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 『あらしにあこがれて』5


 ルナは結局来た道を戻り、ラスペへ向かう。
 内海を通る航路はシドの首都経由だし、シャビはラスペの東方の東岸諸国のさらに向こう、大きな島国に全世界へのジャンクションがある。トランの浮遊船団が中継地点にしている商都だし、ラスペからの航路もある。
 そうなると、ぐちゃぐちゃと雨季が過ぎたばかりの泥の中を歩き、山塊を超えて、湿度の高い山道を歩くしかない。騎乗用の竜ぐらい用意すればよかったのだけれども、ルナは工房中のコストを管理している都合上、贅沢はできないのである。
「ニホには告白しなさいよ」
「またそれですか。興味ないんです」
 セレンは冷たい。
 正直ここまで言われると、どうしたらくっつけられるかしか興味がなくなる。
「ニホが言ってたわよ、セレンっていい名前だって」
「からかっているんですか!」
 うん。それしか興味がない。
「だって、ニホが言ってたよ? セレンの声が好きだって。コロコロと高いセレンの声が聞こえると、居ても立ってもいられないって。あなた普通に言えば、ニホに溺愛されるの。わかる? そういう意味?」
 シルバとのことを思うと、複雑すぎるのだけれども、いったいシルバはどう思っているのだろうと考えるのは、わたしには難しすぎた。
「お、お金がほしいんですか?」
「ど、どうしてそうなるの!」
「だって、ルナさまの仕事はそれじゃないですか!」
 たしかにわたしは、シルバからお金を絞ることを仕事にしている。それが唯一の使命で辛いことは否定しない。でも、わたしはシルバのお金がほしいわけではない。いや、欲しいというよりは全部強奪している。実行犯はわたしだ。
「たしかにさ、全部認めるけど、シルバに使う分は残そうと思っている。あいつから全部取ろうとは思わないよ、だって理不尽じゃない。だからダマスカス鋼の正体が知れるならばどこにでも飛ぶ。しょうがないでしょ? サウスの文献に書いてあるんだから、ダマスカス鋼って。一切の助けさえせずに、むざむざ金を生む鶏を殺すの?」
 セレンは考える。
「わたしにはわかりません。ルナさまは、高級すぎるのです。だってシルバさまを助けてばかりで、迫らないじゃないですか! 全部握っているのに、脅さないなんておかしいです! 好きなんですよね!? そんなにお綺麗なのに!」
 いろいろ図星を言われて、本音が出た。
「シルバは外見には興味ないの! それがいいの! わたししか見てないの!」
 わたしは自分を戦友としてみてくれるシルバがたまらなく好きだった。
 一緒に戦えている自分が幸せだった。
 セレンはしばらく立ち止まり、トボトボと歩を進めるルナを見た。
「あ、あの、ごめんなさい・・・」
「謝らないで。いつものことだから。こんなので心が折れてたら仕事にはならない、ラスペについてからが地獄だから、覚悟してよね。外観でしか評価されない世界は地獄だから。わたしは慣れてるけど」

 ラスペについてまず確認したのはトランの浮遊船団のスケジュールで、どうも数日後に大船団がやってくることが分かる。しかし、その船団はタルボットギルドで、トランの5大ギルドの中で1番こすっからいギルドとして知られている。
 もちろん重要な中継地であるシャビには寄港する。
 ラスペのタルボットギルド支部に、顔を出す。
「ああ、ルナさんじゃないですか! なにかお仕事ですか?」
「こんちわ! 久しぶり! 急用があってね、シャビに行きたいの。もう少ししたら、船団が来るんでしょ? 乗賃は弾むから、なんとか押し込んでもらえないかしら? 2人」
 トランのギルドの案内人はだいたいへらへらしている。
 精鋭は商売をしていて、ここにいるのは下っ端だからだ。
「50グロアでどうでしょう、二人分の乗賃ですよ? すいませんね、暴利でしょう? ギルドの規定の乗賃なんです」
 しめたと思って、突っかかる。規定料金を出してくることはじめから読めていた。
「あなた達はわたしたち以外の荷物を運んで儲けるんでしょう? たった、えーと、セレン、体重いくつ? ああ、たかだか100キロ未満が増えて、経費が増えるの? そもそもトランの技術は、わたしたちが再現するからいつまでも天下があると思わないでね? この際恩を売っておきなさい」
 これが有効なのは、わたしがお得意様だからだ。
 それで乗賃は12グロアになる。
 まだ高いけれど、シルバ様々である。いくらでもこれから稼ぐと有望視されると、交渉は有利になる。
 脚は確保しても、面倒は大量にある。
 兄の屋敷に帰ると、ばあやに取り憑かれる。
「ルナさま! 面会の依頼が殺到していまして!」
 手紙を受け取るとうんざりとした。だいたい想像つく面倒ばかりで、中でも一番面倒そうだったのはわたしに惚れている貴族で、だいぶ金があるので無下にはできない。
「会いますけど・・・」
「お嬢様、ご自分をご大切に」
 んなこと、わかってるよ。
「会うと言ったんです。そこで何をするかはわたしの仕事でしょう? どうなるかはわたしが決めます。それで不満?」
「いえ」
「じゃあ、黙ってて」
 ルナはその貴族との会食を設定して、とりあえず評判のいい料理人を当てる。
 シドに景色のいい名店はないけれども、だいたい格が高い料理人は決まっている。それに景色のいいロケーションを組み合わせる。あとはだいたい料理人がなんとかしてくれる。
 そこはオートマチックだ。
 たとえば蟹が好きだとわかれば、蟹だという。
 この客はよく知っているので、蟹で決まる。
 ただ、面倒な客で、新鮮な蟹しか好きでないのだ。
「新鮮な蟹蒸しでね、1時間以内の蒸しは禁止」
 なんで、こんなことをしているのだろうとはいつも思う。
「ルナさま!」
 さまと言うな! ばっちい仕事の棟梁みたいじゃないか。
「柑橘も添えたらどうでしょうか? お屋敷の料理人が長く考えていた提案なのです」
「それは、なにを言っているの?」
 ばあやはしばらく迷って、蟹肉に絞るのだという。
 しばらく考えて味を想像すると、だいぶ合っていた。
「じゃあ、柚子で。魚醤に合わせて。あとは料理人に任せるから」
 ああ、こんな仕事してしまっている。
 わたしはシルバのために、資金が必要だ。
 こんなに露骨な、資金集めを絶対にしたくない。

