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管理人hikaliの開発の日々の備忘録です。
本家はこちら。
http://plaza.rakuten.co.jp/hikali/
『要素による解析基礎 「決まり事(世界観)」上』
 えーと、全角40行フォーマットがこの連載のデフォルトだったので、本家サイトには近日中に載せますので、読みにくいのはご勘弁ください・・・。


 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■
                          第十七号   2018/03/07
   「 物 語 解 析 」
    〜 要素による解析基礎 「決まり事(世界観)」上〜

 「今号を要約!」 

  - - - -< 今号の中身をピックアップ! > - - - - - - - - - - - - - - - - -
 《 本文 》                          《ページ&
                                 落書き欄》
                                 (^_^;

   01:はじめに                       :[ 01 ]
     ──キーワードは、彼らにとっての一般常識(一般常識世界)は
       どこにあるのか

   02:要素による解析ってなに???             :[ 02 ]
     ――簡単ではありますが、説明しています。

   03:解析術講座 「要素による解析「決まり事(世界観)」上 :[ 03 ]
    03-01:「彼らにとっての現在は、いつなのか」       :[ 03-01 ]
        ――時制を意識すると、世界が説明しやすくなる。
    03-02:「これってドラえもんに当てはめると?」      :[ 03-02 ]
        ――マーケティングの話になります。

   04:解析術講座 「実際の、最近の現実作品に当てはめてみる」:[ 04 ]
    04-01:「では実際に現状の物語はどうなんだろう」     :[ 04-01 ]
        ――たぶんこのパートが今回のクライマックスです。
    04-02:「君の名は。の世界観」              :[ 04-02 ]
        ――隔離が本質。
    04-03:「宇宙より遠い場所の世界観」           :[ 04-03 ]
        ――ほんとうにパラレルワールド? な、リアリティ。
    04-04:「ユーリ!!! on ICEの世界観」           :[ 04-04 ]
        ――現実に影響を与えていすぎて、すごいw
    04-05:「ガールズ&パンツゥアーの世界観」        :[ 04-05 ]
        ――ミリオタ受けするディテールと、
          ふわりとしたファンタジー。
    04-06:「天空のエスカフローネの世界観」         :[ 04-06 ]
        ――異世界移転ものの傑作で、恐ろしく濃い。
    04-07:「初代ガンダムの世界観」            :[ 04-07 ]
        ――放映当時言われていた未来予測を絵にしただけ。
    04-08:「逆襲のシャアの世界観」             :[ 04-08 ]
        ――結局誰も、これが最終決着だとは思っていない、最終盤。

   05:おわりに                       :[ 05 ]
     ――ざっと洗ったぐらいでは語れるはずがない。

 ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■ ―― ■   http://story-fact.com/mk_log.php ■


 ● 01 ● はじめに                      :[ 01 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄
  こんばんわ! hikaliです。
  えーと、ずいぶん間が空きました。
  前回が2006年ですか。12年の間に6回の入院をして、同じ回
 数手術をして、3回が鎖骨の遠位端骨折で、3回が心臓手術なの
 ですが、1回死を覚悟しました。
  あれ、ちがう。
  7回の入院だ。
  最後の入院は手術がなかったので、なんかカウントするのを忘
 れたというおかしな状況になっています(^_^;

  前回の書き方を確認しますと、あー、まー、よく分かってない
 状況で書いたっぽいけど、そこそこきれいなガイダンスになって
 いて、これはイキだなと思いました。
  12年前ですぜ。
  わたしは酔って書いた自分の文章に、経験則的に絶大な信頼を
 おいています。この時の状況がどうだったかは流石に覚えていな
 いのですが、思いがけずちゃんと書いていて衝撃を受けた、とい
 うのが正直な感想です。なので、12年も前の文章ですが、これ
 を正典と認めて、そこから続く議論をしてみたいのです。

  具体例として大長編ドラえもん(この物語解析ではこれでもか
 というぐらい登場するのですが……)を実験台にして、その大ま
 かな全体の把握の仕方で、いったいどれだけいろいろなことがわ
 かるようになるのか、を検証してみたいと思います。
  キーワードになるのは、
 「彼らにとっての一般常識(一般常識世界)はどこにあるのか」
  です。
  まずは、その話からしてみましょう。


 ● 02 ● 要素による解析ってなに???            :[ 02 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄
  これまでの物語解析では、物語は「人物」「舞台」「道具」
 「決まり事(世界観)」の四つに分かれ、その四つの働きを調べる
 ことにより、物語をかなり正確に把握できるというお話をしてき
 ました。
  「人物」に関しては、第六号、第七号を通して、「舞台」に関
 しては第八号〜第十一号まで、「道具」に関しては第十二号〜
 第十五号まででお話したと思います。

  前回から、「決まり事(世界観)」のお話をしています。
  ちょっとディープな世界観のお話を楽しんで頂ければ、
 嬉しいです。

  もし、前々回以前の内容がお読みになりたいという方がいらっ
 しゃいましたら、物語解析ホームページにバックナンバーがあり
 ます。もしご興味がございましたら、ご覧いただければ幸いです。


 ● 03 ● 解析術講座  「要素による解析
  ̄ ̄ ̄ ̄        「決まり事(世界観)」上」      :[ 03 ]

  さて、ぽーんと無造作に投げ込んであるのですが、

 「彼らにとっての一般常識(一般常識世界)」

  とは何のことでしょう?
  「一般常識」と「一般常識世界」がわざわざ分けられているの
 で、当然にコレは別のものとして考えているのですが、具体例な
 しに考え始めてしまうと迷宮に迷い込みそうです。
  さらにこの概念は単独で存在しているのではなく、

 「彼らにとっての一般常識(一般常識世界)はどこにあるのか」

  と

 「彼らにとっての一般常識(一般常識世界)」は「どこにあるの
 か」とたいへんやっかいそうなふたつの疑問の交わる地点を考え
 ているのがこの命題なのです。そして、わたしはこれが「世界観
 (決まり事)」の定義の中心部分にある、と言い始めていたりす
 るのです。

  さて、「彼らにとって」の「彼ら」とは一体誰のことでしょう
 か?
  主人公のことでしょうか(当然に、主人公って誰だ? という
 話になるのですが)?
  それとも周囲を含むこととして、どの範囲まで含むのが一般的
 なのでしょうか?
  あなたが大好きなマンガ、映画、ゲーム、演劇、ドラマ、小説、
 アニメ、オペラ、歌舞伎、落語、能と思い浮かぶ物語を片っ端か
 ら考えてみて、自分でじっくりと考えて見るのも、とても楽しい
 ことです(ちなみに古典物語をわざわざ挙げているのは、研究が
 進んでいて、ある程度定形に近い標準的な型が出来上がっている
 からです)。

  わたしが無粋にもその楽しい時間をぶった切ってしまうのは忍
 びないので遠慮するのですが、冒頭でも述べているとおり、本稿
 では物語の標準テキストとして、大長編ドラえもんを使用するこ
 とを述べています。具体的には、

 「のび太と恐竜」「のび太の宇宙開拓史」「のび太の大魔境」
 「のび太の海底鬼岩城」「のび太の魔界大冒険」
 「のび太の宇宙小戦争」「のび太と鉄人兵団」「のび太と竜の騎士」
 「のび太の日本誕生」

  を標準とすることを予定しています。
  ですので、これを当たってみるのがもっとも手っ取り早いので
 すが、まあ無粋といえば無粋です。
  ただまあ、どこへいっても電子版はありますし、中古本は送料
 以外かからない値段になっているのが普通というほど潤沢に流通
 しているシリーズです。この機会に聖典として揃えてみるのもぜ
 ひぜひにとおすすめしてみたくなってしまうシリーズであります。

  まあ、お手にとってみて、どんな物語なのかを考え始めると、
 あれ、これ一筋縄ではいかなくないか? と思えてくるのです。
 まあ、その話はのちほどにしましょう。


 ○ 03 ○ 「彼らにとっての現在は、いつなのか」 ○ 01 ○    :[ 03-01 ]

  世界観の範囲を把握するのに我々がいる「現在」から比して、
 どのような時間にあるのかを真っ先に取り上げるのは、それがわ
 かりやすくて誤解する要素がほとんどないからです。

 「この物語はいつの話でしょうか?」
 「戦国時代です。戦国大名の家臣のお話です」
 「歴史物ですね?」
 「はい、現代人が戦国時代にタイムスリップする話です」

 さてこの場合の、「彼らにとっての現在」はいつなのでしょうか。

 「この物語はとても巨大なロボットが登場しますが、未来の話なの
 でしょうか?」
 「だいたい2015年ぐらいの話でしょうか(あれ、未来じゃない
 ぞwww )」

  お分かりかと思いますが、これはエヴァンゲリオンを現在からみ
 ると変になるという話です。

 「プレスリリースを読むと、使徒だの、ロンギヌスの槍だの、ずい
 ぶん創世記や聖書に出てくるキーワードがちりばめられていますが」
 「そうですね、簡単に言うと作り損ねた人類をもう一回作り直そう
 という物語ですから、そうなるのかもしれません」
 「S、F、ですよね・・・?」
 「いえ、神話です」

  エヴァの方はだいぶ混乱していますが、2015年という時代設
 定があるだけで、シンジくんが箱根の第三東京市にモノレールで
 やってきて、ヱビスビールを飲む上司とペンギンに拉致られて、ミ
 サトの宿舎でアスカになじられてMDウォークマンを聞きながらい
 じけるシーンまで浮かんでくるから不思議です。
  これは非常にシンプルに、「2015年のお話です!」と言われ
 たから、です。

  これ以外の情報は一切入っていません。セカンドインパクトの話
 も、第三東京市がなんなのかも、シンジの母が何を研究していたの
 かも、エヴァがなんなのかも分からないのです。
  なんとなく時代設定をすることの利点が見えたでしょうか(^_^;

