシェイクスピアっぽいでしょ(笑)。

 ただ、やはりこれはどうなのかなあ、と。意味あるのかなあと思っていたのですが、推理小説でだれが犯人だろう、どんな事件なんだろうという謎の構成でこれを使われているのを見て、ほほー、と思ったというか、えらく手の込んだことをするなあと思ってしまったのです。

 これ以外にも、おっとっとそういうことだったのか、と思うところも合ったのですが、その辺を書いていると、本一冊ぐらいになりそうなので、この辺で。


 総じて言うと、面白かった。
 ただ、これを今後も続けられるのかは未知数。
 それと日本では結構、高尚な作家と見られているのに、英国ではバイオレンス小説と思われているところがちょっと衝撃だったかも(笑)。おまえら、どこ読んだら、そうなるんだよwww と。

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