 金を配っている工房を訪れると、だいたい恐れられる。
「ルナさんじゃないですか! どうしたんですが?! なにかうちの工房に不足がありましたか?」
 不足はいくらでも語りたかったが、少しでも貢献できる目がある限りは無碍にはできない。わたしはその恐ろしく赤字を垂れ流れしている工房に用があった。
「電動モーターの発注をしたいの。とりあえず、試作用に2つ。発電用と動力用。モーターは作れるわよね? 大口の話になりそうなの」
 その工房主はいたく感動したようで、言葉を失う。
「利益はあなた達で研究資金に使っていいわ。全部あなた達のものよ。ただ初号機の性能で採用されるかどうかは決まる。うまく行けば数が出るから。最高のモーターを作ってちょうだい。繰り返すけど、これで研究資金を稼いで」
 ルナが巡っている稼げない工房にも、そこそこイケている工房はある。その失敗も含めて数百なので、だいたい良さそうな所はルナには見当がつくのである。
「十日後には仕上げてね! 忙しいの! ボーナス払うから! シャビに飛ばないとならないの。帰ってきた時に仕上がっているのが望ましいの。分かる?」
 その工房主はだいぶ覚悟を決めて、無言で頷く。
 こういうやつが信頼できるのだ。それから、ポンプ屋に立ち寄って、蒸気機関のポンプが失敗した話をする。
「あれは、駄目だったでしょ? 坑道で石炭をたくと坑道の酸素がなくなる。そうすると坑内の奴隷が死ぬ。だけど新しいポンプを考えたの。蒸気機関は坑外に置くの。それを発電機にして、坑内のポンプを動かす」
 ポンプの研究者はだいぶ考えたが、
「モーターはどうするんですかい?」
「さっき、バーナードに発注してきた。蒸気機関はわたしが作る」
 ポンプ屋は訝しげに聞く。
「それで利益は出るんですかい?」
 たぶんモーターが高い事を言っているのだ。
「それはわたしの仕事ね。高く売ってくればいいんでしょ? あなたたちが損するような取引はしない、だから安心して。それで得た利益をは全部研究資金にしていいわよ。こっちに上納する必要はない」
 これできっちりと金銭が合う。
 シルバに4割取られるのは厳しいが、蒸気機関を暴利で売って、それで賄えばいい。
 となると、蒸気機関はフルスペックの最上級を出さないとなあ。
 なんかいいネタあったっけ?


 えーと、事前の予定では、ほぼ全てがペネスでの事件になる予定だったのです。
 だけれども、予定されていたペネスでの竜狩りの様子を書くよりも、ルナとシルバがどんなふうに事業を進めているのかを書いたほうが楽しいな、となってしまったわけで、ラスペ編、シャビ編を書きたくなったのです。
 これは総集編の解説で書きますが、この中編はシルバを書くためにあったのです。
 それがあまりにもルナが格好良すぎて、プロデューサーとしてのルナに焦点が当たる形になりました。物語は生き物なので、企画どおりに進まないのは仕方ないと逃げたくなるのですが、ルナが予想以上に格好良かった、という言葉になります。
 ルナの生命力が意図していなかったのだけれども、あまりにも格好良かった。
 これだけのキラキラを見てしまうと、そこにカメラを向けるしかなくなる。
 小説家の多くが、小説は自由にならないと言うのは、たぶんこれなのです。

 ラスペに戻って、ペースが変わるのですが、たぶんここはマニアックすぎて分かりにくいのですが、生活のリズムが変わるんです。それを書いていて、あ、こんなに変わるんだと思いました。それが生き方のチェンジ・オブ・ペースになるんです。これはたぶん直感する人は少ない気がするので、書いておきます。


| 自作小説 | 23:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
『あらしにあこがれて』4



 わたしが初めてシルバにあったのは、薄暗い小雨の日だった。
 シルバは孤児院から引き取られてきた子供で、兄はシルバに炉を担当させるつもりだったよう。幼いわたしに知る由もないが、高齢の炉の主が徒弟を欲しがったのだろう。
 それで遠巻きに見ていたのだが、いつもあちこちにやけどの跡があったのを覚えている。かちん、かちんと鉄を鍛えるのは重労働だし、ひょろっとした子がいつまでもつのかと心配したのだが、おそろしい粘り強さがあって、結局は今に至る。
「あんた、いつまで続けるの? こんなの奴隷じゃない。文句ぐらい言わないの?」
 わたしがみかねてそう言ってしまったのは、世界をよく分かってなかったからで、シルバはしばらくわたしを見た後に、躊躇していった。
「ぼくは運がいいんだ。流行病にもかからなかったし、親方はぼくを実の息子だと思ってくれた。だからここが家だし、ぼくの家族はここなんだよ。炉の前なんだ」
 事実、この親方はシルバを実の息子のように自分の知るすべてことを仕込んだ。
 今になって思えば、シルバがひとり立ちできるだけのものをすべて植え付けようとしていたのだろう。ただそれは幼いわたしには虐待のように見えて、どうしても自分がどれだけ恵まれているかを考えさえせずに、ひどいことだと思っていた。
「あなた、ちゃんと給金もらってるの?」
「ないけどさ、住むところも食事もあるからさ、必要なことは全部もらえるんだ」
 シルバが卑屈に見えるのは、わたしが特権階級にいたからだと今は分かるのだが、それは少し大人になってから。いまになってはいかに間違えていたが分かるし、シルバはシルバなので、その作ってしまった関係を恥ずかしく思う。
 自分を消し去ってしまいたくなるほど。
 ただシルバは優しくて、どんなにへんてこりんなことを言っても、だいたい普通に受け止めてくれる。それがわたしを大胆にした。
 わたしが書いた、一通の文章で何もかもが始まった。(23)