  というわけで少し強引ですが、まず第一のまとめをしてしまいましょう。

 「世界観を説明するとき、その世界が現在より時代的にどれだけ
 離れているかを示すと、その世界が理解されやすくなる」

 「過去の時代の話なのか、現在の話なのか、未来の時代の話なのか」

  うん、強引だw 


 ○ 03 ○ 「これってドラえもんに当てはめると?」 ○ 02 ○   :[ 03-02 ]

  さてドラえもんも聖典ではなく通常の漫画である以上、このよ
 うなことをどこかでしているはずです。
  どこでしているのでしょうか。
  コミックスを注意深く読んでいると分かるのですが、ドラえも
 んというマンガは、ガンプラ(機動戦士ガンダムのプラモデル)
 や、スターウォーズ(まんまリ第6大長編リトルスターウォーズ
 なのですがw)が作中に登場します。つまりドラえもんというの
 は読者の(より的確に言えばコロコロコミック読者の)周囲では
 やっている遊びやおもちゃを次々と投入しているのです。
  創刊時のコロコロコミック(雑誌)にはまったく疎いので詳し
 い方にお任せするのですが、この雑誌というのは小学生の「今、
 はやっている旬のもの」のアンテナ雑誌のようなものを目指して
 創刊したのではないかと、のちのコロコロvsボンボン戦争にみら
 れるこの世代の覇権をめぐる戦いなどをみても、思ってしまうの
 です。

  そして、その創刊を担ったのが、ドラえもんでした。
  おそらく事実を告げられてもにわかには信じがたいと思うので
 すが、コロコロコミック創刊号のうち200ページはドラえもん
 の連載です。それが全体の3分の1なのか、2分の1なのかは
 はっきりとはしませんが、尋常ではないドラえもん依存の雑誌が、
 「小学生のいまのはやり」を追った雑誌だったとすれば、とうぜ
 んにドラえもんは、本編はなくても、カット提供などは頻繁にさ
 れていたはずです。これは週刊ジャンプの黄金期辺りから現在ま
 での編集をみてるいれば分かります。
  これをやっていないはずがない、と。
 (これは週刊ジャンプのコロコロ対抗雑誌、「最強ジャンプ」の
 作家先生の発言で確認されました。小学生の間で何が流行ってい
 るかを確認するには、コロコロを読むのが早い、という発言です)

  そうなると、
 
 「彼らにとっての一般常識(一般常識世界)はどこにあるのか」

  が、途端にわくわくと胸の疼くものになります。
  これは純然たるマーケティングなのです。
  当然に「お客様であるコロコロコミック読者の現在」=「彼らに
 とっての一般常識」となるのです。
  となると、物語上の時制は「今、この瞬間、沸騰している小学生
 の常識の間」となるのです。なんとなく『電脳コイル』(アニメ)
 を想起してしまったのは行き過ぎでしょうか。そんなおとぎ話チッ
 クな話にわたしには思えてきます。
  一応ドラえもんは、22世紀から現在の世界に介入が入った、未
 来からの干渉を特徴とする物語であるのに、実際の物語では22世
 紀側の都合というものがいっさい語られていません。本来であれば
 未来側に切実な理由があって、過去改変(これは大抵犯罪行為にな
 ります)をしようとするのが一般的だと思うのです、それがいっさ
 い語られていないので、22世紀が完全に「空気」になってしまっ
 ているのです。

  つまり「彼らにとっての<一般常識世界>」はけっして22世紀
 ではなく、「今雑誌を読んでいる読者の、この瞬間」となっている
 のです。
  極めて不思議なマンガです。
  なのでガンダム(ガンガルという名称)も出てきますし、スター
 ウォーズなんて映画(のび太の宇宙小戦争)にしてしまいました。
 このあたりは徹底しています。

  さて、ここでは意図的に<一般常識世界>と、なんの用語説明も
 せずに使いました。
  実はドラえもんにはもうひとつ特殊な状況が存在しておりまして、
 それを説明するとあら不思議、もう一方の<一般常識>との区別が
 何の説明もなしについてしまうのです(つまりサボりたいだけ、と
 も言うw)。

  わたしたちは(主にTRPGなどをやるひとたちは)、その滞在する
 星系の技術水準が、遅れているのか進んでいるのかを説明する時に、
 TECレベル(技術レベル)を目安にすることがあります。翻ってドラ
 えもんをみると、22世紀の最新機器が溢れまくっているわけでしてw
 タケコプターは使うわ、どこでもドアを使うわ、タイムマシーンも乗
 り回すし、もうなんど地球文明を滅ぼしかけたかわからないほどで(汗)、
 まるで殺虫剤を使う勢いで水爆とか取り出していたりするわけです
 (ドラえもんがネズミを怖がって何度かやっている)。

  のび太、ジャイアン、スネ夫、静香ちゃん、出来杉くんあたりにも、
 この22世紀の技術レベルというのは「一般常識」になっていて、ま
 るで電動アシスト自転車を使うように22世紀の技術を使い、それが
 空気になっているのです。

  このドラえもんというマンガは、
  1.読者とのコミュニケーションの手段としての世界観 → 現在
  2.物語の中で起こっている現実としての世界観    → 22世紀の日用品
  という、2本建ての世界観構造になっているのです。

  これが「基本ルールセットのドラえもん」ということができます。
 (この言い回しは、ガイダンスで物語の世界観をTRPGの世界観でとら
 えようとしたのに準じている)
  そして、「拡張ルール編」となる大長編ドラえもんとなると、さら
 にお話しが込み入ってくるのです(^_^;

  そこへ、なんの下準備もなしに突入すると、あまりも複雑で高度過
 ぎて(藤子F不二雄先生が)わたし以外はみな血塗れ死なんてことにさ
 えなりそうなので、ここは少しクールダウンしてもいい地点のはずで
 す。
  もう少し周辺の土台を固めて、細かくて気づかないけど重要な話*
 をぼちぼち拾いながら、大長編ドラえもん銀河というか宇宙並の深さ
 だなぁというところの入り口まで、なんとか匍匐前進していきましょ
 う。
  とんでもない作品が日本には、子供のおもちゃのように転がってい
 るものですねえ(^_^;
  たぶんスタート地点に立ったときに、ああ、ここって血塗れの戦場
 だったんだ、これって最新型の激戦地帯だったんだと、気づくはずで
 す。

  *一般人と専門家では、美術館での密室美術品強盗事件が起こった
 際に、みている世界がまったく違う、という話とか。


 ○ 04 ○ 「では実際に現状の物語はどうなんだろう」 ○ 01 ○   :[ 04-01]

  さて、ここまではドラえもん大長編を書いたのですが、これは80年
 代、90年代の話なるでしょうか。
  現在は2018年。
  この時間軸を自由にしてみて、過去、現在、未来を見てみることに
 しましょう。実のところ、この世界観の話はすればするほど細かい隘
 路が大量にあるのですが、これをぜんぶ網羅するとまったくキリがな
 いので、この物語解析の導入部分としては、「時制」だけに焦点を当
 てて、その性質を見ていくことにしましょう。
  これは単純に、細かいところをやり始めるとキリがないからです。

 ○ 04 ○ 「君の名は。の世界観」          ○ 02 ○   :[ 04-02]

  新海誠監督の「君の名は。」は大ヒットを飛ばした上に新たな時間
 軸を日本映画史に刻んでいます。といいますのは、この映画があらゆ
 る情報を総合すると、3.11の東日本大震災を前提とした映画であるか
 らなのです。
  ニュースZEROだったかの報道を信じれば、新海監督は震災後に被害
 を受けた名取市を訪れ、その光景を見て、もし自分がここにいたらど
 うなっていたのだろうと想像を巡らせて、入れ替わりのストーリーを
 思いついたと言います。
  その証拠として、君の名は。の登場人物には、被災地の地名が採ら
 れていたりします。当然に「名取さん」は物語上のヒロイン三葉の
 親友の女の子の名字になっています。これは、「君の名は。」が震災
 映画であるシグニチャーです。

  これは世界観なんでしょうか?
  じつのところ、ネーミングに関しては、それは世界観を構成しうる
 という発言を聞いたことがあります。これもわたしが好きな映画なの
 ですが「花とアリス殺人事件」の岩井監督が、このシリーズで、なに
 か神奈川の地名って漫画家っぽい地名が多いよね、という言葉遊びか
 らこれを始めて、気付いてみたら独特の世界観を生むことになってい
 た、という発言からもなんとなく伺えます。
  もちろんこれは単なる地名なので、おそらく映画を見た人はそれが
 名取市から採った名だとは、誰も知らないでしょうし、わたしもまっ
 たく知らないままその名前の音をなんの感情もなく受け取りました。
 受け取ったのは現地の人だけです。

  これははっきりというと、なんの意味もないんです。
  意味がない。
  これはとても重要です。
  意味が無いんです。
  これは、世界に発信するメッセージとしてナンセンスです。
  ただ、被災地がメッセージを受け取った可能性がある。
  そんな可能性まで、考慮しなければならないというのは、自己満足で
 す。たぶん新海監督は、それは自分のやり過ぎだと思うでしょう。こん
 なことは書きたくないですが、たぶん新海監督はこんな大袈裟な事態に
 なってしまったことに、こまっているはずです。

  話が無秩序に暴走するのでここでやめます。


 ○ 04 ○ 「宇宙より遠い場所の世界観」       ○ 02 ○   :[ 04-02]

  これ、誰書いたのと、五時間ぐらい問い詰めたいんですが(笑)、わ
 たしは全体の構成を考える企画部門と、実際の文章に落とす実務部隊を
 分けて作業をするので、こんな発言になっているのですが(^_^; この
 企画を考えた人は鬼畜ですね(笑)。ただ、この企画者の考えはわかり
 ます(まあ自分ですから・・・。そして走っているときの自分の発想に
 は全幅の信頼を置いています)。これは一番現実に近いところから話を
 はじめたかったんですね。