 「クリフォードへの取材依頼」という名称で当の本人のクリフォードが語ることになるわたしの手紙は、ひかえめに言ってシドを変えてしまうほどのインパクトがあった。わたしはパルの実妹で、もうちょっと自分の影響力の大きさを考えたほうが良かったかもしれない。
 兄の高弟の、竜狩り用の銃を作る工房に見学に来ませんか?
 ルナとしては、どこに出しても問題のない工房であるし、もしかしたら幅広い週報発行者たちの人脈の中に資金の出し手はいないだろうか、と思ったのだ。
 あの脳天気な者たちがどうもこれは取材すべきだと嗅ぎ分けて、即座に記者がやってきた。出会うと素朴な印刷業者で、あの人たちはよくげらげらと笑った。食いつきが良かったのは工房の奇っ怪な機械で、これで鋼鉄の直管を作るのだと説明すると、同伴の銅版画家が素早く姿を記録していった。
 ドライゼ銃にはまったく触れていないのが片手落ちだったけれども、それは不幸中の幸いだ。このときにドライゼ銃を世の中に周知すべきではなかったし、爆発的にシド中に広まる恐れのある週報には載らなかった。
「わたしが担当になりました! 社主は別の取材に忙しいのです! ご勘弁ください!」
 それは元気だけはいい小柄な女の子で、はきはきとした笑顔が印象的だった。これがあのシド全土に支持されている週報の記者かとは思ったが、どうも野ばらのベストセラーを書いているのはこの子ではないっぽい。肩透かしだったし、本物に会いたくなった。このときはその社主が来るまでもないと判断されたようなのだ。
 仕方ないから塩レモンの特別に冷やしたものを出し、たぶん好きそうだとわたしが勝手に思って、はちみつをお好みで入れてくださいと添える。その蜂蜜が大好評で、何杯入れたかわからないくらい注がれて、恐ろしいほどの甘さになっているであろうと思われるカップの中身を想像して恐怖した、喉にはいいかもしれないけど。
 それでもこの蜂蜜ガールはまったく怯むことはなく、
「リラです。まず聞きたいのですが、この技術はシドをどう変えるのでしょう? 兵器の革新ですよね? となるとボルニアとの衝突をもう予定しているのでしょうか?」
「ま、まって……、なんで、ボルニアと戦うことになっているの? この工房の目的は、騎竜兵を増やしたい貴族たちの、竜を用意することなの。なんでこの技術を使ってボルニアと戦わなければならないの? 銃は人を殺すためにあるものではないの」
 リラはきょとんとする。
「だって竜を無力化できるんですよね? ボルニアを無力化できるんではないですか?」
 この言葉はたしかに本質をついていたが、飛躍しすぎている。
 そんなかんたんな話じゃないと言うことはできるかもだけども、この子はあさましいぐらいには積極的で、なんでも聞いてやろうと瞳をらんらんと輝かせていたのを見て、この子がなぜ銅版画家同伴で派遣されたのか分かった気がした。
 たぶんこの常人ばなれした、思考の飛躍がこの子の最大の武器なのだ。
 それで不意を打たれて、ついつい彼女ペースで取材が進む。
「ルナさんは、この工房の監督をしているんですよね? じゃあ、何がほしいのか教えてください。やっぱりお金ですか? それは理解できるのですが」
 それが以外はないだろうとは言わない。ルナには無数の研究資金で苦痛を味わっている開発者の姿が浮かんで、なんと言えばいいか考える。
「わたしは、わたしは配りたいの。どの研究も結果が出ないと切り捨てられるべきではないの。どれも大切だし、たったの3年で切られるべきものなんてたったの一つもない。それを守るためなら、稼ぎ頭を犠牲にする。一生償えないひどいことをしても」
 リラはまたきょとんとした。
「パルさんの工房には期待されている方がいるんですよ、だからちょっと見てきてもらえないかって。異例なんですよぉ、こんなこと」
 ルナにはだいたいのからくりが分かってきた。
(面倒な筋に目をつけられてるなあ・・・)
 資金の流れを見ていればだいたいそれがどこなのかの見当がついた。
「ルナ! あれ、お客さん? どうしたの? 出資者? あのさ、蒸気機関をルナに任せたいんだけど、やってくれるかな?」
 申し出は願いどおりだけれどもタイミングが最悪だった。
 遠ざけていたのに、面倒くさいのがやってくる。
「し、シルバさんですよね! クリフォード社のリラです! お会いしたかったんです!」
「は、はあ。」
 食いつく速度は猛禽のよう。
「る、ルナ? どなた?」
「週報の発行者・・・」
「ああ、すみません! 来てるなんて知らなくて!」
「いえ、構いません! 本来は社主が来るべきだったんです! それで話が見えないのですが、蒸気機関をルナさんに任せるとはどういうことでしょう?」
 シルバは、ようやく困難な状況だと察して、しどろもどろで説明をしようとする。
「あ、あの、ルナがシド随一の完全蒸気機関の研究者だとはご存知ですよね?」
 リラは戸惑う。
「そ、そこまでは」
「蒸気機関の研究でルナを知らない人はいません。今は研究に没頭できない状況なのですが、サウスの技術を見つけてくることの関しては天才です。ぼくもその恩恵に預かってますし、サウス語をネイティブに読めるのです」
 きわめて正確に表現されると、わたしはつまらない。
「だから、その専門家に発注するのがおかしいことですか?」
 リラはためらってから、白旗を上げた。
「どうも、役不足だったようで」
 愛想笑いを浮かべる。
 シルバはしばらく考えていたが、ルナの方を向き、
「香草茶を作れるかな? あれはとても美味しい」
 ルナが入れ始めると、シルバは改まった。
「ルナのほうが研究者として優れています。ぼくは本当につまらない方で、えーと、リラさんでしたよね? ルナの作るものを見て欲しいな。飛ぶようで、どう表現していいかわからないよ。神がかっているんだ」
 正直どう反応していいのかわからなかった。
 お茶っ葉を蒸しながら、香りを部屋に満たしていく。
 完全蒸気機関に関しては、たしかに自信がある。
 ただ、これは果汁酒じゃない。誰もを酔わせるだけの実力がない。
 お茶として注ぐと、椀が温まった。
 リラはそれを飲み、異国のお茶ですねと、満足そうに言う。
「おいしい・・・。こんなにおいしいなんて、ルナさんよりもすごい人は出てこないのですね」
「はい・・・」
 シルバはそういった。ルナは思いついて聞く。
「あの、リラさんは、もしかしたら知りませんか? 北方大陸を駆け回っていることですし、古いダマスカスって、現在の地名ではどこですか?」
 リラは不意をつかれて、うんうんと考え始め、しばらく考え込む。
「あー、いや、聞いたことはあります・・・、でもどこかは、うーん・・・、クリフォードさまなら即答すると思うのですが、えーと・・・」
 苦しそうに唸る。
 それから頭をかきむしって、やけくそ気味に言う。
「シャビです! たしか、シャビ史を読んだことがあったような・・・」
 自信なさげに言う。
 ルナは立ち上がり、シルバの肩を叩き、じゃあ、言ってくるから、と捨て台詞を投げる。シルバが唖然としているのをよそ目に、セレンに行くわよと声をかける。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
 これはリラだ。
「間違ってたらどうするんですか!」
 ルナは気にもせずに、
「5%もあってたら幸運のうち。あなたはこの世の中が100%あっているとでも、思っているの? 幸運の神様は飛びつかないと逃してしまうのよ?!」
 セレンは律儀にも旅装を整え始め、案外この娘とは相性が良いのかもとさえ思えてくる。
「ラスペですか?」
「まずはね。そこからシャビへ!」