  「宇宙より遠い場所」は現実世界の女子高生たちが南極を目指す青春
 ドラマです。大変人気があり、2018年のアニメの中では(まだ2月です
 が)最高の作品になるのでは(覇権アニメと称呼されます)と目されて
 いる作品です。鬼畜だといっているのは、この作品が当然なんですが、
 まだ2月なので、終わってないんですね。つまりどういう結末になるか
 わからないのに取り上げるって何よ! というわけなのです(笑)。
  ただこの作品は、微妙にパラレルワールドなのです。
  たぶん、ファンのほとんどが気付いてもいないのではと思うぐらいに
 微差なんですが、南極観測隊が民間に払い下げられてる世界観なのです
(そして南極観測隊は、新基地を築いていてそっちに移転している)。
  作中では昭和基地と南極観測船しらせが民間に払い下げられていると
 いう表現しかされていません。なので、現在からしてみるとこれはもし
 かすると、数年後の世界なのかもしれないと、かなり苦しいですがいう
 ことも何とかできます(おそらく制作陣はそんなことも考えてないで
 しょうが)。それ以外の部分は地元(館林)民になんだこの再現度は!
 と驚かれるほど完全に館林です。わたしも現地民の撮影したモデルを見
 て、頭がくらくらしました。何十回も見直した光景が、現実の館林に存
 在している写真を見るだけで、くらくらします。現実と虚構の境がわか
 らなくなるのです。あの子達は(4人)実際に存在するんではないかと
 さえ思えてくるのは病気です。
  ちなみにシンガポールが扱われた回で、シンガポールの地元民に、な
 んだあのリアリティーは! とビビられていたことも、合わせてご報告
 しますw
  
  ただ、あれはパラレルワールドなんだよな。
  これはふしぎな感覚です。

  それはシナリオのよさも影響しています。わたしなどは最新話(これ
 を書いているときは6話。たぶんリリースするときは8話ぐらいまで進
 んでいそう)を見ながら、ちょっとこのパターンに頼りすぎだなぁ、な
 どと思ったりしましたが、それがわかるのはわたしが書く人だからです
 ね。同じことを書きながら思うのです。このパターンしかないのはわか
 るけど、これに頼りすぎだぞ、と。
  全13話なのは確定しているので、もう折り返し地点なのですが、い
 やー、これ期待にこたえるのきついぞ、とわたしまで胃が痛くなってし
 まいます(^_^;

  この辺にしましょう。


 ○ 04 ○ 「ユーリ!!! on ICEの世界観」       ○ 03 ○   :[ 04-03]

  まず当たり前なのですが、この作品に対しては絶賛しかありません。
  現在、ピョンチャンオリンピック中なので、フィギュアスケートの話
 題には事欠かないのですが、男子はともかく女子は、ロシア勢の圧勝が
 ほぼ予定されています。その中で、ロシアの女王(18歳だったか?)
 が親日的なパフォーマンスをしていて、当初はこれはいったい何なのだ
 ろうと思っていた(もっとひどいことを言うと、腐女子的に引っかかる
 ところがあったのかとか思ったり)のですが、「ユーリ!!! on ICE」を
 見た瞬間に全部が吹っ飛びました。
  「ユーリ!!! on ICE」は羽生結弦がロシアのプルシェンコに憧れを抱
 いていたのをそのプルシェンコが羽生を直接指導していたら、という妄
 想を基に書かれただいぶ腐女子受けをするように書かれたアニメです。
  2016年の覇権アニメとされています。

  このアニメで特徴的なのは、わたしがロシアの女王であるメドベージェフ
 さんが親日的な態度をとっても、何の違和感も感じなくなったことでしょ
 うか。だって、ビクトルは選手生命をなげうって(ネタばれに気をつけ
 ると、ラストは感動的です)ユーリのコーチとして時間を浪費するので
 す。プルシェンコは怪我で選手生命を絶たれているのですが、ビクトル
 は違う。ここがよく書けている部分です。
  羽生は全世界的なプリンセスですが、ユーリはぎりぎりでグランプリ
 ファイナルに残れれる、瑣末な選手です。プルシェンコが羽生を溺愛し
 たのとはまったく状況が違います。
  ちなみに、このアニメで創作された主人公ユーリのフリー曲の「ユーリ
 ・オン・アイス」が実際のグランプリ・ファイナルだったかで、実際に
 使われて話題になりました。ちなみに五輪では同じロシア出身のザキトワ
 選手に金は取られてしまった、女王メドベージェフ選手はツイッターで、
 「ユーリ!!! on ICE」の原作者のサインを貰って大はしゃぎしていたり
 しました(^_^; どんなアニメだよw

  話しすぎるとネタばれになるので、この辺にしましょう。
  ただ、羽生さんがいるおかげで、ぎりぎりリアリティーを保てている
 作品ではあります。

 ○ 04 ○ 「ガールズ&パンツゥアーの世界観」    ○ 04 ○   :[ 04-04]

  ここで、ガルパンかよ、なのですが(笑)、ガルパンは大洗女子学園の
 戦車道をたしなむ女子たちによる青春物語です。戦車による模擬戦が一種
 の武道になっている世界といえばいいでしょうか。大洗町では毎年のよう
 に関連行事が行われ、ファンが集まるイベントと化しています。アンコウ
 のつるし切りぐらいしか名物がないんですが、このアンコウに目をつけた
 人は切れ者ですね。

  この作品のすごいのは、艦コレという類似するコンセプトのゲームの大
 ヒット以前なんですね。
  これがヒットするとなぜわかったのか。
  ミリタリーと美少女を組み合わせる前例は、それなりにあるのですが、
 80年代とか、90年代とかの、しかもヒットしなかった企画だぞ、と
 思ってしまうのです。
  戦車道という、よくわからない部活にしてしまったのが素晴らしいとい
 うか、意味不明なのですが、たぶん熱狂的なファンでさえも、これのどこ
 がいいのかわからないのです。
  ガルパンの熱狂的なファンは「ガルパンおじさん」と呼ばれるのですが、
 彼らの布教活動は、なにか事があるごとに、「ガルパンはいいぞ」とつぶ
 やくことなのです。彼らはなぜいいのかを説明できないのです。

  わたしはいちおうガルパンは履修しましたので、ガルパンの何がいいの
 かは説明できます。
  それは端的に言って、戦車マニアを納得させるだけのディテールを、部
 活少女モノという、なんともライトな枠内で描いたことですね。
  また指折り数えるほどに個性的なキャラクターに満ち溢れていて、対戦
 相手となる各女子校が、イギリス、アメリカ、イタリア、ロシア、ドイツ
 と各国の戦車とお国柄を反映しているところも面白いところです。そうな
 るとロシアのコスプレイヤーが、ロシアをモデルとした学校のキャラクター
 である、カチューシャという、チビなんだけどひたすらに気だけは強い
 キャラのコスプレをしてファンを騒がせたりと、そういうことが起こりま
 す。
  ドイツがモデルとなっている決勝戦の相手である黒森峰が、実はこの学
 校は主人公の出身校で、最大のライバルとして主人公の姉が立ちはだかる
 という設定のため、ドイツ色があんまりないのが、ちょっと弱いところと
 言いたくなるぐらい。あとは極彩色というか、よくぞこんなに絵の具ぶち
 まけたなと言いたくなるような、色彩の豊かさがあるんですね。

 これ以上話すと、「ガルパンおじさん」になってしまうので、この辺で。


 ○ 04 ○ 「天空のエスカフローネの世界観」    ○ 05 ○     :[ 04-05]

  くそ、死ねw
  これ考えたの誰だw (わたしですw)

  天空のエスカフローネは、瞳という陸上部の女子高生が異世界に転移し
 てしまう物語です。瞳が憧れていた天野先輩に似ている(容姿だけなんだ
 が)アレンに、主人公であるバーンを放置して惚れてしまうという、なん
 だこの三角関係は、という物語構成なのですが、このお話は精査していな
 いんですね。
  たぶん、異世界移転ものとして、取り上げているのだと思われます。
 (無責任)

  全部見てないんだから、これで書けとか無理言うなよ。
  あー、うーん、もしこのエントリーが異様に遅れたら、たぶんそれは
 エスカフローネを観直しているせいです。2クールあるんだぞ、おまえ
 殺すぞ(企画担当の自分に言ってますw)、と殺意を覚えますw

  この作品の世界観はほぼガイアと呼ばれる異世界が舞台なのですが、
 幻の月と地球は呼ばれ、地球とガイアは瞳がしたように神隠しのような
 形で行き来があります。いちおう設定的には滅亡に瀕したアトランティス人
 が住み着いたのがガイアとされています。また、主人公が占いが得意な
 霊感のある少女に設定されているため、作中では超自然学的な方法で占
 いが絶大な力を持ちます。なんというか、瞳がレーダー役をするのです
 ね。
  また、これが面白いところなんですが、幻の月から干渉があるのです。
  たとえば序盤のシーンで、瞳のポケベルに幻の月(地球)から天野先
 輩からの通信が入るのです。地球から月への通信が、携帯の基地局レベ
 ルで届くはずがないのですが、まあなんというか少女マンガ的に届いて
 しまいます。
  ちなみにこの作品が描かれた1996年はポケベルの最盛期だとかのこと
 で、わたしは大学生でしたが、パソコン通信で小説フォーラムにはまって
 富士通謹製のOASYS POCKET3(ハンドヘルド・キーボード付き・PDAの
 走り)で、がんがん文章書いていましたね(^_^; 始めて導入した無線
 通信機器がピーイン・コンパクトというPHSのデータ通信用の端末でした。
  なので、明らかにポケベル文化圏の枠外にいたのですねw
  ぜんぶインターネット経由だったのです。
 (これは主な連絡手段がメールだったという意味です)

  ほかにも面白いのは、ガイアでは過酷な現実が見えてしまうために、
 致命的な状況で頼られるのが、嫌になるところなのです。
  また、アトランティスの設定が強力すぎて、これはほんとに2クール
 の作品かと驚くほど、密度が濃すぎて、エヴァンゲリオンが2クール
 だったというのも驚きなんですが、匹敵するぐらいには濃い。
  なんでこんなに濃くできるんだろう。

  また、非常に強力な設定として、運命改変装置、というギミックがあ
 ります。これは敵国であるザイバッハがアトランティスの技術を実現し
 たものとして登場するのですが、主人公&ヒロインである、バーンと瞳
 の仲を裂くために使われるのです。
  個別具体的にいえば、瞳が容姿だけで似ているとしているアレンと、
 結びつけることで運命を改変しようとするのです。アレンは紳士的で、
 非の打ち所はないんですが、瞳にたいして、それは違うだろ!!! と
 思わせる手腕はさすがです。
  しかし、これまで、色恋沙汰に装置的に干渉することで、物語を変え
 ようとした例があったでしょうか。これが衝撃でした。

  なんだか、何の話をしているのかわからなくなってきましたw
  実際には、これよりも進んだんですが、書いていてこれは終わらない
 なと思いましたので、ここで切ります。500行というと、だいたい原
 稿用紙50枚なんですが、100枚ぐらいは書けるなとかそういうレベ
 ルで、それは迷惑だろうという印象なんです。
  これは絶対ダメなので、やめます。

 ○ 04 ○ 「初代ガンダムの世界観」        ○ 06 ○     :[ 04-06]

  いきなりすごいところにきたなという、印象なんですが、たぶん多くの
 人が誤解していることは、初代ガンダムの世界観は、放映当時言われてい
 た未来予測を絵にしただけなんです。スペースコロニーもオリジナルでは
 ないし、小惑星帯から資源衛星を運んでくることもオリジナルではない。
  1970年代というのはそういう時代だったんです。
  ガンダム世界と言うのは、予定されていた、未来を描いた、近未来架空
 戦記なのです。
  そんな情熱を描いちゃった人って、かっこよくないですか?

  ガンダムはSFなのかといわれると、まあ、ハードSFですねと書く人は
 大体格好いいです。この人たちはたぶん、ガンダム・センチュリー派と呼
 ばれます。これは、ガンダム・センチュリーと呼ばれる、伝説的なムック
 で、ガンダムのハードSF考証した冊子が発行されて、プレミアがつきす
 ぎて再刊されたからです。
  これが基本的に、ガンダム世界観の基準点になっています。

  宇宙世紀は、あり得べき未来だった。
  それがわからないと、ガンダムはわからない。
  未来だと思っていた人はだれもない。
  それは来ると思っていた。

  ガンダムというか、ガンダム・センチュリーはそういう世界観だった。

 ○ 04 ○ 「逆襲のシャアの世界観」        ○ 07 ○     :[ 04-07]

  これまた、死ねと言っている。
  宇宙世紀のガンダム世界は恐ろしく話が複雑です。アムロがなんでシャア
 というか、 クワトロ・バジーナとの関係を何故か整理つけているのかとか。
 それは一切書いてない。
  Zガンダムにおいて、アムロとシャアは同僚なんです。
  でも、その間に何があったかは、一切の示唆がない。
  その両雄が、戦うにあたって、一切の情報がない。
  たぶん、続編に当たる、ZZに冨野がかかわっていないのが問題なんで
 すが、アムロもシャアもいなかった。そこから、アムロとシャアの最終決
 戦というのは結構無理がある。それでも、最高傑作とされます。それは、
 この最終決戦を見たい人が多かったからです。これを最終決着と思う人は
 一人もいません。

  これが面白いところです。
  誰も満足していないのです。
  それで、ガンダム世界は際限なく広がり続けている。
  これは面白い現象です。


 ● 05 ● おわりに                      :[ 05 ]
  ̄ ̄ ̄ ̄

  えーと、強引にエンディングですが、たぶんここまでちゃんと読んです
 べてを理解すべく挙げられた作品を見ている人はいないと思うのです。な
 ので、もしここまでとどいた人がいれば、おめでとうと祝福を送ります。
 そんなことは意味のないことですし、これを書いたのはそういう目的でも
 ありません。
  ただ単に、自分の中にあるものを限界まで絞り出そうとすると、こう
 なったと言うだけで、これに達していない人を軽蔑するとか意味は、一切
 ありません。でもさ、「電脳コイル」はどうなのとか、「SHIROBAKO」は
 どう思っているの? とか、「メイド・イン・アビス」に触れてなくて失
 望したわ、と言われる方がワクワクします。
 (当たり前ですが、見ている前提です)
  世界観の話題は深すぎて、こんなざっと洗ったぐらいでは語れるはずが
 ないのです。
  わたし個人が5時間は話せるとかそういうレベルではなく、月一で集
 まって合宿して、数千年語り合っても、常に新しい世界が生まれてくる世
 界です。これは恐ろしく楽しい話題なのだとわたしは思っていますし、だ
 れが決定版を出せるものでもないのです。

  いやあ、世界観楽しいわ。

  あ、次回以降はというか、次回は「のび太の魔界大冒険」の物語解析な
 ので、この圧倒的な名著がどう世界観を操作しているのかを、勉強しま
 しょう。テキストの用意はいいですか? 中古で買うと安いです。あらす
 じは一応書きますが、個人的な見解を押し付けるのは苦痛ですし、よんで
 るよね? という楽観的な観測のもとで書きますので、ご理解ください。


| 物語解析 | 23:53 | comments(0) | trackbacks(0) |
物語解析 鋼の錬金術師 〜情報分断戦術の傑作〜 迄17巻 (後編)

 みなさま、おはようございます! hikaliです。

 ・・・って、なぜ、この挨拶わざわざしてるんだろうと、書きながら思うのですが、メールマガジン時代からの癖でしょうか・・・。

 土曜、日曜と、なぜかがしがし書いていたにも関わらず、約束の土曜日に間に合わず・・・、それでも、こんな朝日を浴びながらの、なんとか、土曜のうちじゃない? 日曜日が始まる前に出しちゃえば、それは土曜日って事だよね、という、いかにもweb屋さん的な発想でお届けしている物語解析です(^_^;

 前編では、「動の物語解析」の基礎的な部分をお伝えしましたが、後編では実際の物語のシーンについて踏み入っていきます。
 しかし、その前に、原則を確認しておきましょう。


 ■原則の確認  情報 + 人物 = 行動

 さて、ここから詳細解説と相成るわけですが、確認しておきたいことがあります。それは、人物の行動とは、なんらかの情報がきっかけになるということです。
 例えば、主人公に、「あいつがお前の母親を殺したんだ」ということが伝われば、さすがに主人公はそれを無視することができないでしょう。
 それと反対に、主人公に、「あいつがお前の母親を救ったんだ」ということが伝われば、戦いをすることをやめるかもしれません。

 この際、重要なのは、
 「どの情報が」「だれに伝わり」「どんな行動を起こしえるか」
 なのです。

 つまり、誰かを選んで、その人物にある情報をぶつければ、期待する行動を起こさせることができます。もしくは激しい感情を呼び起こすことができます。
 わたしが、情報で物語をコントロールできると言っているのはこのことです。
 情報のコントロールが、物語のコントロールになるのです。
 情報のリークするタイミングに気をつけていれば、案外物語は素直に動いてくれるのです。
 さらに重要なのは、この情報は真実である必要はないことです。
 誤報で十分だし、意図的なデマでも構いません。
 これを使えば、主人公同士をいがみ合わせることもできます。
 こういうのは三国志で散々やっていますね(笑)。

 なので、そういう展開を作りたいときは(あまりにも、あくどいので以下略)、
 ・・・ということになります。
 これを一般に情報操作と言います。
 実際に物語を作る場合は、もっともドラマチックになるように、そう物語が動くように、情報をリークする(開示する)相手とタイミングを図ります。どのタイミングでばらすかみたいな話です。
 ぶつけるべき情報を手配しておき、適せん絨毯爆撃のようにピンポイント爆撃をしていく行くわけです。
 そのために、作者は謎という防壁を作って、情報格差を作ります。
 この情報格差がなければ、情報の開示という物語を大きく動かす爆撃を行うことができないからです。

 とてつもない蛇足ですが、これは愛の告白に似ています。
 告白は情報の開示です。
 もちろん、それがデマでも、誤報でもいいのですが(笑)。

 そして、鋼の錬金術師という作品は、あまりにも凄まじい精密爆撃の連続で、物語が動いていくのです。

 その話をしましょう。



 ■情報分断戦術 初級編    ムスタング←→エルリック兄弟


 さて、テクストの準備はよいでしょうか。
 まずは、3巻を見てみましょう。

 この巻で、エルリック兄弟は第一レイヤーにたどり着きます。
「1.賢者の石は人の生命で作られること」
 これですね。

 これを知ったのは、まず、エルリック兄弟。
 そして、ロス少尉たち護衛。
 その直後アームストロングに知られます。

 ここで、エルリック兄弟は研究所を調べに行こうとし、アームストロングに止められますが、そのまま二人で単独で調べに行ってしまいます。ここで賢者の石の精錬場だった場所を見て、戦闘がありますが、特に重要なことはなく、ラストたちにやっつけられて(つまりラストたちにばれて)、ロス少尉たちに助けられます。

 この辺、ヒューズ中佐も含めての近親感の作り方は非常に巧みです。
 秘密を共有している人々のグループになっています。ムスタングチームと完全にこっちが違う世界に見えるのは不思議です。
 ウィンリィをここに絡めるのもうまい。
●そして、ヒューズがムスタングに、エルリック兄弟が入院していることを伝え忘れます。
 もし伝えたら、賢者の石のことはムスタングにすぐに伝わったでしょう。

 エルリック兄弟は、その情報をヒューズに伝えてしまいます。
 いやー、よりよって、情報局(おっと、軍法会議所勤務らしい)の人間に(笑)。
●そして、ここで強引にブラッドレイが登場。
 どこまで知っているかが、ここでばれてしまいます。
●この後、エルリック兄弟はこれまた強引に他所に移動し始めます。
 その後、ヒューズが殺されます。


 ●の部分に注目してください。
 わたしも書いていてかなりぞっとする部分です。
 こう思いませんか?
 なぜ、エルリック兄弟は移動する必要があったんだろうか?