 ダマスカスは実はパオペラ(ゲームブック)の面々が飛ぶ先として用意してあったので、実はけっこうリサーチがされていたりします。ダマスカス鋼に関しては次回に譲りますが、シャビを舞台とした短編ゲームブックシリーズが4本用意されていたのです。
 まさかそこが生きるとは思いません出した。
 オスマントルコはイニチェリという鉄砲兵を親衛隊にしているぐらいの鉄砲国(わたしが参考にしている本では火薬帝国)なのですが、その版図にダマスカスがあって、必然的にダマスカス鋼が使われているのです。ダマスカス鋼の経緯は複雑なので、次回に譲ります。
 現状のダマスカスの破壊は悲しみを感じますが、日本という国にいると所詮部外者なのが、苦しいというか無力感は感じます。そこはダマスカスだぞ、価値が分かっているのか! と叫びたくなります。  資料で知っているだけのわたしは無力です。


| 自作小説 | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
何の話だかよくわからないのだけど、たぶんタクシーの話。


 本日、コンビニの前を通ったとき、見慣れない集まりを見た。
 大学生と思わしき数人がいたのでそのような年齢の子供のいる年代の人たちの集まりで、10人近くはいた。何をしているんだろうとぼんやりと見ていたのだが、一体どういう集まりなのかまったくわからない。
 買い物をして、お茶を飲んで、自転車に乗ろうとした時に突然に車が入ってきて、
「タクシーきたよ!」
 聞こえて、やっとわかった。
 見ると2台のタクシーが入ってくる。
 ああ、飲み会だったんだ。
 考えてみるとそのコンビニの近くには、シニア層に人気の料理屋がある。
 そうするとストーリーが流れ始める。
 この人達はあのお店で飲み会をして、お店でタクシーを頼んで、コンビニで待っていたんだ。その前後のことは知りはしないのだけど、なんとなくわかった気になるのは面白いなあと思った。これがストーリーだ。

 わたしは小説はどう書くのですか? という質問を見て、書いたことがある。

 ■小説の書き方の話
 http://blog.story-fact.com/?eid=712080

 ただこれはほとんど実装論になっており、もうちょっと一般化できないものかと思ったりもする。ただ、まあ実装論よりになるだろうなと思ったりはするのだけど。

 わたしの場合、だいたい冒頭の10枚が書けると、だいたいうまくいく。
 『死神の帰還』の場合、たぶん理解がしにくいと思うのだけど、一人称で文章を書いていると、その人物が男性か、女性かというのは非常に分かりにくい。完全に実装論だけれども、冒頭で書いているのだけれども、アルトで読むと、という文章で女性だと書いているのですが、これを考え出すために報告書が生まれて、その話している舞台が、帰還する帆船という風に固まっているのです。船の中から始めると決まってから、あとは芋づる式に決まって、ほとんどアドリブで書いています。
 この報告書は苦し紛れに出てきたわりに物語上非常に重要になって、物語の展開に大きく影響をあたえるのですが、その始まりは、女性だとわからせるにはどうしたらいいのか、から始まっているんです。
 実装論ですね(^_^;