 これは情報分断戦術なのです。
 ムスタングとエルリック兄弟の情報を分断したかったのです。

 その後、ムスタングとアームストロングが接触しますが、アームストロングは語らず、しかし、その言葉尻から、ムスタングに、賢者の石がどうも中心にあったと悟られます。
 ムスタングは動き出そうとします。
(これはどうも、中央へ異動するということだったらしい)


 さて、この辺で、俯瞰をしておきましょう。
 なぜかというと、この後8巻に至るまで、謎がまったく動かないからです(笑)。
 ちなみに鋼の錬金術師は、4巻から8巻まで、エルリック兄弟の過去編、グリード戦と何か消化試合を見ているように、この辺で片付けておかないといけないことを片していきます。特に、グリード戦はあまり意味があるようには見えないのですが・・・。
 まあ、ここは、即座にリン・ヤオを登場させて、予防線を張り始めます。

 ここで重要なのは、この流れが非常に精密に作りこまれている点です。
 特に最後の五行は、かなり強引だと思いませんか?
 なぜこのような構成にしたのでしょうか。

 これは実は、物語の展開を遅くするためです。
 その後、8巻まで物語を進めないことによってもそれが証明されます。
 もし、ここでムスタングがこの情報に気づいていたら、どうしたでしょうか。
 つまり、
「1.賢者の石は人の生命で作られること」
 をヒューズが知り、何か調べているうちに、別の謎に気づいてしまった。
 これがなんともまずいことに、
「3.国土全部を使っての賢者の石の練成」
 なのですね。
 レイヤーを一つすっ飛ばしてます。
 これは、謎の構成が、


 1. →
    ←  2.
 3. →
    ←  4.(?)
   (?)

 という構造になっているため、1.から3.にワープしてしまったのですね。


     1. →
ヒューズ ↓  ←  2.
     3. →
        ←  4.(?)
       (?)

 これは、実は、たまねぎの皮型の謎を組むときのセオリーだったりします。
 つまり、第一層と第二層、第二層と第三層、第三層と第四層・・・という層間の距離を大きくすることにより、謎を解くのに掛かる距離を長くするという戦術なのです。そのために構成が、二次元で見ればジグザグな構造になることが多い。

 イキナリ3.がばれてしまうと、もう、一気に2.ばれてしまいます。
 そこで、ここでは断固として、ムスタングとエルリック兄弟を情報分断する必要があったのです。

 そして、8巻から、第2レイヤーのネタばらしが始まるのです。
 また、リン・ヤオの登場で、実は、アメストリス以外にも国があることが明示され、これは、第3レイヤー、そして、たぶん第4レイヤーの伏線が張られ始めます。

 なるほど、なかなか巧みです。
 初級編はこの辺でいいでしょう。

(しかし、イキナリ、8巻でロス少尉がヒューズ殺しの疑いが提起されるところは苦笑してしまいます。おいおい、今までなにやってたんだよ、という感じ。この辺の流れが理解できると、なぜロス少尉かは分かるかと思います。あー、そうか、関わってたんだね、忘れてたよと)




 ■情報分断戦略 中級編   エドワード←→アルフォンス


 テクストの準備はよいでしょうか。9巻です。
 アームストロングにより、エドワードとアルフォンスが分離されてしまうということが起こります。しかも、バリー・ザ・チョッパーが襲ってくることがもう分かりきっている時点でです。
 これはなぜでしょうか。

 詳細を追ってみることにしましょう。

 まず、ムスタングがロス少尉を焼き殺すシーン(これは後に偽装と発覚)。
 ここはアームストロング、エルリック兄弟に誤解させて、仲を不仲にする超絶好な(というかこの作品唯一の絶好のチャンスなのですが・・・)機会なのですが、なぜかアームストロングとエドワードを隔離してしまいます。
 これはおそらく、ムスタングチームの活躍を描きたかったからだと思うのですが、この辺は強引さを感じます。
 ここはもっとうまく書けるところです。
 絶望的な不信感の中での、ラスト戦は見てみたかったのですが、力量が足りないか。
 もうちっとムスタングチームに余裕を与えない方法で、追い詰めればよかったのですが・・・。
 まあ、よい。
 鋼の錬金術師は平行進行がウリの作品です!
 (ちょういい加減・・・)
 まあ、この時点での動機は不明なのですが、この後、この分断戦略が効いてくるのです。

 その後、意味不明な「お父様」の間で会話があり、ムスタングチームが第2レイヤーに近づき始めます。
 (ちなみに、お父様の間での会話は何も考えてないと思う(笑))
 そして、エドワードがクセルクセスへ行き、たぶん第4レイヤーである、東の賢者と西の賢者の話になり、ホーエンハイムが出てきます。この辺は短絡的です(^_^;
 お帰り、賢者さんと声をかけたくなりますが、これは大丈夫なのかな・・・。
 結構強力な縛りだと思うのですが・・・。
 まあ、北の賢者も、南の賢者も、東南の賢者も、北西の賢者もいることにしてしまえばいいのですが・・・。
 わたしが心配しているのは、第四レイヤーが細すぎるということなのですが・・・。

 さて、このクセルクセスで、ようやくムスタングチームと、エドワードチームの情報が合流します(というか、アルフォンスに聞けよ、という突っ込みはなしで・・・)。
 ここで、ロス少尉が被害妄想な発言をしますが・・・、まあ、放置しておきましょう。
(というか、気付けよ、エドワード(笑)。まあいいか・・・)
 結構こうやってみると、粗が出てくるものです(^_^;
 ちなみに、この辺は、この作品でも屈指の絶不調な展開が続きます。
 切れ味が空回りしており、後につながる展開がまったくなく、混乱しています。

 その後11巻に入って(早!)、メイ・チャンが出てきて、だいぶ新展開が期待できるようになります。
 もう、困ったときの新キャラ。
 しがらみがなくまっさらなキャラクターは、いくらでも設定を詰め込める、だれとでも組ませられるので、非常に便利です。
 その後、傷の男が出てきて、今後の新展開を期待させます。

 そして、ようやっと、エルリック兄弟が合流するのですが、どうだったでしょうか。
 どうだったって、なにが? とすっとぼかされそうですが(^_^; わたしがあえて語らなかった部分が印象に残っているのではないでしょうか。
 たぶん、それはエルリック兄弟の縦串の部分ですよね。
 なぜ、この展開の中で、この兄弟を分けたのでしょうか、と聞けば、気づくでしょうか。

 強い情報というのは、人物に与えた瞬間に、その人物の生を発生させるものです。
 しかし、その生の発し方は、周りにいる人物たちに影響されます。
 情報と言うのは、いちどズキューンとぶち込んでしまうと、その人物はしばらくその痛みに苦しむものなのです。
 たぶん、ここは、一番強い情報を与えたかったのでしょう。
 なんといっても父親と会うので。
 しかし、兄弟でいると、あっという間に立ち直ってしまいます。
 これではまったくもって面白くない。
 せめて10ページぐらいは悩んでもらいたいところです。
 そこで、この分断戦術が出てくるのです。

 この流れを、情報系で分析すれば、
 「ムスタングチーム」 → 第2レイヤー
 「エドワード」    → 第3、第4レイヤー
 (おっと、エドワードは第4レイヤーにいるんですね・・・気付かなかった・・・)

 「エルリック兄弟」  → 個別にエルリック兄弟情報系を掘削

 という感じでしょうか。開示されている情報系が、見事にばらばらです。しかも人造人間組が何をやっているのか不明という部分が、さらに流れを散漫にしています。
 ちょっと苦しい流れですね。
 ただ、その中で書きたいシーンを何とか書きつないでおり、それに救われている感があります。
 情報系の中で見ると、結構混乱気味なのですが、局地戦で勝っているという感じでしょうか。情報系でうまくいかなかったときの局地戦頼み、と言うのは、しばしばよく使われる手ですが(^_^; 作者さんは局地戦も強いことが、よかったのかわるかったのか、結果的には情報系はずたずたに混乱しています。

 ストーリーラインが、ずいぶん遠いところから始まっているのが分かるでしょうか。
 それを流しながら、その中ほどで、次の展開を仕込んでおく。
 もう、連載漫画はこの繰り返しです。
 しかし、この鋼の錬金術師のストーリー展開は、長く続く情報の連鎖を、平行させてどこが切れ目か分からないように、ロープのようによっていくという構成をしています。
 エドワードラインはかなり長い。

 この辺りは流れが複雑な上に、たぶん作者が混乱気味だったため、意味不明な展開が多くなっています。まあ、こういうこともあるさと、とつぶやきながら、11巻の作者の言葉が気になります。
 〆切明けに指圧に行った時の事。
 眠気でうとうとしながら
「次回の話どーしよーかなー」などと
 考えていたため、先生に
「右肩こってますね」と言われて
 思わず「機械鎧ですから」と
 答えてしまうところでした。
 マンガと現実がごっちゃに・・・・・・!!


 センセ、お疲れ様です(笑)。
 こうやってマンガって描かれているんですよぉ。



 ■情報分断戦術 上級編   ムスタング・エドワード・アルフォンス・傷の男

 さて、テクストの準備はよいでしょうか。11巻です。
 後半のほうを見てみましょう。
 傷の男に対して共同戦線が開かれる辺りです。

 この辺りでなぜか作者は、傷の男をめぐってエルリック兄弟とブラッドレイが対立するように仕向けます。
 ここでなぜブラッドレイを動かす必要があったのか、まったく不明です。
 中級編で書いたとおり、この辺はかなり混乱気味だった模様なので、その名残なのかもしれません。もしくは、ブラッドレイとエルリック兄弟を衝突させるには、傷の男を出す以外にないと思ったのかも知れません。この辺の思考には、あまり高度な判断があった様子は欠片も感じることができません。
 しかし、これがよい方向に動きます。
 ここから始まる14巻までのノンストップのストーリーは、かなり偶然に作られたといっても過言ではないでしょう。

 さて話を追いましょう。
 まず12巻(早!)。中級編の時点で指摘がありますが、メイ・チャンは傷の男と組ませることがあらかじめ決まっていたキャラ。というわけで既定どおり、そのまま傷の男と組む路線で進んでいきます。これはたぶん、錬丹術コンビということなのでしょう。
 大男に小女は絵的にメリハリを手段。特に難しい事はありません。
 あと、パンダがアルフォンスに拾われるのも、よく使う手。
 なんか意味があるのかと言われれば、そんなに高度な意味はないと思うのですが、まあ保険みたいなものです。この辺は、なんかあとで使えそうな手をばら撒いておくみたいな感覚です。
 撒けそうなものは撒けるだけ撒いておく。
 どう転ぶか分からない動的な物語を扱っている場合には、これは鉄則になります。
 大体そのうち半分ぐらいは意味がないか、結局生かされない展開になったりするのですが、残りの半分が、展開の重要な要素になったりします。撒いている最中は、撒いている側もそれが役に立つか立たないのかわからない状態で撒いているのです。

 さて、ムスタングチームと、エルリックチームと、リン・ヤオチームが合流します。
 この時点で、グラトニーが捕まっているのですが、ここで、分断されていた情報が統合され、ついに第2レイヤーの全開示に向かって全速力で走り始めます。

 いや、ブラッドレイの正体がばれれば、そのまま第2レイヤー全開に向かって突っ走る以外に手がないわけですから、なぜこのタイミングと言えば、首を傾げざる終えません。ちょっとこの辺の情報の管理はルーズすぎるような。
 と言うかかなり危ないシーンありましたよね・・・。
 PBMであったら絶対できないリスクテイクです。
 マンガという、物語を作者が完全に自由に作ることができる世界だから、許されるゆるさなのかも知れません。もっと早く開示されちゃってたら、そこから突っ走るつもりだったのでしょうか?

 しかしグラトニーに擬似真理の扉を開かせる決断をした時点で、第2レイヤーは全開にする決意ができたようです。そこから第3レイヤーをばらしつつ、全開モードに移行し始めます。
 リン・ヤオとエドワードを呑んでしまいます。
 これまでも何度もみてきた分断戦術です。
 ここで、主人公チームが分断された状況で、それぞれが、全開モードで突き進み始めます。
 ムスタングライン。
 エドワード・リンライン。
 アルフォンスライン。
 傷の男ライン。
 この4つのラインで、全開示モードで、それぞれに衝撃的であると思われる情報をぶつけていくのです。
 ここでたぶん、傷の男ラインは主人公ラインなのか、という疑問が浮かぶかも知れません。
 しかし構図は鮮明です。
 第2レイヤーに対峙するという意味では、傷の男も開示される側に立つ以外ないのです。

 ここから、各ラインごとにそのストーリーを追ってみましょう。

 いち早く動くのはムスタングライン。
 軍部が人造人間に牛耳られていることが、あっさりばらされます。そこから、ムスタングチームの解体が始まり、ブラッドレイの過去が明かされます。
 いやー、全開モードです(笑)。

 続いて、先にアルフォンスライン。
 チーム構成はアルフォンスとグラトニー。
 あー、うーん、そういう構成ですか・・・。
 なんだかよく分からない会話で、お父様のところへ(つまり東の賢者なのですが)行くことになります。この辺はおそらく全開モードだから。
 ここで、傷の男ラインに捕捉されます。
 この時点で捕捉されないと、傷の男ラインを全開モードへ持っていけないので、ちょっと早いかなと思いつつも、まあよいでしょう。
 そのまますんなり、お父様のもとへ。
 ここから、エドワードラインとの合流があるので、中断しますが、どうも、このアルフォンスラインは、キャリア(運び人)だったようですね。

 こうやって結構ラインに分解して話を見ていくと、どう動いているのかが分かりやすいのではないでしょうか。

 次にエドワードライン。
 擬似真理の扉の中でエンヴィーに出会い、こちらでもばらしが始まります。
 えーと、イシュヴァール戦のきっかけをばらしはじめますねぇ・・・。
 そこはあんまり重要じゃないのだよ、エドワード君(笑)。
 ここで冷静に第3レイヤーを探りに行くのがクールガイなのだが・・・、あーだめだ、戦いが始まってしまった(笑)。思いの外ガードは固いですね。
 と言いつつ、第3レイヤー、及び第4レイヤーである、クセルクセスの惨劇の話をし始めます。
 そしていろいろあって、真理の扉を開き、アルフォンスラインと合流します。
 この辺は後ほど。

 さて、最後に傷の男ライン。
 まず、アルフォンスをつけて行き、そのまま、エルリック兄弟ラインに合流ですか・・・。
 まあ、時間稼ぎをして、いくつかエルリック兄弟及びリン・ヤオ周りの事件を処理してから合流と言う、なんともご都合主義な展開ですが、よいでしょう。

 さて、合流後ですが。
 リン・ヤオがグリードになるのは既定路線、というか、そのためのキャラだし・・・。
 グリードが死んだ直後に出てきましたよね?
 結構、鋼の錬金術師は、何かが起こった後に、そのフォローが早速登場して予防線を張るという展開なので、細かく読んでいくと、そういう部分が分かりますよ。
 また、第4レイヤーの伏線が張られます。
 錬金術が使えなくなるという部分ですね。
 その補強として、錬丹術チームが登場し、イシュヴァールの惨劇のきっかけを教えられ、激高します。んー、この人々は、アメストリスがブラッドレイによって牛耳られており、そこからイシュヴァールが始まるので、かなり飛躍して激高しているのですが、まあ結果的にそこで怒るの正しいみたいな、展開。
 実はここで重要なのは、錬丹術チームが第4レイヤーの伏線だということ。
 それ以外はあんまり重要じゃないのだが、まあ、傷の男も、ようやっと真の敵を見つけたという感じか。(長い旅でした・・・。お疲れ様)

 その後、傷の男はマウロと合流しますが、これは、第4レイヤーの謎を解くために、錬金術師が必要だったから。特に理由はありません。

 それ以後は、次の展開へのための、整理整頓となります。
 特に難しいことはないので、流しましょう。



 ■おわりに

 さて、長々とお届けした鋼の錬金術師の解析はいかがだったでしょうか。
 こうやって情報系の視点から物語を見つめると、読む側とは逆側、つまり作る側の視点が見えてきます。物語と言うのは、作る側の思考を超えて固定されていくものなので、その時々の小さな判断が、大きなうねりになったりすることが多々あります。
 全体としてみると、一見どのような意図に基づいて書かれたのかは見えてこないのですが、実際には小さな決断の積み重ねが、偶然の力を伴って、大きなストーリーになるのです。その辺は現実の世界と同じかも。なにも、魔法も、錬金術(笑)も使っているわけではないのです。とても単純なことの積み上げなのです。
 もし、それがこの解析を通じて分かっていただけたのであれば、わたしは嬉しいです。

 あー、長かった(笑)。
| 物語解析 | 07:23 | comments(3) | trackbacks(1) |
物語解析 鋼の錬金術師 〜情報分断戦術の傑作〜 迄17巻 (前編)

 こんばんわ! hikaliです!
 だったのか、
 こんにちは! hikaliです。
 だったのか、もうすでに忘れるほど、物語解析を書くのは久しぶり。
 なぜか、ゲームブックを解析していたり、開発していたりする管理人ですが、もちろん物語解析を忘れ去っていたわけではありません(ほんとうか・・・)。

 あまりにも久しぶりなので、調子も、テンポもまったく掴めない、おぼろげな状況ですが、うれしいことに、解析の対象として、ひとつの作品をいただくことができました! 升斗さん、ありがとう!
 さて、いただいた作品を、精査してみたところ、でるわでるわ、高度なテクニック。
 これは、物語解析一本分ぐらいの分量にはなるなあ、と思ったしだいで、タイトルに物語解析の名を冠させていただいたしだいです。


 ■鋼の錬金術師の概要

 みなさんは、この漫画をご存知ですか?
 わたしは、アニメ系の仕事(Web系)にいたにもかかわらず、この作品は無残にもノーチェック(笑)。スクウェア・エニックス系は、まったく権利系列が違う仕事だったのですねー(なんか、ここだけ独立王国ですよね・・・。サンライズとかは平気で回ってきてたのに・・・)。
 そういえば映画の部署にいたときも引っかからなかったなあ・・・。
 (大作なのに・・・。不思議だ・・・)