 『鉄鎖の次王の恋』は大枠の物語はあったのですが、イオと次王の関係という部分が何故生まれてきたのか本人にもよく分かってなくて、書いていたのは入院中だったのですが、別に何らかの天啓があったわけではなく(2回めの入院のときだったので、1回めの入院のような幻想を見たというわけではなく)、ただまあ、今考えてみると、密接な抗しがたい密な関係にしたかったのかなあなどと思います。
 ラストあたりはニーベルンゲンをモチーフにしていたので、まあこうなるわなというぐらいは考えていたのですが、暗い話だなあとしか・・・。わたしがボルニアサイドに、強すぎるからペナルティーを与える、というポリシーを持っているのがそのまま出た形になっています。

 『旅する真葛』の場合は、これは企画の段階を開示しているのだけど、

 ■喫茶店のコーヒーと紅茶へのリベンジ その1
 http://blog.story-fact.com/?cid=7368

 まあ簡単に言うと、野良の質問に応えるためにこれだけの、検討が必要になるということなんです。わたしは設定資料のために小説を書くということをしているのですが、これはロードス島戦記で著名な水野良氏が書いていたやり方で、ああなるほど、便利だと踏襲しているだけなのですが、シドがわからんぞ、どうなってるんだ! から『死神の帰還』を書いたわけですし、ボルニアがわからんぞ、どうなってるんだ! から『鉄鎖の次王の恋』を書いたのです。
 『あらしにあこがれて』を書いたのも同じ理由で、遊びで第三作を書こうとして、無理だと分かって、これはプレストーリーを書かないと無理だなと思って書いているのです。
 文章の出だしは、よくわからないけど、良かった。
 もともとの仮タイトルは「雨粒」だったんです。
 たぶん序盤の書き方は雰囲気が違うと思うと思うのですが、あれはあれで上手いとは思うのですが、雰囲気がぜんぜん違います。「あらしにあこがれて」とタイトルを定めた時に、突然これが何かわかった気がして、タイトルって重要だなと無邪気に思ったわけですが、こんなことで変わるなんて不思議ですね。
 あの話は、なぜかシルバの話からルナの話になるのですが(予定)、もともとシルバを書くために全部考えていたのに、ルナに乗っ取られる話になりました。人称というのは、難しい話ですが、ルナ人称だったらルナの話になるだろうというのは分かりやすい話だし、シルバを控えめに書きすぎたとは思います。ただ、ルナが格好良すぎて、このキラキラを書かないわけには行かなくなったのです。
 こんな娘にするつもりは一切なかった。
 ただ、 どういう偶然か、一人で生き始めた。
 わたしはしばしば、物語に迷うとその登場人物の声を聞く瞑想をするのですが、ルナはいちいち聞くまでもなく、大声で叫んでいた。わたしはしたい、わたしはこうありたい、わたしはこうだ。
 ルナを書くのは簡単だったし、それは手に取るようにこの娘がどう考えているかがわかったからだ。それは単純化しすぎているのかとは思うし、ルナの細かい部分まで設定できていないというということも思うなのだが、簡単に書きすぎだとは思う。
 ただ、書かないというのは罪だ。
 どんなに未熟でも書いたほうがいい。
 書かないと、自分が見えない。
 どんだけ劣っているかがわからない。
 へたくそだと理解しながら、それに耐えないと、上手くならない。
 それが全部。

 上手い小説はこの世にいくらあってもいいと思っている。
 小説ほどこの世にどれくらいあってもいい分野はないと思う。
 素敵って素敵じゃないですか。
 それはストーリーなんです。なんだかわからないけれども、理解しやすいものなんです。それを見つけるって、楽しいでしょう? コンビニでいいんです。そこにいて、何か不思議なものを見るだけでいいんです。変な奴らだなあと思うだけでいいんです。



 こんなに強烈な、あんまりいいたくないけど、キャラクターはなかった。
 ルナの筋道はわたしは知っているのだけれども(わたしが作者だし)、その先で出会うドラマに期待しか持てないのがルナ。
 これがほとんどと言っていい、すごい仕掛けなんだけど、たぶんこれに勝るのは6話以降の大展開しかないかなあ。
 何年後の話をしているんだ(^_^;

 

 