 詳しくはwikipediaの記事を読むでもしてほしいのですが、本作は、現在コミック第17巻が最新刊で、現在連載中の作品であります。わたしの読みが正しければおそらく30巻ぐらいまでは伸ばせる話ですので、どこまで続巻が伸びるかは、正直不明です。
 この点だけ、注意してお読みいただければ幸いです。
 また、のちほど警告を発しますが、本解析は、ネタバレどころか、物語の核心やそこで繰り広げられているテクニックなど、少なくとも物語を楽しむには、必要がないというか、かなり害がある部分にがしがしと触れていきます。
 なので、この物語を楽しみたいと思われる方は、これ以上を読むことをお勧めしません。
 例えていうなら、ミス・アメストリスを人体解剖し、なぜこの骨格の物語がミスを取れたのかを血まみれになりながら、解説するみたいな内容になります。
 もちろん、タイトルの通り、その高い技術を褒め称える内容となるかと思いますが、それは、この目玉の色はすばらしい、血管見てください、この弾力! とやるような内容です。
 物語に敬意を払って言えば、真理の扉の向こうの世界です。
 今後数年はわくわくできるであろう作品を失いたくなければ、帰るべきです。
 警告は以上。


 ■動の物語解析 〜情報系の物語構造

 さて、これから先は、物語解析という物語の解析技法を使って解説されます。
 物語解析は、すでに膨大な量のドキュメントが書かれ、これは読むことができます。
                        >物語解析はこちら。

 しかし、本作、鋼の錬金術師は、この膨大なドキュメントの中では触れていない技術を使用しないと分析をすることはきわめて困難です。
 現在、ドキュメントの中で触れているのは、かなり一般的に認知されている「起承転結法による解析」、そしてこちらがメインになるのですが「要素による解析」という、物語を要素に分解し、その構造を調べるという手法について記載しているからです。

 これはわかりやすくいえば、人物関係図などをつくり、その構造について分析するようなことです。
 複雑な物語がなぜそのような構造になっているかを分析するのに適しています。
 例えていえばCTスキャンのようなものでしょう。
 内臓の断面図を何枚もとって、その静止画を見て物語を診断するような方法です。
 この分析方法は、
 1.完全に0から物語を考え出すとき
 2.何か問題がある物語を見たとき、どこに問題があるかを分析するとき
 に非常に適しており、わたしは便宜上これらを合わせて「静の物語解析」と呼んでいます。

 しかし、この手法とは対極にある、もう一つの解析方法があります。
 「静の物語解析」に対する「動の物語解析」。
 もしくは、動的な物語解析と呼んでいます。

 これは何かといいますと、静の物語解析で構築した物語構造を、どのようにダイナミックに動かしていくか、という技術の分析です。
 つまり、物語の動かしかたの技術体系です。
 静の物語解析が「起承転結法による解析」「要素による解析」であれば、動の物語解析「謎と伏線による解析」といえるかも知れません。
 もっと端的に「情報系による解析」でも良いかも知れません。
 しかし、残念なことに、この「動の物語解析」は、わたし本人も、実は全貌を見尽くしているわけではなく、完全に理解しているとはいいがたいのです。
 これからわたしが説明しようとしている「情報系による解析」ですら、わたしは理解しているとはいい難く、しかも、この系から外れる「物語の動かし方」があることにも気づいています。
 たとえば長期の時間経過による状況の変化みたいな部分。
 歴史物語などは、この辺が多用されていますが、時間経過ドリブンの物語の動かし方は、わたしも把握を仕切れていません。
 これには理由があります。

 もともと、「静の物語解析」の方は、シェイクスピアもしくはその無数の弟子たちであるハリウッド映画の分析によってなっています。なので、とてもたくさんのお手本があちこちに存在し、その原理原則を容易に把握することができました。
 逆に言うと、この映画、もしくはシェイクスピア劇というのは2時間のストーリーに最適化され規格化され、その中での物語を作るのに非常に適した技術で構築されていることが多いのです。

 しかし、「動の物語解析」の方は、お手本がありません。
 ないのですか? といわれれば、ないんですね・・・。
 と答える以外ありません。
 もしくは、静と動の比率の問題です、と答えるのが良いのでしょうか。

 例えば、シェイクスピアはダイナミックに物語が動きます。
 でも、よく読めば分かるとおり、それは静の物語解析で十分分析できる内容であり、若干、動の物語解析も使っていたりしますが、比率でいえば8:2ぐらい。ほとんど、参考になりません。
 ハリウッドにしても、たぶん7:3ぐらい。あまり難しいところはないのです。

 「静の物語解析」は、短いストーリーを発端から結末までを一気に進めてしまうような作品に適しています。完成された初期状態から、最終的な結末まで、全自動機械のように一分の隙もなく進めるのに適しています。

 対する「動の物語解析」は、長い長い、連載ストーリーのような作品を、息長く、読者を飽きさせないように続けるのに適しています。途中で停滞しがちなストーリーの物語状態に変化を与え、新たな展開を作り出すのに適しています。
 いつからこの技術体系は使われ始めたのでしょうか。

 推理小説の誕生となると、エドガー・アラン・ポーですが、ポー自身の著作や、その後の推理小説が、本来であれば、物語をダイナミックに動かしていくダイナモの一つである「動の物語解析」技術からかけ離れた奇形児ばかりを生み出してしまい、見るも無残な状況に陥っているのを見るとこれは違う系列な気がします。
 しかし、困ったことに、長編作品、特に連載形式の漫画などではこの技術が多用される傾向にあります。また、これに影響を受けたアニメなどでも同じように使われます。
 誰が使い始めたのでしょうか、この日本で。
 わたしは、おそらく小池一夫だと思うのです。

 小池一夫についてはwikipediaでも読んでほしいのですが、日本の物語世界に多大な影響を与えています。
 わたしは、かなり多くの小池作品を仕事で読んでいますが、現在でも通用する「動的物語構成」をしており、当時よりそれほど進歩がないといっても過言ではありません。
 おそらく小池一夫自身は、池波正太郎や、山本周五郎といった時代小説作家よりその技術を学んだと思われるのです、普及する技術の形にしたのは小池一夫でしょう。

 しかし、物語史上、この技術を初めて世界で使ったのはいったい誰なのでしょうか?
 ホメロスでしょうか?
 シェイクスピアでしょうか?
 ポーでしょうか?
 H.G.ウェールズ?
 メアリー・シェリー?
 わたしは、これはディケンズだったのでは、と思うのです。

 わたし自身、ディケンズはあんまり精読しているわけではないので、分析が仕切れていないのですが、例えばwikipediaのこのあたりの文章を読むと、なんとなくうなずけてくるのではないでしょうか。

「没後、そのストーリーの通俗性、あらすじの不自然さ、キャラクターの戯画化などのために、通俗作家として、芸術至上主義的な19世紀文壇からは批判された。確かに分冊販売という発表形態のために、人気の上下動を見て、もともと考えていた筋に執着せずに、時に強引とも思えるストーリーの変更を行った。特に『マーティン・チャズルウィット』や『ニコラス・ニクルビー』などではプロットの不自然さが目立つ」


 なんとなく、現在の漫画の状況に似ていますよね(^_^;
 日本での始祖はおそらく小池一夫なのではと思うのですが、世界でこの手法を使い始め、普及させたのはディケンズなのでは、と思うのです。

 わたしがこの技術を「動的な物語解析」と呼ぶ理由が感覚的に分かってきたのではないでしょうか。
 そう、この技術は、その場に生きている、いまそこで息をしている物語を自由自在に操り、ダイナミックな物語の新しい波を生み出していく技術なのです。
 そして、これが連載漫画の世界で多用され、ハリウッドではまったく使われていないことも理解できるでしょう。ハリウッドは常に完成品を作り、連載漫画が最初から完成していることなどありえないからです。
 しかし、怖気づくことは在りません。
 なんたって、この技術はディケンズを生み出した、イギリスの小説界で育まれた技術なので。

 ただ、ディケンズの評を見れば分かるとおり、この「動的な物語解析」技術を完成形にまで高めた天才は世界に降り立っていません。
 もしかすると、それはあなたかも知れません(^_^;
 本解析を読み、もしそのような方が登場するとなれば、それに勝る光栄はありません。


 ■鋼の錬金術師の解析に必要な、三つの技術の断片

 さて、本解析を読むにあたり、どうしても理解しなければならないことが3つあります。
 これはどれも「情報系による解析」の、今、現在の時点で分かっている原理原則です。
 ひょっとしたらすとんとは腑に落ちない話かもしれません。なぜそうなのかを説明しようとすると、非常に長い話になります。
 一言で言うと、TRPGとPBMの分野での発見から必然的に、ということになるのですが、これを説明するは、非常に大変です。
 動的に物語が動くとはどういうことかを説明しなければなりません。
 しかし、解析対象である連載漫画は、少なくとも、読者から見れば静的な物語に見えます。そうではないことはこれまでの説明でなんとなく分かるのではと思うのですが。


 1.情報を駆使すれば、物語は自由自在に操ることができる

 あまり深入りすると話が長くなるので、切り上げますが、この情報のコントロールで物語がダイナミックに動かすことができます。例えば、お母さんが死んだという情報は、主人公を動かすでしょう。それが誤報であったとしても。
 誰かが口にして、主人公に伝えるだけでいいのです。
 いいでしょう?
 簡単でしょう(笑)?
 だって、その辺の通行人に誤解させて、君のお母さんが死んだ! と言わせれば、物語が動くのですよ! なんと楽ちんなのでしょう。
 (あー、いやさすがにこんなに手抜きなことはしないのですが・・・)


 2.情報は多層、または単層のレイヤーを成している。

 謎と伏線の話が分かりやすいかもしれません。
 たまねぎの皮の話が良いかも知れません。
 未開示の情報をレイヤーに分けて、体系付けておくみたいな話になります。
 これは後ほど分かりやすいエントリーを紹介しますので、説明を省きます。
 これは、マインスイーパーを思い出すと分かりやすいかも知れません。
 ある情報が開示されると、突然、情報のレイヤーがすべて見えるようになる、という現象が発生するのです。
 なので、多層的で複数構成をしています。


 3.全ての情報が開示された瞬間から、物語は収束に向かう

 これも感覚的に掴むのが難しいかもしれませんが、ぶっちゃけていうと謎が全て解けた瞬間に物語は終結に向かって動き出す、と言うことを意味します。連載もので、この状況になってしまった瞬間に、物語が終了することは理解しやすいのではないでしょうか。
 もし、この状況に陥った場合は、時間の経過による状況の変化を使うのですが、まあ、その話はまだわたしもよく分かっていないので、放置しておきましょう。

 実はこの辺の話は、本家で書いていたりします。
 ■Appleに学ぶ、長編物語の未開示情報のコントロール
 http://plaza.rakuten.co.jp/hikali/diary/200701170000/


 これは、動的な物語解析の話をしていたのであったりします。
 そのまさに適役なお手本として鋼の錬金術師を解説するのはとてもよいことだとわたしには思えてきます。


 どうでしょうか。
 大体の感じは掴めたでしょうか。
 ノンストップの、たぶん60枚ぐらいの解説が始まりますが、大丈夫でしょうか。
 ちなみに、ここまでが20枚ぐらい。
 物語解析の名を冠するエントリーは伊達ではありませんよ(笑)。

 OK?
 よし、では、はじめちゃいましょう!