| 雑記 | 03:30 | comments(0) | trackbacks(0) | 昨年の記事
 『あらしにあこがれて』3


 こんなだったシルバを一言でいうと、お金がないという言葉になる。
 わたしがほとんどのお金の流れを握っていたし、とにかく理不尽なほどに兄の工房にお金を吸い上げられていたことは事実だ。それをやっていたのはわたしであり、理不尽なことをしていたのがわたしだったので、いつ工房の人間に、シルバはしないとしても、だれかに殺されるかもしれないと思っていた。どんなに恐ろしいことをしていたのかさえ、わたしには見当さえつかない。
 それでもシルバは寛容で、わたしが常に工房にいることを許してくれる。
 わたしはその工房にいて、サウスの書物が形になっていくのを見ながらゆるやかな昼を過ごすのが好きだった。そこには都会の喧騒はなく、ありがちな書類仕事もなく、真剣な、しかしのどかな手作業しかなかった。
 シルバは板状の鉄を曲がるまで高温にしてらせん状に巻いて筒にする。
 かちんかちんと叩きはするけど、お互いのやり取りはささやき声のようで、ごうごうという炉の音にかき消されそうになる。
 この製法が稀有であって、板状の鉄を直線的に芯棒に単純に包み込むようにして作る筒とは圧倒的な差があった。強度が違うのである。シルバの筒は暴発しない。それがブランド価値になり、多くの貴族から発注が殺到していた。農耕地の害竜を追っ払うのに使うのだという。畑を荒らす竜に発砲して痛みを覚えさせると、銃声に怯えるのだという。
 シルバは奇怪な装置を作って、砲になる直管を造り始めていた。旋盤に似ていながら、あちこちの温度管理が容易にできる。微妙な温度変化を駆使して、筒の芯棒である鉄と管の温度差を変えていく。叩くと溶けて筒になる。それを叩いて、火入れをすると鋼鉄になる。
 シルバの未知の鉄という宿題は、まだ念頭にあった。
 純鉄を叩くことで炭素を浸炭させることで、硬くなることはよく知られていた。
 しかし、ダマスカス鋼と表記される鉄のことがまったくわからない。これの製造方法がわからないのだ。というかダマスカスってどこにあったの?
 鋼鉄の筒の作り方はほぼ確立されていて、繊細な銃にしていく作業が最難関だったが、シルバは5秒もかからずに適切に火薬が発火する場所を飴のように切り取っていき、弾を込める可動式の覆いがスムーズに動くように僅かな誤差を小さなハンマーで調整していく。
 ドライゼ銃の名称が、シルバ銃とならなかったことの方がふしぎなほどで、実質的にシルバはドライゼさんの銃を乗っ取った。シルバの工房でしかこれは作れないし、その利点がわかっても真似できる工房はなかった。
 シルバのドライゼ銃だとあちこちで呼称された。正直面倒なので、以後はシルバの銃と呼称することにする。
 シルバの銃はだいたい面倒くさい銃で、そのめんどくささのおかげで暴発がほとんどない安全な銃になっている。そのためにおそろしいほど強度確保のために叩くし、叩くたびにずれる正円の砲を、常に微調整する。
 そんな誤差も許さないのかと思うのが日常で、わたしにはどこに狂いがあるのか分からない世界で調整していく。おそろしく精密な銃が生れていく工房を眺めるのはのんびりとしたものなのだが、シルバが試し撃ちをすると、必ず欠陥が見つかる。
「5センチずれているかな。微妙だけどね。これだとうまく行かない時もあるよ」
 50メートル先から撃って5センチである。
 変態的な射撃の名手がこのシルバの銃の精度を決めていた。神がかっている射撃の名手があってないと言えば、誰も言い訳ができなくなる。シルバはそもそも射撃の腕があって、そこから自分で作る銃の信頼を獲得していった。
「この銃は正確ではない」
 これに抵抗できる人はいない。
 目の前にいるのが射撃の神だからだ。
 それで、正確だとお墨付きをもらった銃を固定して、機械的に射撃精度のテストはできる。同じ条件で固定した正確な銃と、テストする銃で比べれば結果は明らからかだからだ。

                   ※

 姉貴風を吹かせていると言われるのは好きではない。
 そもそもわたしはシルバより1年年長なだけだし、正直に言ってわたしは雑用係の脇役だ。シルバがいなければ兄の工房は存続できず、彼が主役であることは明らか。
 だけど、この時はさすがに言った。
 振り返えるとあからさまな姉貴風だったし、これが重要だとは分かっていなかった。
「あんた、まだこんな本読んでるの?!」
 野ばらの装丁をされたベストセラーを手に取り、シルバに突き付けた。シルバはしどろもどろになって、ぶつぶつと呟く。
「みんな読んでるよ……」
「荒唐無稽な本じゃない! だいたいこれ、主人公がアドレルを救ったことになってるけれど、アドレルは週報でもみんな知ってる通り壊滅したし、」
「うん」
「それにこの主人公の死神は男性ということになっているけれども、実際に裁きを受けて死神の二つ名を受けたのは女性だったし、」
「たったひとりの女性がキュディスに放り込まれて、しかもアドレルを救っただなんておかしいでしょ! おとぎ話じゃない!」
 シルバはしばらく考えた。
「でもさ、共感するんだ。シドはおかしいよ。奴隷を売買するべきではないし、キュディスの怒りを買うようなものだよ。この人はつねにキュディス人を奴隷にしないように頑張っている。ぼくはこの人の助けがしたいな。役に立つかどうかは分からないけれども」
「ばっかじゃないの! あんたなんて戦場にぶち込まれて、死んでしまえばいいんだ!」
 シルバは戸惑って、わたしの手首をおそるおそる握って、ため息を付いて言う。
「そんなの、夢のまた夢だよ。ぼくの仕事は最前線に赴く貴族たちの竜を用意することだけ。そんなことはルナだってわかってるだろ? 卑しい仕事だよ」
 いら立ちが芽生えるのは、こいつがおそろしく謙虚だからだ。
 わたしたちは、その苦悩する天才にたかっているだけだと、気付くからだ。
「メイファは知ってるだろ?」
 知るも知らないも、シルバの工房の統括をしている女の子だ。それを取り出すのはずるいと思うのだが、言いたいことはわかった。
「ぼくは話してわかったんだ。この子は、本来頭がいいんだって。それが特別な事情で発揮できていないと。信じられるかい? 彼女は奴隷として売られていたんだ。遠い東の国の出身だし、言葉もわからない。それでも、ぼくと話せた、言葉は通じないのに」
「でも、買ったんでしょ?」
 これはいじわる。
「それ以外方法がなかったんだよ。仲間として迎える方法が買うしかなかった」
 ルナにとっては、メイファがシルバに特別な感情を抱いているのは明白だ、と考えるのが面倒くさかったのだが、明らかにこれがいなくなると、シルバの工房は立ち行かなくなることはわかっていた。
「決して奴隷じゃないよ。仲間なんだ」
 何かわたしの古傷をえぐるようであるが、罪を犯したのはわたしだ。贖罪のために死にたくなり、辛いとしか言えなくなる。わたしがシルバを奴隷だと思っていたことは事実であるし、否定するすべがない。それを責めることをしないのは彼の計り知れない寛容さであるし、そこで生かされているのを感じはする。
 かれは得体が知れないほど広大だった。
「でもさ、こんなに面白い人たちが集まってボルニアに抵抗すれば、なんかできる気がしないかい?」
 楽観主義とは言わない。
 シルバの思考は未来に対して太陽のように明るいが、現実主義者である。それは死神リニーという現実主義者の権化のような天才軍師を得て、開花していく。
 シルバはたしかにあらしにあこがれていた。
 自分の力がどこまでか知りたがっていた。
「奴隷制が未だにはびこっているのは、機械が発達していないからだよ。ルナもわかってるだろ? 鉱山で出水したときそれを組み上げるポンプがあれば、人はいらない。人が死ぬかもしれない危険な作業だ。石炭の蒸気機関があれば、こんなの問題にならない」
 シルバの視線は強くて、言葉に困る。
「そうだけど、まだ石炭の内燃機関の排気問題が解決してないの。構内で燃やすと、酸素がなくなるし、煙がひどいわ。炭鉱中に毒ガスを撒くようなものなの」
「うん、そうだね」
 しばらくシルバは考える。
「こうしたらどうだろう? 蒸気機関は坑道の外に置く。そして坑内にはモーターを置く。そして蒸気機関には発電機を繋いで、その電力を構内のポンプに送る」
 ルナはしばらくなるほどと考えたが、あることに気づいて眉をしかめた。
「それってさあ、発電機のモーターとポンプのモーターの2つが必要ってことでしょ? どんだけお金がかかると思ってるの? モーターは高いのよ?」
「奴隷を買うより安いんじゃないかな?」
 冷静に検討してみると、ほぼトントンだった。
「まあ・・・」
「だったら人が死なないほうがいいよ。ほら、こっちの方がいいじゃないか」
 この熱意がうっかり惚れ込んでしまう理由なのだ。
「だったらさあ、あんた、それやったらいいじゃない?」
「え?」
 わたしは椅子の背に持たれ、背伸びをして天井を見上げた。
「お金必要なんでしょ? そんなのわたしが調達するから、あんたは好きにしたら?」
「ど、どういう、いみ?」
 反った背を戻して、思わずにやにやして、シルバを見てしまう。
「その心意気を買ったって言ってるの、鉱山につてぐらいあるんでしょ? やりなよ」
 まあはっきりいうとこいつが本気になったときには、だいたい回収できることは長い付き合いでわかっているし、まったく回収の見込みが立たない研究者たちに罵倒されるのは、もう慣れっこになっているし、その蒸気機関をわたしがやってもいい、とさえ思っていた。最近触れるのはお金の書類ばかりで飽き飽きしてはいるのだ。
「だけどさぁ、利益の8割は渡してよね、利益よ? 売上じゃないから、安心して。周辺を黙らせるにはそれぐらい必要なの」
「暴利だよなあ……」
「あなたに渡るお金は文句ばかりの研究者からぶんどってくることで生まれるの。その口うるさい連中を黙らせるには、お金が必要なの。汚い仕事だなんてことはわかってる」
「あ、あの、隊長! この女に譲歩する必要はありません! すべての利益を稼いでいるのはうちなんですから!」
 シルバは突然割り込んだ異国のうつくしい工房長を見て、困ったように眉をしかめる。
「メイファ、お金の話はルナに任せているんだよ。必要なときにお金が来なくなったら困るだろう? メイファは硝石を買うお金がなくなったときにそれを用意できるのかい?」
 たぶんこの子は、わたしをライバルと思っていて、自分のほうが魅力的だと思っている。わたしは正直、自分の研究成果の方に興味があって、自分の外観にはまったく興味が無いのだけれども、張り合う気は一切ないと言っても分かってもらえない。
 容赦なく分かりやすい方法で決着をつける。
「50万グロアはかき集める。だいたい出資してくれるつてはあるからさ」
「たすかるよ。面倒ばかりでごめんな」
「ちゃんと稼いでよ? 出資者が大儲けできないともう次はないのよ?」
 結局、わたしの取り分は6対4になる。
 数字にしてみると2倍のお金がシルバに流れたことになる。結果的にシルバの事業には大量の金が流れ、世界初の砲兵兵団を整備する資金になる。
 そしてそれがシドを守った。まさかこんな思いつきで決まった事業が当たるなんて。


 えーと、技術的な解説は終了時にまとめてお送りしたいのですが、いちおうそれなりの技術史の本に出典があります。シルバの製銃方法はトルコのもので、芯棒を包むようにして筒を作るのは欧州や日本の製銃方法です。
 ドライゼ銃というのは実在の銃でプロイセンで開発されたものです。
 風の谷のナウシカのナウシカが持っている銃に機構が似ています。
 たぶんあの銃もドライゼ銃をモデルにしているのでしょう。