 ■■■ 警告
 ■■■ 
 ■■■ ここから先、鋼の錬金術師を愛する人は、立ち去ることを勧告します。
 ■■■ これは、最終警告です。
 ■■■ 























 ■鋼の錬金術師の、情報レイヤーの構成と、
  縦串としてのエルリック兄弟、
  独立レイヤーイシュヴァール殲滅戦。


 物語のメインミステリーである積層情報レイヤーは、物語上で明示されています。
 (17巻)

 1.賢者の石は人の生命で作られること
 2.それを指導した人造人間たちがアメストリスを牛耳っていること
 3.国土全部を使っての賢者の石の練成
 4.その先があるらしい。

 これが物語の核となる謎の構造です。
 あまりにもきれいに謎のレイヤーを作って物語が進むのでびっくりするのですが、クトゥルフのルールブックのシナリオの指針に従っている、完全なたまねぎの皮状の謎の構成と言えます。

 このたまねぎの皮型の物語の特徴として、わたしは先のエントリーで紹介していますが、実はこのたまねぎの皮は、無限に作れます(というか、クトゥルフ神話はそういう構成をしている)。もし作者さえその気があるならば、この物語は破綻しない限り、100巻でも、1000巻でも作り出すことができます。ラブクラフトが1920年に作り始めたクトゥルフ神話が、現在でも新作が刊行されるほど著作に満ち溢れていることからこれは自明と言えます。
 幻魔大戦も同じような構造をしています。
 深い謎のある作品と言うのは、実は、底がないのです。
 あるように見えるのですが、実はないのです。
 表面だけ皮を張って、その次の皮をせっせと作っていく形の物語だからです。
 永遠に真実にたどり着くことのない物語なのです。

 これは、appleが企業文化が失われない限り、appleが新しい発表ができるのとまったく構造は同じで、もし現在と同じ革新的な企業であり続けるならば、100年後にも、スティーブ・ジョブス5世が魅力的なスピーチをしているかもしれません。

 ここに明らかにしておかなければならないのは、実は真実はまだどこにもないということ。現在、第4の皮の存在が暗示されていますが、実は、この皮は10でも、20でも作り出すことができるのです。もし、どこかに真実が作られるとしたら、それは、物語が終結させる気に作者がなったときです。

 もう一度、確認しておきます。
 この話は無限に書ける話なのです。
 そして、真実はまだなく、どこかででっち上げられる。
 この型の作品は、実は無限に皮が続いているように見えて、二、三枚しか皮がない状況で書かれます。そして書きながら、作者は第五の皮、第六の皮を今のうちにせっせと考えているのです。

 実は、鋼の錬金術師が、この構造の作品であることを、わたしは具体的なシーンを明示して指摘することができます。これは、伏線の張り方を分析すると、どの謎がどの辺から確定していたか、を調べることができるからです。
 その前後を見ると、ほんのわずかですが、微妙なニュアンスの差異を見出す事ができます。
 あー、なるほど、ここでこの設定は作ったんだなあ・・・、と。


 また、物語の良識的な点をまずは指摘しておくことにしておきましょう。
 それはエルリック兄弟とイシュヴァール殲滅戦です。
 実は、この二つの情報系は、このたまねぎ型の情報構成から、乖離しています。
 エルリック兄弟が縦串的情報、イシュヴァール殲滅戦が独立レイヤー型情報。
 
 これが結構、制限として効いてきそうな気がするのです。
 それで30巻ぐらいまでは行く、などと書いていたりするのです。

 (ただ、この制限を回避する方法は無数にあるのですが・・・。)


 ・物語の縦串であるエルリック兄弟周りの情報系

 エルリック兄弟は物語の主人公であるだけあって、その体験のほとんどが開示されています。特に、母を生き返らそうとして、真理の扉を開いてしまうは、この物語を通じて、なんどもなんどもリフレインして描かれる情報ですが、そのたびに思い出していくという過程を経て、謎を深めていきます。
 しかも、この経験により賢者の石を追い求め、しかも人柱として敵方に目をつけられてしまいます。

 こう想像してみてください。
 もし、この経験がなければ、エルリック兄弟はメインの積層情報レイヤーの深いところへ潜っていくことになったでしょうか? もし、真理の扉の謎が解けるのが、第五レイヤーだったとしたら、エルリック兄弟は第五レイヤーまで行かざるおえません。べつにこれは第十八レイヤーでも第二千八百二十五レイヤーでもいいわけです。
 (さすがにそこまで引っ張ったら飽きるでしょうが(笑))
 主人公が目的を達成してしまえば、そこで物語は終わります。
 少なくともタイトルが鋼の錬金術師ではなくなります。
 エルリック兄弟がどこまで行くべきか、は、すでにこの最初の経験に明示されているのです。そして、それは積層情報レイヤーを縦に貫いています。つまり彼らは、このレイヤーを深いところへ下りていくしか手がないのです。
 エルリック兄弟が抱えている情報が、物語の縦串になっているのは分かるでしょうか。

 ただ、もちろん作者は予防線を張っています。
 あれだけの経験がありながら、兄弟の目指しているのは、自分たちの身体を直すことなのです。あれ、お母さんを生き返らせるんじゃないの? と思ってしまうのですが、わたしが気づくのは、あー、どこかで、目的をスイッチするんだな、と言うこと。
 また、父であるホーエンハイムの存在もありますが、父がエルリック兄弟の行動動機になるとは思えないので、どう使うつもりなのかは謎。お母さんを生き返られるとき(があるとすれば)に使われると思われる。


 ・イシュヴァール殲滅戦周りの情報系

 長らく開示されることがなかったイシュヴァール殲滅戦ですが、実際開示されても、ほとんど謎の開示にはつながらなかったような・・・。

 ただ、このイシュヴァール殲滅戦の情報レイヤーに、主人公側の軍人チームの過去が乗っかっています。ここを基点に人物関係が構築されています。また、敵役組の錬金術師も(あ、あと、傷の男もここが出発点ですね)このレイヤーが基点となっています。
 これは物語の序盤においては、非常に大きな役割を果たしました。
 軍人組が抱えているっぽい業が、ほとんどここから出発しています。
 また、ほんのわずかですが、メインの積層情報レイヤーにも絡んでいます。

 このような、人間関係の基盤を、過去の大事件において、物語の序盤では出さず、中盤辺りから出していくという手法はよく使われます。
 これは、実は序盤で不思議な行動をとらせたいとき、とりあえず原因をここに突っ込んでおき、あとで、その原因を考える、などといった場合に非常によく使用します。
 まあ、ぶっちゃけ、
「くそ、イシュヴァール殲滅戦のときはよくも!」
 と因縁をつけておいて、あとでどういう因縁だったのか、をでっち上げるという手法です。

 過去には、容易にアクセスできないので、かなり自由に使える情報障壁です。
 どんなに調べても、どんな因縁だったかを調べることはできません。
 当時の状況を知っているはずの人に話を聞いても、
「いや、やめておけ。やつにイシュヴァール殲滅戦のことを聞くのは・・・」
 とでも言わせておけば、ごまかせるわけです。
 まあようするに、過去になんかあったことにして、好きな行動をとらせることができるという便利な情報系なのです。

 この手法は、ロードス島戦記の魔神戦争(さすがに水野良に、六英雄の設定が生まれたときにこの物語を思いついていたとは言わせませんよ(笑))とか、スターウォーズもあやしいのですが、まあいいか。

 実際にこれが開示されたのは15巻でした。
 ずいぶん、持たせたなと言うのが正直な感想なのですが、非常に困ることがあります。
 明かしてしまったので、この主人公側軍人チームにもう謎を持たせることはできないのですね(ムスタング=ホークアイラインはまだ作れますが・・・)。
 となると、これまでに比べて著しく、行動の魅力が落ちてしまう可能性が出てきます。

 これを回避するのは、もうこの軍人チームを主人公周りで使わないで、別の人間関係系をメインに持ってくる(例えば、ムスタングを殺してしまうとか、舞台を移すとか)という方法ですかね・・・。しかし、これはかなり乱暴です。
 そこで、わたしは30巻ぐらいまでは持つかなあと言っていたりするのです。


 以上、駆け足で、この鋼の錬金術師に存在する主だった情報系について説明しました。
 しかし、おそらく、これを読んでいる方は、あの辺は?(例えばシン国周り、例えば北方司令部)と思うかも知れません。

 わたしの答えは明快です。
「そこはまだたぶん作者も作ってないはずだから、あんまり突っ込んでも意味がない」
 というか、鋼の錬金術師はシン国編とかやるつもりあるんかな・・・、まあ、そっちをやってもよさそうだけどさぁ・・・、という感じだったりします。

 というわけで、今後の解析は、ほぼ情報が確定している15巻までを分析していくことにします。



 (管理人注: あまりにも長いので分割しました。後編は土曜日の予定)
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