 もともと蒸気機関は、鉱山で出水があったときの汲み出し用として発達したのですが、高出力な電動モーターの発達がだいぶあとなので、その頃はひどい状態で使っていたようです。このお話ではサウスの書物が発見されると、技術発達の順序関係なく発展してしまう事になっているので、当時は何故か高出力電動モーターがあった、ということにして進んでいます。

 シルバのライフル銃の腕ですが、ライフル射撃に50メートル先の的を撃つ競技があり、この最高点10点の円が直径5センチです。そこから5センチごとに9点、8点、7点となりますので、5センチずれるというのは、半径ですので9点と8点のちょうど境界線に当たるぐらいを意味します。
 しかもこれ、反動のある火薬銃ですからね(^_^;
 神域に達している精度で、まあオリンピックでも無敵だろうなあというレベルですw


| 自作小説 | 21:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
初詣に行って来た! 予定:三峯神社→結果:秩父神社

 こんばんわ! お正月の夜をいかがお過ごしでしょうかhikaliです。
 去年の初詣は湯島天神と神田明神で撃沈という散々な有様でしたが(3時間待ちと言われて帰ってきた・・・)、今年はリベンジ、埼玉県民なら秩父の三峯神社だ! と血気盛んに向かったのは良かったんですが、出陣が午後という時点でもう予定がどう見ても達成できないそう、そして、なんでも三峯神社は西武秩父駅からバスが出てはいるものの、神社まで75分かかる上に、三が日はものすごい交通渋滞でいつつくかわからない状況、という身の毛もよだつ怖い話を聞き、まあ現地ついてから考えよう、と適当にやってきました、西武秩父駅。
 正月三が日ぐらい交通規制してもいい気がするんですけどねえ・・・。



 なんか新聞ではリニューアルされてすごくなっているという話だったのですが、



 あー、これですねぇ・・・、今造ってるとのこと。



 秩父の街は、秩父祭りのユネスコ登録で沸いていまして、これ秩父市役所なんですが・・・、



 横断幕を拡大するとこんな感じ。何となく読めるでしょうか。



 と、なにげに中心街を歩いてるいると向こうの方に鳥居のようなものが・・・。さっき秩父神社がどうこうと駅前の看板に書いてあったけどあれかなあ、などと思いながら歩いています。



 かなり近づいてきました。これわかりにくですがものすごい群衆が見えているのです。



 屋台まで出て大変なことになっているのですが、これお参りの順番の列です。もうちょっと先にくとわかりやすくなるのですが、30分待ちぐらいでしたかねえ・・・。



 何か御鎮座2100年なんだとか。中国だと前漢(「項羽と劉邦」の後に劉邦が立てた国)の時代だとか・・・。実際の建物は、落雷や火災で何度も焼け落ちて、徳川家康が再建したのが今の建物とのこと。あとでもちょくちょく出てくる姉妹とお母さんが、でも最古の木造建築って法隆寺だよね、などと言っていたので気になって調べました。



 あ、早速出てきましたが、その3人が「三峯神社は大丈夫だったよね?」「あれは三峯神社の御神体が狼だからだって」と地元民情報と思われるマニアックな話をしていたので、ネタ用に撮影。



 御神酒は、素焼きの杯(干支の浮かし彫りが入っている)をプレゼントで300円だったので、電車で来てるので記念にちょうどいいなとこの時思っていて、お祈りが終わったら早速お酒を飲んできました。
 あ、今年って酉年なんですね(<いま知った・・・。その杯を確認したから・・・。)。



 だいぶ近づいてきました。拝殿前に7本の綱が下げられていて、行列を7列にして進みます。



 このあと、秩父名物の玉こんにゃくを食べたりしたのですが、串を持ったまま撮影はけっこう難しいので省略、ピリ辛の玉こんにゃくかなと思って辛い方を頼んだのですが、かなり辛い味噌がかけられていて(コチジャンですかねえ・・・)、しばらくの間ぼーっとしていました(<辛いの苦手な人)。

 その後、せっかく秩父に来たのだから聖地巡礼ということで(「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ」)、秩父公園橋へ。
 駅前の案内看板にかなり大きく書いてあったので、たぶんこれだろうと。
 これ、写真だと平坦に見えるんですが、けっこうな傾斜があります。10度ぐらいですかねえ・・・。スキー場の緩斜面ぐらいの斜度があります。



 交差点名を拡大したもの。



 せっかくなので荒川が見たいということで、先程の写真のポールが立っているあたりから撮影。かなり暗く見えるのですが、これ5時過ぎです。その少し前に防災無線から夕焼け小焼けが聞こえていたので、何時だったのかな? と確認したので覚えています。
 山に囲まれているので、日が暮れるのが早いんですね、たぶん・・・。



 あの橋脚の周りにはちょっとした広場になっていて三脚置いて撮影してね的なスポットになっていたので、そこから秩父の駅方面を撮影。これは後で分かるんですが秩父公園橋モールというスーパーやドラッグストアの集まった小さなモールです。



 市街に下り降りる素晴らしい夜景。この時点で、あれ、あの花はなんかメンマ背負って走ってたよなあ・・・、こんな坂とは違うように見えたんだけど・・・、などとやっていました。
 


 その後、電車の中で検索などして、この秩父公園橋じゃないことが判明(笑)。
 まあこれは下調べしないでいってきた自分が悪いんですw
 ただまあ、いちおう秩父公園橋の方も出てくるらしいので、あそこも聖地には変わらないと、まあ一件落着、いやー、行き当たりばったりってよろしくないですねw
 

| 雑記 | 23:08 | comments(0) | trackbacks(0) |